今回のけいナビの特集は、経営を後継者に引き継ぐ「事業承継」について。北海道は後継者不在率が66.5パーセントと高く、47都道府県の中でワースト4。こうした事情を背景に、事業承継の成約件数は右肩上がりで増えていて、経済産業省が設置した公的機関、北海道事業承継・引継ぎ支援センターによれば、昨年度は前年度よりも33件多い116件の承継が成立したという。
滝川市江部乙。ここにある小林精肉店は1958年創業の長い業歴を誇る企業だが、後継者不在を理由におととし、近隣で建設業を営む和田真児社長に経営権を引き継いだ。
和田社長が引き継いだ理由は、小林精肉店のブランド「小林ジンギスカン」の味を絶やしたくないという思いからだ。小林ジンギスカンは、全国各地から名店が集まる「味付ジンギスカンジグランプリ2023」で大賞を受賞するほどの逸品。ファンも多く、札幌のスーパーなどでも販売している。
承継する際に一番気を使ったのは、味をいかに守るかという点だ。前オーナーの朝比奈茂夫さんから指導を受けながら、門外不出の秘伝のタレを引き継いだ。和田社長は「新たなチャレンジということで楽しさが勝った」と話すが、朝比奈さんは「自分一人の力では承継は無理だった。専門家の支援がないと難しい」と指摘する。
札幌・北区にあるバウムクーヘン専門店の北海道バームも2年前、事業承継を済ませた。こちらも全くの異業種からの人材が受け手となった。
高橋浩司社長の前職は保険会社の経営。親会社が代わるタイミングで新たなことをやろうと決意し、スイーツ店を任されることに。「簡単にできるのではと思ったが、意外に難しかった」と当初の心境を振り返る。
承継に際しては、何をどうすれば良いか全く分からず、北海道事業承継・引継ぎ支援センターに相談したという。承継後もこうした機関の支援を受けているといい、バウムクーヘンのサイズを変えてみてはというアイデアをもらい実践したところ、売り上げが目標の1.5倍に増えたとする。
高橋社長は、「新たなアイデアを出すことで客が増えたりと、やりがいがある。思い切って新たな世界に飛び込んで良かった」と手応えを感じている。
当別町には、現在後継者を募集中の飲食店がある。1959年に創業したそば居酒屋のぎん平だ。
ぎん平は、町内の企業や学生を中心に多くの人が集まる人気店だったが、店を切り盛りしていた店主の堀川信清さんの妻・幸子さんの持病が再発したことから閉店を決断。しかし、残ってほしいという多くの人の思いを受け、事業承継を試みることにした。地元の商工会も承継を手伝っている。
堀川さんは、「ぎん平の名前を残してもいいし変えてもいい。そば居酒屋以外の業態になっても構わない」とし、広く後継者を募っている。店は8月末から無期限の休業状態にある。
コメンテーターの平本健太・北大大学院経済学研究院教授は、「事業承継を考えているのならば早い段階から準備をした方がいい。早ければ早いほど新たな選択肢や可能性が生まれる」とし、これからも多くの企業が事業承継と向き合うことになるとの考えを示した。
(2024年10月26日放送、テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)