今回のけいナビの特集は、北海道の食品輸出の現状について。農林水産省によれば、全国の食品輸出額は円安を追い風に年々増加し1兆5000億円に迫る勢いだが、北海道は900億円ほど。多くの農林水産物の生産量が全国トップの水準であることを考えると、極めて少ないといえる。そうした現状を打開しようとする企業の動きを取材した。
小樽の堺町通り商店街に面する「うに専門店世壱屋小樽運河店」。札幌に本社を置く世壱屋が運営する。世壱屋はウニ専門店を小樽と函館、後志の余市町で計4店運営している。
社名は犬嶋裕司社長の出身の余市にちなんでいるのだが、この時期店が売りにしているのは浜中町産のバフンウニ。ふんだんに使ったウニ丼は一杯1万5400円という高級品なのだが、店を訪れる外国人観光客の多くが注文する一品だという。
世壱屋が近年力を入れているのが、ウニの輸出だ。鮮度保持や身崩れ防止のため輸出する際には冷凍が欠かせないが、単に冷凍しただけでは解凍した際に身が溶けてしまう。そこで開発したのが、身が崩れない「生うに熟成製法」。余市にある加工場でその作業を行っている。
詳細は企業秘密ということだが、ウニに一定の熱を加えた後冷やすことで、冷凍してもおいしさを保った身崩れしないウニに仕上がるという。風味が落ちるのを避けるため、ミョウバンなどの添加物は一切使用しない。輸出先はアメリカやカナダ、台湾、香港が中心。今後東南アジアにも販路を広げ、5年後に年間20トン輸出することを目指している。
札幌・中央区にある北海道食品輸出開発は、北海道産の食肉輸出を手掛ける地域商社。谷澤廣社長は北海道ガスで勤務した後、函館の副市長を務めた異色の経歴だ。同社は今、全国的から注目を集めている。
その理由は、香港で小売店舗数7割を占めるデイリーファーム、ASワトソンの2大グループと直接取引する契約を結んでいるため。通常、日本から商品を現地へ送るのには卸会社や商社など5社から6社の仲介が必要だが、北海道食品輸出開発に依頼すればその手間を抑えることができるという。
北海道食品輸出開発とタッグを組んで輸出を強化している企業が、十勝の中札内村にある。わらび餅などのスイーツ類を製造するとかち製菓だ。
もともと香港へ輸出していたのだが、取引していたコンビニチェーンが別企業に吸収されたことをきっかけに、さらに販路を開拓しようと動き出した。駒野裕之社長は「現地チェーン向けの商品を開発し売り込んでいきたい」と意欲を見せている。
オホーツクの湧別町にあるマルナカ相互商事は、ホタテの輸出に力を入れている。輸出先の多くは台湾で、既に取扱量全体の半数は輸出。売上高も100億円を超え業績好調だ。
台湾では、キャラクター戦略や現地のインフルエンサーとタッグを組み販売数を伸ばしている。畠山大毅部長は「円安を背景に日本の食品に興味を持つ国・地域は増えている」とし、さらなる輸出拡大が目標だとしている。
(2025年1月25日放送、テレビ北海道「けいナビ~応援どさんこ経済」より)