きょうは、創成イーストに店を設けて1世紀あまり、「きなこ」で知られる会社を紹介します。
中央区南1条東4丁目に本社を構える「坂口製粉所(さかぐちせいふんしょ)」。今年で創業から103年を迎えます。このパッケージに見覚えのある方は多いのではないでしょうか。
5代目の坂口幸司(さかぐち・こうじ)社長は「きなこは味が大事ですから。大豆を焙煎してね、粉にして、原理は単純なので、おいしくするにはどう工夫するのかとか、そこを研究するのが一番面白いところでないですかね」と話します。
きなこの原料は「大豆」です。坂口製粉所では、北海道産をメインに年間およそ550トンの大豆を使います。こちらは、焙煎機。1度に90キロの大豆を焙煎できます。焙煎された、熱々の大豆が出てきました。攪拌して熱を飛ばし、粉砕すると、パウダー状のきなこが出来上がります。
作り方がシンプルなだけに、「焙煎」の工程はとても重要です。「焙煎によって(きなこの)色と味が決まってしまうので、大豆の大きさだったり違うことがあるので、品質の安定というところで、焙煎温度を常にその日その日で調整して焙煎しているのでそこが難しいところですね」と焙煎への思いを話してくれました。焙煎の状態を、こまめに確認します。ちなみに焙煎する温度や時間は「企業秘密」とのこと。出来上がったきなこを手に取って…サンプルと比較する方法で、色をチェックします。
「お客さんにおいしいと言っていただけるのがやりがいですね」と話す坂口社長。坂口製粉所は、精米を行う店として誕生。1941年からきなこや上新粉の製造を手掛けるようになりました。そんな歴史が垣間見える資料がこちら。「米の粉賃挽いたします。多少に拘らず引受ます」と書いてあります。味があって非常に貴重な資料です。
質の高いきなこの製造だけではなく、消費拡大に向けたレシピの提案や商品開発にも積極的に取り組んできました。たとえば、今では一般的になった「きなこ牛乳」は、実は40年近く前に坂口製粉所が初めて提案したものだそう。クリーム状の「パンにぬるきなこ」という個性的な商品も開発しました。
「最近は、ヨーグルトときなこを召し上がる方の割合がかなり増えていまして。要は発酵食品と食物繊維というのは免疫力をアップさせると。それでコロナの時にもそれが自己免疫を上げるものとしてヨーグルトきなこは、ちょっと注目されたんです」と振り返ります。
きな粉の需要については「そういう意味では大きくは増えませんけど、大きくも減らないというか、じりじりと微増の状況」と言います。きなこの歴史はとても古く、1300年ほど前の奈良時代初期には、大豆を粉にして使っていたといわれています。
最後に坂口社長は「健康を願う気持ちはおそらく永遠だと思うんですよね、これから先も。きなこはそこに寄与できるような商品だと思う」と「1000年企業」への夢を語ってくれました。