札幌・ススキノでおととし、男性が殺害され、親子3人が起訴された事件。殺人などを手助けした罪などに問われている父親で医師の田村修被告(61)の6回目の裁判員裁判がきょう、札幌地裁で開かれています(1月30日午後2時30分時点)。
ススキノのホテルでおととし7月、恵庭の会社員男性が殺害され、頭部を切断された状態で見つかった事件では札幌・厚別区の田村瑠奈被告(30)ら親子3人が殺人などの罪でそれぞれ逮捕・起訴されています。
今月14日の初公判で父親は「無罪」を主張していて、殺人や死体遺棄を助けた「ほう助」の罪が成立するかが争われています。
6回目のきょうは証人尋問が行われ、去年から先行して裁判を行っている母親の田村浩子被告(62)が、昨日に続き証言台に立ちました。黒いスーツに紺のネクタイ姿の修被告も浩子被告を見つめながら、その言葉に耳を傾けました。
弁護側と母親・田村浩子被告の主なやり取りは以下の通り。
Q 瑠奈被告が頭部を持ち帰ったあとのことについては?
A (浴室に)娘が何か置いているんだなって思った。(触らなかったのは)娘のものは触らないという決まりのような下で生活していたので。(浴室に置いてある黒いビニール袋に)あえて近づく、確認することはしませんでした。
Q その後の会話は?
A (翌日の午後に顔を合わせたときに)何か話していて、「頭を持って帰って来た」というようなことを言ってきた。変なことを言っているな、どういうことだろう・・・と。
Q 他には?
A (少し声を詰まらせながら)「(ホテルの)従業員の人が血を見て驚くといけないからキレイにしてきた」と言っていた。
Q 瑠奈被告の様子は?
A (普段と)あまり変わらない様子で話していた。
Q 瑠奈被告が被害者を殺したのでは、とは考えなかったのか?
A そのときは考えていませんでした。
Q 瑠奈被告に深掘りはしなかった?
A 不安はあったが、あまりに変なことを言っていたので・・・。「なぜ」と聞く習慣はなかったので、いったん私の胸の中にとどめたということです。
Q 修被告とは?
A あちらの世界(瑠奈被告の妄想の中の世界)について話してきたときなど、元々いちいち報告はしていなかった。そのときも同じだったと思う。
Q 事件後7月3日に報道を見てから、瑠奈被告には何か言ったか?
A 新聞にこんなの出ているけど、と言ったら「それ(新聞)取っておいて」と言われました。これは関係しているんだと思った。ショックを受けたというか、衝撃を受けたというか、そういう感じです。
Q 7月3日の午後、(出張中の)修被告とのやり取りについては?
A 家の中で電話では何も伝えていない。それは娘に聞かれてしまうので。とても重大なことが起きているとは認識していたが・・・。もしこれが本当に娘がやったことならと「足元から世界が崩れ落ちる感覚」だったので、(修被告へ)ラインで言葉におこすのもためらわれた。修さんとただつながっていたいという思いがあって、延々とラインをしていたと思う。
Q 修被告も知っていると思っていた?
A ネットなどの報道でもう知っているんじゃないかと思っていた。
Q 事件のあと頭部を見せられるまでも浴室は使っていなかったのか?
A (瑠奈の大切な人形があるときなどは)浴室には入らず近所の銭湯などを使っていた。
Q 瑠奈被告のしてしまったことについて修被告と話したのは?
A (頭部を見せられたあとに)車の中で、「地獄は死んでから行くところじゃなくて今ここにあるんだね」という話をしたのを覚えている。
Q 瑠奈被告の損壊行為の撮影については?
A 私が見せられたときには既にこれ以上ない状態。さらに何かをするという発想はなかった。「浴室」「撮影」と聞いたら、フラッシュバックして私の心が耐えられないなと。カメラも娘が小さい時くらいしか触っておらず苦手。修さんに(撮影を)お願いした。
Q 「怖いから」など、正直に断れなかったのか?
A 既に異常な状況にあった。もうすぐ修さんも家に帰ってくるから頼んではどうだろうって。修さんが帰ってきた気配があったので下に直接降りてお願いしたと思う。
Q 撮影を頼んだ時のラインについては?
A よく頼む近所のお弁当屋さんに修さんが取りに行ってくれる習慣があった。もし修さんがそっちに行ってしまうと、(瑠奈被告が)待ちきれなくて私に頼んでしまうかもしれない。「あなた撮影するでしょ?」は表現としてはカジュアルだけど、私としてはとにかく「行かないで」「撮影して」という思いだった。
Q なぜカジュアルなライン?
A 私のラインを瑠奈が覗き込んでくることがあったので、普段から見られてもいいような表現にしていた。
Q よく見てくる?
A 確認してくることあった。手に持っているスマホをのぞき込んだり、ときには手渡したり。
Q 修被告のスマホも?
A テイクアウトするときとか修さんのスマホを借りてメニューを見たり、はよくありました。
(中略)
Q 複数のラインの削除履歴については?
A 事件が本当に起ったと思ってからは、(関連することは)気持ちが悪くて消したと思う。●●さんに関連することも残しておくのが気持ち悪い、そういった心境だった。
Q 事件とは関係ないラインも削除しているのはなぜ?
A (昼夜逆転の)娘とは生活時間が違う。「私がいないときに(夫婦)2人で出かけているんだね」とかいい思いをしないと思って消すこともあった。
Q 夫婦間のライン履歴に残っていた「ディスカッション」という言葉については?
A 単にそのあとの行動をどうするか話し合うもの。(英語なのは)単に瑠奈が言った言葉をそのまま使って送っていました。
Q 事件のあと2人で今後について話し合ったか?通報しなかったのは?
A おそらく警察はすぐ来るから。このまま遅くないタイミングで来るだろう。一見平穏にしている娘のままで。警察がお見えになるまでいようと思っていた。
Q 修被告も逮捕されるとは思わなかった?
A 思っていなかった。
Q 瑠奈被告の逮捕は?
A 思っていた。
Q 瑠奈被告に物事を聞かない習慣については?
A 例えば修さんが(犯罪を)したなら私は聞くと思う。ちゃんと答えてくれるから。娘はそういうところもないから、(何も)聞かなかった。
裁判は午後も続いていて、次回は2月4日を予定しています。父親の裁判員裁判は最長で12回とされていて、判決は3月12日を予定しています。