市川 栞 キャスター:
北國新聞論説委員の野口強さんとお伝えします。よろしくお願いします。きょうはどんな話題でしょうか。
北國新聞論説委員・野口 強 さん:
今年10月までに日本を訪れた外国人が3千万人を超えました。12月までの年間累計では、2019年の3188万人を上回り過去最多となる見通しです。
野口さん:
こうした中、幅広い読者を持つアメリカの2つの雑誌メディアが、世界中の都市の中から注目すべき旅行先として金沢を選びました。
市川:
誇らしいですね。
野口さん:
石川への追い風がさらに吹く期待が高まります。
野口さん:
そこできょうのテーマはこちら。
「旅行するなら金沢 米国大手誌が太鼓判」
野口さん:
今回、金沢を高く評価したのは、一つは「ナショナルジオグラフィック」。
1888年創刊で、自然・動物・ 宇宙・歴史など、スケールの大きい題材を扱いビジュアルの質が高く、記事の内容も深いのが特徴です。
市川:
日本版もあって、富裕層を中心に170カ国以上で読まれているそうですね。
野口さん:
それがこちらです。ビジュアルで読み応えのある記事が掲載されています。
金沢は10月に発表した「2025年に旅行するべき世界の25カ所」に、東アジアで唯一選ばれました。
野口さん:
理由としては、木造の茶屋街や兼六園があって武家の文化に浸れる。
京都のように混雑することなく、“本物の日本"が体験できる点を評価しています。
まだ雑誌本体には載っていませんが、ソーシャルメディアで5億人ものフォロワーを抱えている雑誌だけにその効果は大きいと思われます。
市川:
雑誌のSNSで金沢市の弓道体験プログラムが紹介されると、国外から市への問い合わせがぐっと増えたそうですね。
野口さん:
実はこのナショナルジオグラフィック、1914年に兼六園にある桜を「日本一美しい」と世界に紹介しています。
市川:
そんな昔から評価されていたんですね。
野口さん:
1世紀以上を経て、再び世界と金沢をつないだ、奇しき因縁と言えるでしょうね。
そこで1つ目の、目からウロコです。
野口さん:
「観光名所だけでなく人に優しい街も売り」
金沢を高く評価したもう一つの雑誌は「コンデナスト・トラベラー」といって、旅行やホテルなどの最新情報を掲載しています。
市川:
こちらも富裕層を中心に約320万人の読者を持つんですよね。
野口さん:
雑誌の特集では、工芸職人の制作現場を見学できるプログラムが紹介されたほか、特に能登半島地震で被災した工芸作家の作品をデジタルで発信して、手厚いフォローをしていることについても取り上げています。
観光スポットだけでなく、こうした地域社会を支える「人に優しい」取り組みも取り上げて、旅行するに値する土地として、欧米のインテリ層に訴えているように思います。
市川:
今後はこうした点も一味違った旅のアピール素材になっていくんでしょうね。
野口さん:
そこで2つ目の、目からウロコです。
野口さん:
「京都では金閣寺。金沢では金箔貼り」
いろんな観光要素がある中で、金沢ならではと言えば、やはり金箔貼り体験ですね。
野口さん:
日本の99%をここで生産する金箔で工芸品づくりが体験できます。ナショナルジオグラフィックでも、評価が高かったです。
野口さん:
先だって、修学旅行で金沢を訪れたカナダの中学生が金箔貼りを体験し「京都の金閣寺に使われている金箔について、金沢で学べて良かった」と語っていました。
市川:
京都で見た金閣寺の風情を、金箔貼りの体験で深く掘り下げたんですね。
野口さん:
京都と金沢をセットで巡ることで日本の歴史と文化を一歩踏み込んで学習したようです。
欧米の旅行者は関連性のあるテーマを求めて、私たちが考えている以上に広い範囲を移動するようです。
野口さん:
ですから県内だけでなく、視野を北陸に広げれば色々なテーマの旅が提案できます。
海外の富裕層に向けて、例えば「北陸の禅の名刹」。
重要文化財に答申された能登の総持寺祖院をはじめ、金沢の大乗寺、高岡の瑞龍寺、福井の永平寺を巡る旅です。
また、「地震でできた能登の震災遺構」。
ジオパークを目指すそうですが、これを含めて北陸の貴重な大地の遺産を巡るジオパークの旅 といった共通する切り口で、広いエリアを巡る旅が、海外の富裕層に提案できるんじゃないでしょうか。
金沢の魅力を深掘りした海外メディアの高い評価を追い風に、まだ国内にも知られていない北陸の穴場を掘り起こして、中身の濃い観光ルートを発信していくことが海外からの誘客につながると思いますね。
市川:
ありがとうございました。野口さんの目からウロコでした。
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