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DC新棟軸にサービスシフトを加速 個別SIからサブスク移行で安定収益を確保へ

週刊BCN+ 2021年1月28日 16時0分

 キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は、西東京データセンター(DC)新棟を軸に、サブスクリプションやITアウトソーシングなどのサービス事業の拡大を推し進める。同事業を支える基盤となるのが2020年10月に開業した2800ラック超の大規模な西東京DCの第2号棟だ。キヤノンITSでは21年1月の組織改編で、西東京DCを所管するIT基盤部門を「全社横串の横断組織にして、全社一丸となって販売していく体制へ移行」(キヤノンITSの笹部幸博・取締役)。製造や金融といったSI部門との連携を強化していく。

 キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)グループ全体のITソリューション事業の収益モデルを見ると、安定収益を支えるストック型ITサービスが35%程度を占めている。ストック型の比率が増えれば、景気の変動に左右されにくくなり、結果的にグループの収益を支えやすくなる。現状のストック型ITサービスのなかには先細りが懸念される従来型の保守サービスやシステム更改の一部も入っているが、今後は伸びが期待できる「サブスクリプションやITアウトソーシング領域などの割合をより増やしていく」(キヤノンITSの金澤明社長)。

 金澤社長は、「これまで個別SIやパッケージソフトを納入してきた案件を、できる限りサブスクリプション型に移行させていく」とし、キヤノンMJと連携してAI OCRやウェアラブル端末、企業内検索などのサービス製品群「Brainシリーズ」を拡充。同社の主力商材の製造業向けの需要予測システム「FOREMAST」のSaaS版の開発も検討している。西東京DCを「グループのサービス商材の提供基盤として一層活用していく」(郡田江一郎・データセンターサービス本部本部長)考え。

 また、「地域の中堅・中小企業を主な顧客ターゲットとするキヤノンシステムアンドサポートとの連携もより密接にする」(小泉充・ITプラットフォーム技術統括本部統括本部長)と、グループのサービス事業の基盤としてのDC活用を一段と推し進める。

 コロナ禍でキヤノンMJグループの複合機やカメラの販売減に見舞われる一方、情報サービスに関しては依然として底堅い需要がある。在宅でのリモートワークや旅行を含む移動の制限が続き、複合機やカメラの需要回復にまだしばらく時間がかかることが危惧されるなか、キヤノンITSの収益力がグループ全体の業績を底支える役割が強く求められている。

 キヤノンITSの20年上期(1-6月)業績を振り返ると、製造業向けの組み込みソフトなどが失速したことで受注が思うように伸びなかった。下期に入って回復基調に戻ってきたもの、キヤノンMJグループ全体の受注減を補うまでには至らず、コロナ禍でキヤノンITSとキヤノンMJがともにつまづく結果となった。サービスシフトを軸に2025年をめどにグループITソリューション事業の売上高3000億円を目指すとともに、ストック型比率を40%に高め、景気変動に強い収益構造への移行を急ピッチで進める。(安藤章司)

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