都築電気(江森勲社長)は、データ分析を起点とした新規ビジネスの創出を加速させる。データを収集するIoTプラットフォームやアプリケーションのクラウド化、分析サービスを拡充。製造や青果市場など同社が強みとする顧客業種に焦点を当て、データを活用した新しい価値をユーザー企業とともに創出していく。また、リモートワークを支えるIT基盤や、業務の完全デジタル化に役立つ電子契約システムの開発といったコロナ禍による市場環境の変化に対応した商材開発にも力を入れる。(安藤章司)
【業績概要】
都築電気の昨年度(2020年3月期)連結売上高は前年度比5.5%増の1253億円、営業利益は34.3%増の44億円。今年度(21年3月期)はコロナ禍の影響や大型案件の反動減で減収減益を見込むものの、23年3月期までの中期経営計画では売上高1260億円、営業利益46億円への回復を目指す。
既存のシステム構築(SI)ビジネスにデータ分析の手法を加えることで、ユーザー企業の売り上げや利益を増やせる可能性があることに着目した都築電気は、強みとする業種に焦点を当て、データの収集から分析、活用まで総合的なサービスの拡充に取り組んでいる。直近では、食肉加工業向けに画像認識技術による食肉部位の判別や、食品製造業向けに不良品を排除するシステム開発に応用。高度な数理的なアプローチによるデータ分析やAI技術に力を入れている。
2020年度(21年3月期)から始まった3カ年の中期経営計画では、データ分析を起点とするビジネス創出を重点施策の一つに位置づけ、20年6月にはデータ分析や活用をワンストップで提供する「D-VUE Service(デビューサービス)」を投入。先の食肉部位の判別や不良品を排除するシステムで培ったノウハウを体系化するとともに、データ収集の部分には、英Armグループが開発するIoTプラットフォーム「Pelion(ぺリオン)」をデータ収集の基盤として採用し、効率よくデータを集められるようにした。
都築電気は、青果市場向けの業務アプリケーション「KitFitマルシェ」を長年にわたって開発しており、ここでもデータ分析を起点としたD-VUEサービスの応用を進めていく。KitFitマルシェは、荷受業務から経営にかかわる統計業務まで青果市場で必要とされる機能を幅広く実装しており、ここで得たデータをさらに深く分析することでユーザー利益の最大化に役立てる。
野菜や果物といった青果物は気候変動の影響を受けやすく、価格も乱高下しやすい。これまでは“ベテランの直感”に頼って仕入れ、販売をすることが多かったが、「最新のデータ分析手法やAIを活用することで、より精度の高い市場予測が可能になる」と、江森社長は見ている。
今は青果市場を主なターゲットとしているが、将来的には生産者や小売店向けの業務アプリケーションで得たデータも活用して市場動向を予測。生産や仕入れ、販売の計画立案、サプライチェーン全体の最適化に役立つようなサービス開発も視野に入れる。
コロナ禍によって生まれた新しい需要にも積極的に応えている。ネットワーク構築や情報セキュリティの強化によってユーザー企業のリモートワークを支えるとともに、業務の完全デジタル化も支援する。とりわけ契約や受発注といった業務はリモートワークを阻害する紙やハンコが多く残っていることから、都築電気では電子契約システムを独自に開発し、まずは新年度が始まる4月からは自社に先行的に導入。法令で定められた一部の業務を除いて紙とハンコを完全に排除することにした。具体的な効果を確認したのち、ユーザー企業へ順次展開していく。
電子契約は競合他社でも類似のものを開発しているが、都築電気ではデータ分析の知見を当てはめることで、契約履歴から新規ビジネスの創出につなげる機能を重視する。例えば、都築電気は数多くのパソコンやネットワーク機器、保守サービス、ソフトウェアのライセンスなどを販売してきたが、電子契約によってデジタル化された売買データを分析することで「次年度の需要予測や潜在的な需要の発掘につなげられる」と、江森社長は期待を寄せる。
都築電気がデータ分析を起点とするビジネスを3カ年中期経営計画の柱の一つに据える背景には、受託ソフト開発に代表される従来型のSIビジネスが伸び悩むと見ていることが挙げられる。クラウドサービスやSaaS型のアプリケーション、ローコード開発手法などを組み合わせることで、ユーザー企業はほしいときにほしい業務システムを手に入れやすくなる。ソフトを開発することに価値の本質があるのではなく、「ユーザー企業の売り上げや利益を増やすビジネス変革にこそ真の価値がある」(江森社長)とみている。
KitFitマルシェの例でも、パッケージソフトをスタンドアロン型で納入していては、せっかくのデータがパソコンやサーバーのなかに眠ったまま活用しづらい。そうではなく、クラウドを基盤としたサービスとして提供することでデータを効率よく収集でき、都築電気がユーザー企業に代わってデータを分析。D-VUEサービスによって市場予測や購買計画などに役立つ分析結果をユーザーに提示し、ビジネスの活性化に役立ててもらうことを想定する。
23年3月期までの中期経営計画では、データ分析を起点とした新しい価値創出や、コロナ後の市場変化に適応した収益構造への転換を推進し、将来に向けた成長につなげる。
【業績概要】
都築電気の昨年度(2020年3月期)連結売上高は前年度比5.5%増の1253億円、営業利益は34.3%増の44億円。今年度(21年3月期)はコロナ禍の影響や大型案件の反動減で減収減益を見込むものの、23年3月期までの中期経営計画では売上高1260億円、営業利益46億円への回復を目指す。
●データ活用サービスを体系化
既存のシステム構築(SI)ビジネスにデータ分析の手法を加えることで、ユーザー企業の売り上げや利益を増やせる可能性があることに着目した都築電気は、強みとする業種に焦点を当て、データの収集から分析、活用まで総合的なサービスの拡充に取り組んでいる。直近では、食肉加工業向けに画像認識技術による食肉部位の判別や、食品製造業向けに不良品を排除するシステム開発に応用。高度な数理的なアプローチによるデータ分析やAI技術に力を入れている。
2020年度(21年3月期)から始まった3カ年の中期経営計画では、データ分析を起点とするビジネス創出を重点施策の一つに位置づけ、20年6月にはデータ分析や活用をワンストップで提供する「D-VUE Service(デビューサービス)」を投入。先の食肉部位の判別や不良品を排除するシステムで培ったノウハウを体系化するとともに、データ収集の部分には、英Armグループが開発するIoTプラットフォーム「Pelion(ぺリオン)」をデータ収集の基盤として採用し、効率よくデータを集められるようにした。
都築電気は、青果市場向けの業務アプリケーション「KitFitマルシェ」を長年にわたって開発しており、ここでもデータ分析を起点としたD-VUEサービスの応用を進めていく。KitFitマルシェは、荷受業務から経営にかかわる統計業務まで青果市場で必要とされる機能を幅広く実装しており、ここで得たデータをさらに深く分析することでユーザー利益の最大化に役立てる。
野菜や果物といった青果物は気候変動の影響を受けやすく、価格も乱高下しやすい。これまでは“ベテランの直感”に頼って仕入れ、販売をすることが多かったが、「最新のデータ分析手法やAIを活用することで、より精度の高い市場予測が可能になる」と、江森社長は見ている。
今は青果市場を主なターゲットとしているが、将来的には生産者や小売店向けの業務アプリケーションで得たデータも活用して市場動向を予測。生産や仕入れ、販売の計画立案、サプライチェーン全体の最適化に役立つようなサービス開発も視野に入れる。
●電子契約システムを新規開発
コロナ禍によって生まれた新しい需要にも積極的に応えている。ネットワーク構築や情報セキュリティの強化によってユーザー企業のリモートワークを支えるとともに、業務の完全デジタル化も支援する。とりわけ契約や受発注といった業務はリモートワークを阻害する紙やハンコが多く残っていることから、都築電気では電子契約システムを独自に開発し、まずは新年度が始まる4月からは自社に先行的に導入。法令で定められた一部の業務を除いて紙とハンコを完全に排除することにした。具体的な効果を確認したのち、ユーザー企業へ順次展開していく。
電子契約は競合他社でも類似のものを開発しているが、都築電気ではデータ分析の知見を当てはめることで、契約履歴から新規ビジネスの創出につなげる機能を重視する。例えば、都築電気は数多くのパソコンやネットワーク機器、保守サービス、ソフトウェアのライセンスなどを販売してきたが、電子契約によってデジタル化された売買データを分析することで「次年度の需要予測や潜在的な需要の発掘につなげられる」と、江森社長は期待を寄せる。
●今中計でビジネス変革の達成目指す
都築電気がデータ分析を起点とするビジネスを3カ年中期経営計画の柱の一つに据える背景には、受託ソフト開発に代表される従来型のSIビジネスが伸び悩むと見ていることが挙げられる。クラウドサービスやSaaS型のアプリケーション、ローコード開発手法などを組み合わせることで、ユーザー企業はほしいときにほしい業務システムを手に入れやすくなる。ソフトを開発することに価値の本質があるのではなく、「ユーザー企業の売り上げや利益を増やすビジネス変革にこそ真の価値がある」(江森社長)とみている。
KitFitマルシェの例でも、パッケージソフトをスタンドアロン型で納入していては、せっかくのデータがパソコンやサーバーのなかに眠ったまま活用しづらい。そうではなく、クラウドを基盤としたサービスとして提供することでデータを効率よく収集でき、都築電気がユーザー企業に代わってデータを分析。D-VUEサービスによって市場予測や購買計画などに役立つ分析結果をユーザーに提示し、ビジネスの活性化に役立ててもらうことを想定する。
23年3月期までの中期経営計画では、データ分析を起点とした新しい価値創出や、コロナ後の市場変化に適応した収益構造への転換を推進し、将来に向けた成長につなげる。