都築電気は、出社率50%を想定した本社オフィスの大規模刷新を実施した。コロナ禍でリモートワークを体験し、生産性や働き方改革、従業員満足度の向上が実証できたことを受け、仕事の内容や目的に応じて働く場所を選ぶ「アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)」の考え方を全面的に取り入れた。社内の情報共有のシステム基盤や電話・ファクスといったオフィス設備を、持ち前の通信ネットワークの構築能力を生かして再構築。コロナ禍の新しい働き方を自ら率先垂範し、コロナ後を見据えた顧客企業のオフィス刷新需要に応えていく。
コロナ禍のリモートワークを経て、通信ネットワークをフル活用した新しい働き方への移行が進むと予測した都築電気は、昨年の時点で従業員数100人規模の名古屋支店のオフィスを実験的にABW型に改装した。ABWは場所や時間の制約を最小限に抑え、仕事の内容や目的に応じてオフィスや自宅、コワーキングスペース(社外施設)などで働けるようにする考え方で、「生産性や従業員満足度をより一層高められることを名古屋支店で実証できた」(大木智広・総務部副部長兼企画課長)ことから、この9月までに従業員数1000人が勤務する東京港区の本社オフィスをABW型に刷新した。
都築電気では、オフィスでの行動を個人単位で集中して深く思考できる「思考型」、定型作業が効率的に行える「作成型」、気軽な打ち合わせ、アイデア出し、複数人でのプロジェクト作業ができる「討議型」、内密な会話ができる「調整型」、提案や商品・サービスの展示、社外の人々と共創できる「提案型」、顧客を迎えて商談、Web会議ができる「商談型」の六つの類型に分けて、オフィス空間をゼロベースで設計し直した(図参照)。
刷新後は「オフィスでやりたい仕事がある人のみがオフィスに来る」(総務部企画課の田代ゆり氏)ことを想定し、その仕事内容に合致するよう設備を整えた。“オフィスに出勤することが仕事”だった時代から、“オフィスでやりたい仕事があるからオフィスに来る”時代へ変わると見ている。
「オフィスでやりたい仕事」について社員にアンケートをとったところ、トップになったのが「気軽な会話、同僚との軽い打ち合わせ」で、2番目が「顧客を迎えての商談」、3番目が「意志決定や深い議論、内密な会話」が続いた。つまり、多くの社員が他者との軽い触れあいや濃密な意思疎通の場としてオフィスを利用したいと考えていることが浮き彫りになった。家が狭かったり未就学の子どもがいたりと家庭環境によっては「集中して考えたり、定型作業を効率的に行う場」をオフィスに求めるケースも見られた。
情報システム面では、通信ネットワーク構築を強みとする都築電気にとって特に問題になるようなところはなかったが、唯一、大代表や部門代表の固定電話は議論の的になった。固定電話を残すと電話に応対するための「電話出社」につながりかねない。刷新後の本社オフィスは業務のデジタル化によって「判子出社」がほぼ解消しただけに、「電話出社の原因となるような固定電話は基本的には廃止したい」(大木副部長)と考えた。
そこで、グループ会社のコムデザインが開発したクラウド型コールセンターシステム「CT-e1/SaaS」を使い、東京の「03」から始まる代表や部門電話にかかってきた電話をリモートワーク先でとれるようにすることで解決した。もともとコールセンターの仕組みであるため、誰が何本電話に応対したのかが一覧でき、時間帯や曜日によって電話当番を代えることも可能だ。そのほか、社員個人への直通電話は「050」から始まるクラウドPBXサービスや携帯電話を活用している。
コロナ禍の緊急事態宣言下の本社オフィスの出社率は2割未満だったが、コロナ後の新しいABW型の本社オフィスでは、出社率5割、500人程度を想定している。思考型や討議型、提案型など六つの類型別に空間を用意したため椅子の数は1500脚に増えたが、仕事の内容に合わせてオフィス内を自由に移動する働き方に対応するためのもので、1500人が座れるようにするものではない。結果として本社オフィスは7フロアから5フロアに減床して賃料を圧縮。会議室は37部屋から16部屋に減り、紙の書類を排してデジタル化を推進したことで書類キャビネットの段数は2882段から692段へと76%減った。
また、5フロアのうち1フロアは、顧客向けの提案や展示が行えるライブオフィスとし、無人店舗向けのレジシステムや物体認識技術を応用した差分検知、点字ブロックを活用した案内表示など「これから本格的な事業化が見込める商材」(日野俊輔・ビジネスイノベーション部ビジネスデザインチームマネージャー)を中心に展示している。顧客にライブオフィスに足を運んでもらい、「実際にデモシステムを体験しながら新しい価値をともにつくる“共創”に取り組んでいく」(ビジネスデザインチームの岡野和哉氏)と、オフィスを顧客との共創の場として活用する。
名古屋、本社オフィスの順にABWを取り入れ刷新を行ってきたが、今後は従業員約200人が在籍する大阪支店や、全国100カ所余りある地方拠点の整備をどう進めていくかの検討に入る方針だ。
●仕事に応じてオフィスを利用する
コロナ禍のリモートワークを経て、通信ネットワークをフル活用した新しい働き方への移行が進むと予測した都築電気は、昨年の時点で従業員数100人規模の名古屋支店のオフィスを実験的にABW型に改装した。ABWは場所や時間の制約を最小限に抑え、仕事の内容や目的に応じてオフィスや自宅、コワーキングスペース(社外施設)などで働けるようにする考え方で、「生産性や従業員満足度をより一層高められることを名古屋支店で実証できた」(大木智広・総務部副部長兼企画課長)ことから、この9月までに従業員数1000人が勤務する東京港区の本社オフィスをABW型に刷新した。
都築電気では、オフィスでの行動を個人単位で集中して深く思考できる「思考型」、定型作業が効率的に行える「作成型」、気軽な打ち合わせ、アイデア出し、複数人でのプロジェクト作業ができる「討議型」、内密な会話ができる「調整型」、提案や商品・サービスの展示、社外の人々と共創できる「提案型」、顧客を迎えて商談、Web会議ができる「商談型」の六つの類型に分けて、オフィス空間をゼロベースで設計し直した(図参照)。
刷新後は「オフィスでやりたい仕事がある人のみがオフィスに来る」(総務部企画課の田代ゆり氏)ことを想定し、その仕事内容に合致するよう設備を整えた。“オフィスに出勤することが仕事”だった時代から、“オフィスでやりたい仕事があるからオフィスに来る”時代へ変わると見ている。
「オフィスでやりたい仕事」について社員にアンケートをとったところ、トップになったのが「気軽な会話、同僚との軽い打ち合わせ」で、2番目が「顧客を迎えての商談」、3番目が「意志決定や深い議論、内密な会話」が続いた。つまり、多くの社員が他者との軽い触れあいや濃密な意思疎通の場としてオフィスを利用したいと考えていることが浮き彫りになった。家が狭かったり未就学の子どもがいたりと家庭環境によっては「集中して考えたり、定型作業を効率的に行う場」をオフィスに求めるケースも見られた。
●「判子出社」「電話出社」を撲滅
情報システム面では、通信ネットワーク構築を強みとする都築電気にとって特に問題になるようなところはなかったが、唯一、大代表や部門代表の固定電話は議論の的になった。固定電話を残すと電話に応対するための「電話出社」につながりかねない。刷新後の本社オフィスは業務のデジタル化によって「判子出社」がほぼ解消しただけに、「電話出社の原因となるような固定電話は基本的には廃止したい」(大木副部長)と考えた。
そこで、グループ会社のコムデザインが開発したクラウド型コールセンターシステム「CT-e1/SaaS」を使い、東京の「03」から始まる代表や部門電話にかかってきた電話をリモートワーク先でとれるようにすることで解決した。もともとコールセンターの仕組みであるため、誰が何本電話に応対したのかが一覧でき、時間帯や曜日によって電話当番を代えることも可能だ。そのほか、社員個人への直通電話は「050」から始まるクラウドPBXサービスや携帯電話を活用している。
コロナ禍の緊急事態宣言下の本社オフィスの出社率は2割未満だったが、コロナ後の新しいABW型の本社オフィスでは、出社率5割、500人程度を想定している。思考型や討議型、提案型など六つの類型別に空間を用意したため椅子の数は1500脚に増えたが、仕事の内容に合わせてオフィス内を自由に移動する働き方に対応するためのもので、1500人が座れるようにするものではない。結果として本社オフィスは7フロアから5フロアに減床して賃料を圧縮。会議室は37部屋から16部屋に減り、紙の書類を排してデジタル化を推進したことで書類キャビネットの段数は2882段から692段へと76%減った。
また、5フロアのうち1フロアは、顧客向けの提案や展示が行えるライブオフィスとし、無人店舗向けのレジシステムや物体認識技術を応用した差分検知、点字ブロックを活用した案内表示など「これから本格的な事業化が見込める商材」(日野俊輔・ビジネスイノベーション部ビジネスデザインチームマネージャー)を中心に展示している。顧客にライブオフィスに足を運んでもらい、「実際にデモシステムを体験しながら新しい価値をともにつくる“共創”に取り組んでいく」(ビジネスデザインチームの岡野和哉氏)と、オフィスを顧客との共創の場として活用する。
名古屋、本社オフィスの順にABWを取り入れ刷新を行ってきたが、今後は従業員約200人が在籍する大阪支店や、全国100カ所余りある地方拠点の整備をどう進めていくかの検討に入る方針だ。