週刊BCN主催のセミナー「どうする?データセンター(DC)のエネルギー問題を考える~国内外のDCを支える電源/ラック管理の最新トレンド~」(ラリタン・ジャパン協賛)が2月24日に開かれた。環境意識が高まる中で、DCに求められているサステナビリティ対応の現状や、DC内の電力使用効率の改善につなげられるソリューションが紹介された。
(取材・文/大畑直悠)
基調講演ではKPMGコンサルティングの和田智・アソシエイトパートナーと三宅恵満生・マネジャーが登壇し、グローバルのDCのトレンドを解説した。
グローバルのDC市場は拡大傾向にあり、アジア太平洋地域が成長をけん引しているという。中でもインドへの投資が加速しているとし、人口増加とクラウドサービスの増加が要因になっていると指摘した。
DCの規模・タイプ別の市場状況では、大手クラウド事業者を収容するハイパースケールDCが成長傾向にあると紹介。加えて、IoTなどの進展からデータの発生源の近くで処理することで、遅延を回避するエッジDCへのニーズが高まっていると解説した。和田アソシエイトパートナーは「遅延回避をメリットとするエッジDCの普及には5G/高速通信との融合が前提」と話した上で、「5Gモバイル網との接続を可能とする仕組みを提供できることが重要だ」と説明。単一のネットワークを用途に応じて分割するネットワークスライシングに対応したコネクティビティの提供や、柔軟で細かなネットワークの運用、5Gキャリアが開放するAPIとの接続性が求められるとの見方を示した。
一方で従来の中規模およびエンタープライズDCはオンプレサーバーのコロケーションとして利用されているものの、成長率としては頭打ちの状態だという。和田アソシエイトパートナーは「AIなどの最新技術の利用が進んでいることで、従来型DCへの需要は減退している。ただし、自社の保有要件のもとで運用を行うプライベート基盤としてのニーズは根強い」とし、「地場の顧客からの細かな要望に対して、顔が見えるような密着型営業で細かく対応しながら、いかに通信やソフトウェアなどの周辺サービスをワンストップで提供できるかが、従来型DCが生き残る上で重要になる」との見解を示した。
環境面に関しては、多量の電力を消費するDC産業において、脱炭素社会への移行に向けたグリーンDCの開発・普及競争が活発になっていると紹介した。三宅マネージャーは世界の電力消費量のうち、DCの電力消費量は1~2%ほどに相当し、将来的にIPトラフィックの増加に伴って増大していくと予測した。その上で、IT業界における意思決定者や投資家はDCの脱炭素化を重視する傾向があるとし、「DCのサステナビリティの要請は顕在化してきている」(三宅マネジャー)と話した。日本においては特に情報通信、金融などのサービス分野で取り組みが加速しているという。
脱炭素化に向けた取り組みについて三宅マネジャーは「再生可能エネルギーの調達がボトルネックとなる日本では、打ち手を複合的に組み合わせることが重要」と強調。具体的な手法としては液浸による冷却やAIによる運用最適化のほか、暖房や養殖などへのDCの廃熱利用などを紹介した。また「省エネや電力使用効率の改善を継続的に突き詰めていくことが国内DCサステナビリティを実現する上での一丁目一番地」と話した。
続いて、ラリタン・ジャパンの佐子博史・ビジネスデベロップメントマネージャーが登壇し、同社が提供するDC向けのソリューションについて説明した。
同社はITインフラ制御と電源管理・環境管理を柱として製品を展開する。ITインフラ制御では、KVM over IPスイッチの提供を行っており、一つのマウス、キーボード、ディスプレイで複数のサーバーの操作を可能にするKVMスイッチをリモート環境でも使えるようにする。グローバルではトップクラスのマーケットシェアだという。エンタープライズ向けに「Dominion KX3」を提供するほか、中小企業向けにも「Dominion LX2」といったラインアップをそろえており、高いセキュリティなどを強みとする。また、アクセス統合管理機器「CommandCenter Secure Gateway」を提供しており、さまざまなITインフラに対するセキュアな管理が可能になるとした。
電源管理・環境管理に関する製品群では、サーバーラック用電源タップ「PX インテリジェントPDUシリーズ」を提供する。PDU(Power Distribution Unit)市場の動向について佐子マネージャーは「サーバーの消費電力が増加していることを受け、グローバルでは単相よりも大規模な送電ができる三相に対応したPDUへと需要が切り替わっている」と解説した。国内でも三相PDUの引き合いが増加しているとし、「分電盤の環境が整っていないDCもまだまだあるが、2024年頃からは分電盤からの供給も三相に切り替わっていくだろう」と話した。
同社のインテリジェントPDUは、配電機能だけでなくリアルタイムのリモート電源監視や、温度・湿度などを検知する環境センサーを搭載する。また、消費電力量の計測などもでき、電力使用効率の改善活動につなげられる。
佐子マネージャーは、ユーザー事例としてインターネットイニシアティブ(IIJ)のインテリジェントPDUの活用を紹介した。IIJが提供するエッジコンピューティング環境を構築するコンテナ型DC内で利用され、リモート環境からでもDC内の環境や消費電力の管理ができるように支援しているとした。「電力使用効率の改善のために有効活用されている」(佐子マネージャー)と話した。
ラリタン・ジャパンのエリック・グリーンバーグカントリーディレクターは「ラリタンのインテリジェントPDUは、サーバーの消費電力のパフォーマンスを管理することで顧客にエコフレンドリーな環境を届ける」とアピールした。
(取材・文/大畑直悠)
●エッジDCへのニーズが顕在化
基調講演ではKPMGコンサルティングの和田智・アソシエイトパートナーと三宅恵満生・マネジャーが登壇し、グローバルのDCのトレンドを解説した。
グローバルのDC市場は拡大傾向にあり、アジア太平洋地域が成長をけん引しているという。中でもインドへの投資が加速しているとし、人口増加とクラウドサービスの増加が要因になっていると指摘した。
DCの規模・タイプ別の市場状況では、大手クラウド事業者を収容するハイパースケールDCが成長傾向にあると紹介。加えて、IoTなどの進展からデータの発生源の近くで処理することで、遅延を回避するエッジDCへのニーズが高まっていると解説した。和田アソシエイトパートナーは「遅延回避をメリットとするエッジDCの普及には5G/高速通信との融合が前提」と話した上で、「5Gモバイル網との接続を可能とする仕組みを提供できることが重要だ」と説明。単一のネットワークを用途に応じて分割するネットワークスライシングに対応したコネクティビティの提供や、柔軟で細かなネットワークの運用、5Gキャリアが開放するAPIとの接続性が求められるとの見方を示した。
一方で従来の中規模およびエンタープライズDCはオンプレサーバーのコロケーションとして利用されているものの、成長率としては頭打ちの状態だという。和田アソシエイトパートナーは「AIなどの最新技術の利用が進んでいることで、従来型DCへの需要は減退している。ただし、自社の保有要件のもとで運用を行うプライベート基盤としてのニーズは根強い」とし、「地場の顧客からの細かな要望に対して、顔が見えるような密着型営業で細かく対応しながら、いかに通信やソフトウェアなどの周辺サービスをワンストップで提供できるかが、従来型DCが生き残る上で重要になる」との見解を示した。
環境面に関しては、多量の電力を消費するDC産業において、脱炭素社会への移行に向けたグリーンDCの開発・普及競争が活発になっていると紹介した。三宅マネージャーは世界の電力消費量のうち、DCの電力消費量は1~2%ほどに相当し、将来的にIPトラフィックの増加に伴って増大していくと予測した。その上で、IT業界における意思決定者や投資家はDCの脱炭素化を重視する傾向があるとし、「DCのサステナビリティの要請は顕在化してきている」(三宅マネジャー)と話した。日本においては特に情報通信、金融などのサービス分野で取り組みが加速しているという。
脱炭素化に向けた取り組みについて三宅マネジャーは「再生可能エネルギーの調達がボトルネックとなる日本では、打ち手を複合的に組み合わせることが重要」と強調。具体的な手法としては液浸による冷却やAIによる運用最適化のほか、暖房や養殖などへのDCの廃熱利用などを紹介した。また「省エネや電力使用効率の改善を継続的に突き詰めていくことが国内DCサステナビリティを実現する上での一丁目一番地」と話した。
●三相PDUの引き合いが増加
続いて、ラリタン・ジャパンの佐子博史・ビジネスデベロップメントマネージャーが登壇し、同社が提供するDC向けのソリューションについて説明した。
同社はITインフラ制御と電源管理・環境管理を柱として製品を展開する。ITインフラ制御では、KVM over IPスイッチの提供を行っており、一つのマウス、キーボード、ディスプレイで複数のサーバーの操作を可能にするKVMスイッチをリモート環境でも使えるようにする。グローバルではトップクラスのマーケットシェアだという。エンタープライズ向けに「Dominion KX3」を提供するほか、中小企業向けにも「Dominion LX2」といったラインアップをそろえており、高いセキュリティなどを強みとする。また、アクセス統合管理機器「CommandCenter Secure Gateway」を提供しており、さまざまなITインフラに対するセキュアな管理が可能になるとした。
電源管理・環境管理に関する製品群では、サーバーラック用電源タップ「PX インテリジェントPDUシリーズ」を提供する。PDU(Power Distribution Unit)市場の動向について佐子マネージャーは「サーバーの消費電力が増加していることを受け、グローバルでは単相よりも大規模な送電ができる三相に対応したPDUへと需要が切り替わっている」と解説した。国内でも三相PDUの引き合いが増加しているとし、「分電盤の環境が整っていないDCもまだまだあるが、2024年頃からは分電盤からの供給も三相に切り替わっていくだろう」と話した。
同社のインテリジェントPDUは、配電機能だけでなくリアルタイムのリモート電源監視や、温度・湿度などを検知する環境センサーを搭載する。また、消費電力量の計測などもでき、電力使用効率の改善活動につなげられる。
佐子マネージャーは、ユーザー事例としてインターネットイニシアティブ(IIJ)のインテリジェントPDUの活用を紹介した。IIJが提供するエッジコンピューティング環境を構築するコンテナ型DC内で利用され、リモート環境からでもDC内の環境や消費電力の管理ができるように支援しているとした。「電力使用効率の改善のために有効活用されている」(佐子マネージャー)と話した。
ラリタン・ジャパンのエリック・グリーンバーグカントリーディレクターは「ラリタンのインテリジェントPDUは、サーバーの消費電力のパフォーマンスを管理することで顧客にエコフレンドリーな環境を届ける」とアピールした。