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都築電気、成長6領域で収益力を高める DX人材の育成にも注力

週刊BCN+ 2023年8月10日 9時0分

 都築電気はコンタクトセンターやDXコンサルティングなど、成長している六つの事業領域を軸に収益力の強化を進めている。ITソリューションと通信ネットワークの両方に長けた強みを生かす。DX人材の育成にも力を入れ、社内外の試験を組み合わせてDXの技量や知識を可視化する社内制度「DXアソシエイト」の認定人材を2025年度(26年3月期)までに1.5倍に増やす方針だ。(取材・文/安藤章司)

●コミュニケーションに強みあり



 成長6領域のなかで最初に挙げられるのが、コンタクトセンターとクラウドコミュニケーションの二つ。長年培ってきたコンタクトセンターシステムや構内交換機(PBX)、ビジネスフォンといった通信系の強みと、SIerとしてのITソリューションのノウハウを融合させた領域である。

 具体的には、同社グループのコムデザインが開発する中堅・中小規模向けのクラウド型コンタクトセンターシステム「CT-e1/SaaS」や、既存のビジネスフォン事業を発展させた次世代クラウド型PBXサービス「TCloud for Voice」を主軸に据える。

 都築電気の江森勲社長は、「CT-e1/SaaSは中堅・中小規模のコンタクトセンターに対応できることから、一般企業の小規模な受付業務のデジタル化需要にも応えられる」と指摘。システム未導入企業における「過去の対応履歴との紐づけができない」「会話記録を残せない」といった課題を解決するとともに、録音データをテキスト化しAIで要約するなど「従来のビジネスフォンではできなかった業務改革、生産性向上につなげられる」(江森社長)と話す。次世代型PBXサービスは、「Microsoft Teams」などの音声通信やIP電話、スマホ、固定電話、既存PBXなどを相互接続したいという需要をつかんで伸びている。

 CT-e1/SaaSを軸としたクラウド型コンタクトセンター事業は、26年3月期までの3カ年中期経営計画の最終年度に、前中計末(23年3月期)に比べて35.6%増の61億円の売り上げ目標を掲げる。次世代型PBXサービスは今中計末までに前中計末の3倍近い30億円の売り上げ計画を立てる。


●成長領域と既存領域を半々へ



 成長6領域の残る4領域は、情報セキュリティ、DXコンサルティング、マネージドサービス、特定業種向けDXサービスとなる。

 DX関連では、AI活用やデータ分析、DX人材育成などを独自に体系化した「D-VUEサービス」を柱にビジネスを展開する。並行して、青果市場や物流、不動産など都築電気が長年深く関わってきた業種を念頭に、業種特化型のDXサービスを深掘りしていく。

 業種に焦点を当てた特定市場向けDXサービスの売上高は、足元では1桁億円台にとどまっているが、「業種ノウハウを強みとしていることを考えれば、伸びる余地が非常に大きい」(江森社長)と期待を寄せる。向こう10年で成長領域を大きく伸ばし、33年3月期には主力の情報ネットワークソリューションサービス事業セグメントの売上高構成比で、成長領域と既存領域を半々にする考え(図参照)。

 また、社内のDX人材の育成にも力を入れていく。外部のDX関連の検定試験や社内の記述試験を通じて、同社独自の認定制度である「DXアソシエイト」の資格取得を社員に奨励しており、この有資格者を中心にDXビジネスを推進する。前の中計期間中(21年3月期~23年3月期)に162人のDXアソシエイトを育成しており、今中計末までに240人体制に拡充していく。

 DX人材の育成を巡っては、課長職以上の管理職全員に加え、総務や人事、法務といったユーザー向けのDXビジネスとは直接関係ない部門担当者にもDXの知識を身につけてもらい、「自社のDXも途切れることなく続けられるよう全社一丸となって取り組む」(江森社長)としている。


●リモートでSE稼働率を平準化



 都築電気の直近の業績を振り返ると、22年度(23年3月期)の営業利益は前年度比27.6%増の51億円で過去最高となった。ユーザー企業のIT投資意欲が好調に推移したことに加え、リモートワークを積極的に取り入れた働き方改革による原価率の抑制も大きく貢献した。

 同社がリモートワークを駆使した事例としては、中部地区の大手金融業ユーザーのコンタクトセンターをクラウド化するプロジェクトがある。専門知識を持つ福岡勤務の若手2人が稼働しやすい時期だったため、リモートワークで中心的な役割を担ってもらった。

 従来は社員が所属地域外の大型プロジェクトに参加するときは、長期出張や単身赴任で対応していたが、リモートワークによって福岡に住みながら中部地区のプロジェクトに容易に参加可能となり、「“越境”のハードルが大きく下がった」(江森社長)という。場所の制約をなくすことで、地域ごとのSEの稼働率のばらつきを平準化でき、原価率低減に役立った。

 こうした取り組みによって中計最終年度の26年3月期の営業利益は65億円、10年後の33年3月期には営業利益100億円を目標に据えている。

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