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日立システムズ、AI分析による上水道の配水減圧弁の故障予兆検知を実現

週刊BCN+ 2024年10月11日 17時22分

 日立システムズは10月10日、神戸市水道局とともに、上水道の水圧データをAIで分析することにより、配水減圧弁の故障を早期に予兆検知する研究を行ったと発表した。この研究結果を活用することで、水道事業者やメーカーは配水減圧弁が故障する前に、メンテナンスができるようになる。

 これにより、精度の高いメンテナンス計画の立案が可能になることで水道事故発生件数が低減され、持続可能な安定した上水道を提供できるようになる。地域住民にとっても水道事故による急な断水などの影響が少なくなるという効果が期待できる。なお、神戸市水道局はこの研究結果について、令和6年度日本水道協会全国会議(水道研究発表会)で発表を実施した。

 神戸市は、六甲山系の起伏に富んだ地形であるため、配水池を配置して自然流下方式による給水を採用している。局所的に適正水圧を維持できない地域については、公道内の配水管に減圧弁を設置することで水圧を調整してきた。配水減圧弁には水圧計を設置し、定期的に水圧データを現地で回収してきたが、故障対応ついては、配水減圧弁が故障してからでないと対応ができず、故障後の修理は故障箇所が複数にわたることも多く、異常の原因特定に時間がかかること、職員の負担が大きいことが課題となっていた。

 日立システムズでは、2023年7月から減圧弁水圧監視システムを神戸市水道局に導入しており、配水減圧弁の水圧データ提供などの業務で、市内60カ所以上の減圧弁付近での水圧データの提供・運用を行っている。さらなる運用の高度化のため、減圧弁の故障を予兆検知するシステムの実現に向けて、水圧データのAI分析の研究を実施することとなった。

 減圧弁への水圧のかかり方は、使用条件や使用環境、製造業者や型式などでさまざまだが、今回の研究では、劣化具合を分析したい減圧弁の水圧値とAIで生成した数値上、正常とされる減圧弁の水圧値を比較し、差を見ることで、対象の減圧弁の故障の程度を分析する。

 今年1月に発生した減圧弁の異常時には、減圧弁水圧監視システムでしきい値超過を検知し、神戸市水道局は早期に故障を把握、迅速な現地対応を実施した。その後、当時の水圧データに対してAI分析を行った結果、故障が確認できた約1カ月前から、毎日0~6時の時間帯で、正常時に対して水圧値が上方に超過していたことがわかった。超過原因は減圧弁内部のネジの緩みなどだった。

 これにより、水圧が徐々に上昇し始めていたと考えられ、しきい値超過で水圧異常を検知する前に、AI分析を活用することで、故障の予兆検知ができることがわかった。

 予兆検知によって、故障発生の未然防止や水道局員によるメンテナンス作業の効率化などが見込める。日立システムズでは、今回の研究に関する検証をさらに進め、25年度からサービス提供を目指す。これにより、水道事故防止・最小化による住民被害の減少、水供給の安定化を目指す神戸市水道局をはじめとする全国の水道事業体の取り組みを支援していく。

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