日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は11月21日、「ダイバーシティ推進フォーラム2024」を開催した。日本のダイバーシティー推進における現状と課題や、JCSSAが実施した女性活躍に関する調査結果の発表、JCSSA会員企業によるディスカッションなどが実施された。
(取材・文/大向琴音)
基調講演では、著作家・メディアプロデューサーで羽生プロの羽生祥子社長が登壇。「日本のダイバーシティ推進を阻む“性別ガチャ”克服法」と題し、男女間の差などダイバーシティーに関する課題について解説した。ダイバーシティーとは、多様性のことを指す。人には、性別や年齢、民族などの属性や、理系・文系、挑戦的・保守的などの特性が存在するが、属性と特性を結びつけずにマネジメントすることが多様性の本質だとした。日本の多様性を考えたとき、遅れているのが性別の部分で、生涯年収から成人するまでの教育費を引いた額の男女差は他国より大きいという。
羽生社長は、女性だから、男性だからという理由で本人の個性や希望に関わらず生き方や働き方が決められてしまうことを「性別ガチャ」と表現した。例えば、日本の女性は男性と比べて正社員が少ないことや、理系が少ないことを具体例として挙げた。
しかし、「ダイバーシティー経営は、経営リスクと直結する時代になった」と羽生社長は指摘する。投資家は企業の女性活躍に関する情報を重視している上、管理職側にダイバーシティーに対する意識が低いと、女性だけでなく男性社員の離職などを招く可能性があるためだという。だからこそ、「これからのリーダーは、多様性のない組織のリスクを減らすのが役目」と説明した。多様性がなく1種類の人だけで集まった組織は、▽自分たちの集団を過大評価する▽外部からの意見や警告を無視する▽集団の決定に異議を唱えるメンバーに圧力がかかる―などの状況に陥ってしまう恐れがあるとした。一方で、多様性が高い企業では、収益に占める新製品の割合が高いなど、経営へのメリットをもたらす例もある。画一的な組織から抜け出し環境を変えることは、イノベーションを起こす確率を高めることにつながるとした。
第2部の冒頭では、「JCSSA女性活躍推進調査2024」の結果を発表した。JCSSA会員430社を調査対象とし、129社が回答。そのうち59%が「女性活躍推進の取り組みが行われている」と答えた。取り組みを計画中の企業を含めると約7割に達することから、BCNの奥田芳恵社長は「女性活躍推進の取り組みの必要性を感じていることがうかがえる」と分析した。また、管理職、総合職、専門職における課長職級以上の女性の比率は5%未満が最多となり、これらをさらに増やすための課題としては、主に「女性社員の意識や意欲」が挙げられ、次いで「モデルとなる女性管理職や専門職の不在」が多かった。そのほか、9割以上の企業が男性部下と同等に女性を育成しており、8割以上が重要な職務を担当するのに性別は関係なく、能力次第だと答えた。一方で、サポート的な仕事や細かい事務処理は男性と女性のどちらが担当することが多いかについては、男性が多いとの回答は2%であるのに対し、女性が多いと回答した割合は47%と、半数近くの回答を集めた。
調査結果を踏まえたパネルセッションでは、羽生社長のほか、SCSKで理事を務める堀田真杉・SE+管理本部長、日本AMDの関路子・副社長、エムオーテックスの宮崎吉朗社長、ダイワボウ情報システムの堤康次郎・西日本営業本部副本部長が登壇。セッションの中では、各社における具体的な課題や施策についても言及した。
ダイワボウ情報システムの堤副本部長は、社内において昇給や昇格に対するハンディキャップを感じている女性はほとんどいないが、ロールモデルがおらず、結婚、出産、育児などを経験して管理職に就いた女性社員が少ないことを課題として挙げた。エムオーテックスの宮崎社長も、女性管理職が不足しているという点で同じ課題を抱えているが、働き方改革に取り組んだことで女性活躍の土壌はできあがっているとした。SCSKの堀田SE+管理本部長は、社内にロールモデルはほとんどいなかったとした一方で、ロールモデルは女性や社内に限定しなくてもいいとの見解を示した。日本AMDの関副社長は、あえて女性を登用するプログラムは設定していないものの、女性が仲間として働いていることが普通となるよう、意識して環境をつくるようにしていると説明した。
特に女性活躍推進にフォーカスし、多様な人材が活躍するIT業界への貢献を通して日本を元気にすることを目的として、JCSSAの分科会としてダイバーシティ推進分科会が本年度新たに立ち上がった。調査やネットワーキングなどの活動を通して、企業のダイバーシティー推進における課題解決に貢献する。
(取材・文/大向琴音)
基調講演では、著作家・メディアプロデューサーで羽生プロの羽生祥子社長が登壇。「日本のダイバーシティ推進を阻む“性別ガチャ”克服法」と題し、男女間の差などダイバーシティーに関する課題について解説した。ダイバーシティーとは、多様性のことを指す。人には、性別や年齢、民族などの属性や、理系・文系、挑戦的・保守的などの特性が存在するが、属性と特性を結びつけずにマネジメントすることが多様性の本質だとした。日本の多様性を考えたとき、遅れているのが性別の部分で、生涯年収から成人するまでの教育費を引いた額の男女差は他国より大きいという。
羽生社長は、女性だから、男性だからという理由で本人の個性や希望に関わらず生き方や働き方が決められてしまうことを「性別ガチャ」と表現した。例えば、日本の女性は男性と比べて正社員が少ないことや、理系が少ないことを具体例として挙げた。
しかし、「ダイバーシティー経営は、経営リスクと直結する時代になった」と羽生社長は指摘する。投資家は企業の女性活躍に関する情報を重視している上、管理職側にダイバーシティーに対する意識が低いと、女性だけでなく男性社員の離職などを招く可能性があるためだという。だからこそ、「これからのリーダーは、多様性のない組織のリスクを減らすのが役目」と説明した。多様性がなく1種類の人だけで集まった組織は、▽自分たちの集団を過大評価する▽外部からの意見や警告を無視する▽集団の決定に異議を唱えるメンバーに圧力がかかる―などの状況に陥ってしまう恐れがあるとした。一方で、多様性が高い企業では、収益に占める新製品の割合が高いなど、経営へのメリットをもたらす例もある。画一的な組織から抜け出し環境を変えることは、イノベーションを起こす確率を高めることにつながるとした。
第2部の冒頭では、「JCSSA女性活躍推進調査2024」の結果を発表した。JCSSA会員430社を調査対象とし、129社が回答。そのうち59%が「女性活躍推進の取り組みが行われている」と答えた。取り組みを計画中の企業を含めると約7割に達することから、BCNの奥田芳恵社長は「女性活躍推進の取り組みの必要性を感じていることがうかがえる」と分析した。また、管理職、総合職、専門職における課長職級以上の女性の比率は5%未満が最多となり、これらをさらに増やすための課題としては、主に「女性社員の意識や意欲」が挙げられ、次いで「モデルとなる女性管理職や専門職の不在」が多かった。そのほか、9割以上の企業が男性部下と同等に女性を育成しており、8割以上が重要な職務を担当するのに性別は関係なく、能力次第だと答えた。一方で、サポート的な仕事や細かい事務処理は男性と女性のどちらが担当することが多いかについては、男性が多いとの回答は2%であるのに対し、女性が多いと回答した割合は47%と、半数近くの回答を集めた。
調査結果を踏まえたパネルセッションでは、羽生社長のほか、SCSKで理事を務める堀田真杉・SE+管理本部長、日本AMDの関路子・副社長、エムオーテックスの宮崎吉朗社長、ダイワボウ情報システムの堤康次郎・西日本営業本部副本部長が登壇。セッションの中では、各社における具体的な課題や施策についても言及した。
ダイワボウ情報システムの堤副本部長は、社内において昇給や昇格に対するハンディキャップを感じている女性はほとんどいないが、ロールモデルがおらず、結婚、出産、育児などを経験して管理職に就いた女性社員が少ないことを課題として挙げた。エムオーテックスの宮崎社長も、女性管理職が不足しているという点で同じ課題を抱えているが、働き方改革に取り組んだことで女性活躍の土壌はできあがっているとした。SCSKの堀田SE+管理本部長は、社内にロールモデルはほとんどいなかったとした一方で、ロールモデルは女性や社内に限定しなくてもいいとの見解を示した。日本AMDの関副社長は、あえて女性を登用するプログラムは設定していないものの、女性が仲間として働いていることが普通となるよう、意識して環境をつくるようにしていると説明した。
特に女性活躍推進にフォーカスし、多様な人材が活躍するIT業界への貢献を通して日本を元気にすることを目的として、JCSSAの分科会としてダイバーシティ推進分科会が本年度新たに立ち上がった。調査やネットワーキングなどの活動を通して、企業のダイバーシティー推進における課題解決に貢献する。