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社会人の情熱がリングで爆発「有給プロレス」〝聖地〟後楽園ホールを満員に「5~10年後には両国に」

よろず~ニュース 2024年6月30日 10時7分

 社会人になってもプロレス愛は不変だ。学生プロレスOBによる大会「ギャル男くん興行Presents社会人プロレス後楽園ホール大会~有給取って、プロレスします。」(有給プロレス=28日、東京・後楽園ホール)が開催された。同大会を成功に導いた「きしだくん」こと、本職はコンサルタントの有給プロレス代表・岸田翔太さん(34)に、激闘から一夜明けた29日に話を聞いた。

 満員の聖地が沸騰した。メインできしだくんはアスカ・ザ・ワールド(不動産営業職)と組み、児―ポ監督(精肉マネジャー)&ハミ・TⅡ・ジロー(専門商社営業)組と激突。終始劣勢の肉弾戦をカウント2で耐え抜き、最後は敬愛するトリプルH、JBL(ジョン・ブラッドショー・レイフィールド)ばりのシモキタンラリアットでジローを粉砕。39分46秒の死闘を制した。

 きしだくんが「この期末で忙しい中、仕事を終えて我々の趣味の社会人プロレスを見に来ていただき本当にありがとうございました。社会人プロレス、楽しかったですか」と訴えると、大「きしだ」コールが発生。「社会人プロレスをやっているのは我々だけじゃありません。今日出たCWPという団体、AZW、nkw、WIN、RAW、健康プロレス…社会人プロレスっていっぱいあるんですよ!そんな仲間たちとこうやって、土日や、会社の有給とってプロレスやってます。是非また、見に来てください!」と挨拶。温かい拍手を受け、リングに上がった全選手とスタッフを背に「有給プロレス!」と叫び、呼応した観客ら全員で「ダー!」と拳を突き上げ、大団円を迎えた。

 一夜明け、きしだくんこと岸田代表は「昨晩は5時まで打ち上げがありましたが、少し寝たのでもう大丈夫です」とたくましかった。「本当に楽しかった!」と声を弾ませた。

 岸田代表は東京都出身。高校時代までサッカー、水球に励み、早稲田大学進学後にUWF関東学生プロレス連盟(早稲田、慶応、駒沢、法政、東海、中央、東洋など)に所属。格闘技経験がなく、ボコボコにされながらも戦い続けた。大学時代には後楽園ホールで開催された「学生プロレスサミット」に参戦。全国の他学生プロレス団体とも顔を合わせ、プロレスの魅力にハマっていった。

 卒業後はシステムエンジニアとして働きながら、学生時代から親交の深いプロレスラー大谷譲二が約10年前に立ち上げたアマチュア大会「ギャル男くん興行」に参加。週に1回は仲間と集まり、受け身や実戦練習を行い、年に2、3回開催される大会に備えた。約8年前からは運営も担うようになった。会場の予約、設営、マッチメイクを仲間と行う。「皆が仕事をしながら、趣味としてプロレスを続けている。楽しむためにはどうすればいいか、話し合ってきました」。転機は昨年11月の大会だった。満足できるパフォーマンスをリングで発揮し「全盛期が来た、というくらい調子が良かった。プロレスの聖地、後楽園でプロレスをやりたいと思いました」と打ち上げで決意表明。「ギャル男くん興行」を発展させた「有給プロレス」の準備が始まった。

 普段はキャパ100人程度の会場を使用する。「後楽園は規模が大きくて大変でした。普段のメンバーはイベントのノウハウがないので」と困ったが、学生プロレスの人脈が生きた。日本を代表する格闘技イベントで働く後輩、大手SNS企業に勤める先輩に力を借りた。主に広報面で、社会人プロレスのファン以外にも認知を広げる計画が進んだ。学生時代から縁がある社会人レスラーに加え、大谷譲二ら学生プロレス出身のプロレスラー、そして同志社大で学生プロレスに励んだ協力者のツテで同大出身のレイザーラモンHGの参戦が決まった。SNS、ホームページをはじめとした積極的なプロモーション活動、プロ団体の応援も受け、チケットは完売した。

【次ページ】社会人プロレスの魅力とは

 岸田代表もSE時代、現職のコンサルタント業で培った経験が生きた。「レスラーだけでなく、社会人としてもしっかりやってきましたから。精神的にきついコンサルタントとして、課題を克服するためのツールは使えたと思います」と、うなずいた。他の仲間も多種多様な仕事で培った〝武器〟を持っており、多くの場面で役立っていることは、学生時代とは異なるところだという。「学生時代は向こう見ずなところがありましたが、今は日常生活に支障が出ないように気をつけています」と精神的に成熟した点も、学生プロレスとの違いだろう。


 岸田代表は妻と二人暮らし。「彼女は学生時代にミュージカルをやっていたので、僕のプロレスも応援してくれています。友人を連れて会場に来てくれることも。楽しんでいるから理解してくれているんだと思います」と感謝の思いを抱く。

 岸田代表は社会人プロレスでは、対戦相手にビジネスマナーを呼びかけ、対話を重ねながら戦うスタイルを確立してきた。しかし後楽園大会当日に、地声では後方席には届かないことが判明。「第1試合から見ていて、予想以上に声が通っていなかった。直前まで龍角散をなめて準備して、いつも以上に大きな声で話したのですが…」。この点は次回への課題に残ったようだ。また、激しいチョップ合戦を繰り広げたため「(試合で)胸を真っ赤にして帰宅したので、心配をかけてしまいました」と、妻への反省も口にした。

 社会人プロレスの魅力を「中肉中背の社会人がプロレスをするところ。プロレスラーは異次元にスゴイですが、我々のような者がすごい試合をすることで、プロレスの間口が広がる」と語った岸田代表。「引退ではありませんが、この日で一線を引こうかと思っていました」と大会前の心境を告白しつつ「あれだけのお客さんの前に立てて楽しかった。まだまだやりますよ!」と撤回。現在は諸問題で消滅してしまった学生プロレスサミットの社会人版を思い描く。「球児にとっての甲子園のように、1年に1回は社会人プロレスを後楽園で開催して、目標となる大会をつくりたい。5~10年後には両国国技館で開催したいですね」と夢を語っていた。

 ◆有給プロレス(6月28日、後楽園ホール)▶第1試合タッグマッチ ホテルニューハーフオオタニ(繊維製造業)&フェラナンテドーデス(テレビ局・記者)―三村マザファッカズ(整体・リラクゼーションズ)&BRA-VO(飲食店向け総合支援事業) ▶第2試合タッグバトルロイヤル 抹茶どらごん(造園・設計)&オカルト大魔王(印刷・アパレルデザイナー)―YMD(食品・飲料品質管理)&レイザーラモンHG(お笑い芸人)―KENNY(建設用設備資材販売)&グレート-GO-カーン(リース営業)―立ちション・クレイジー(古紙卸売)&テントハリゾー(マーケティングサービス・ディレクター)―軍団ひとり(不動産資産管理)&ヌレヨンちんちゃん(コンサルタント)―Daisuke(テーマパーク運営)&スゴイよ!!マラルさん(心療内科・相談援助)―オリラブ(スーパーマーケット・庶務)&笹村あやめ(プロレスラー) ▶第3試合タッグマッチ オルカ宇藤(プロレスラー)&最上九(プロレスラー)―タケダリュウノスケ(オアーソナルジム)&ハス向井理(出版社) ▶4試合シングルマッチ ヘルデカイ(エンタメ・プロモーション)―喰霊斗たむ(建築用材料・営業兼施行管理) ▶第5試合タッグ3wayマッチ クズ・ハヤシ(外資系テック・広告営業)&Mr.Money(電子書籍・サービス管理)―ディック・ズレーター(清掃業作業員)&DMP(アパレル・企画)―クスリ松村(飲食店スタッフ)&太くて固いの星ぃ野勘九郎(お笑い芸人) ▶セミファイナル・シングルマッチ 大谷譲二(プロレスラー)―佐々木コンプリートJr.(研究職) ▶メイン・タッグマッチ アスカ・ザ・ワールド(不動産営業職)&きしだくん(コンサルタント)―児ーポ監督(精肉マネジャー)&ハミ・TⅡ・ジロー(専門商社営業)

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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