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「空港は戦場だ」ピョン・ウソク、過剰警護への非難とその真相、そして提言とは 警備会社、空港側に聞く

よろず~ニュース 2024年7月28日 13時0分

 俳優のピョン・ウソクのアジアツアーの過剰警護問題は、韓国内で多くの非難が寄せられるなど、大きな波紋を呼んだ。韓国ニュースサイトのディスパッチ(Disratch)ではこのほど、アジアツアーで仁川(インチョン)空港で発生した事案を時系列でリポートし、その真相に迫った。スターとファン、警護の関係についての提言へと至っている。

 6月6日、俳優のピョン・ウソクが仁川空港から台湾に出発した。アジアツアーの始まりだった。空港には多くのファンが押し寄せ、2番ゲート前は大混乱に。我先にと自動ドアを通り抜けようとするファンが押し合いになった。1人のファンが転倒し、危うく群衆事故に発展しそうになる。

 6月26日、ピョン・ウソクは再び仁川空港から、今回はインドネシアへと出発した。ジャカルタで開催されるファンミーティングに参加する予定だった。この日も多くのファンが押し寄せる。警護チームは前回のような混乱を防ぐため、自動ドアの前に2人の警護スタッフを配置し、腕を広げて壁を作ったものの失敗。ファンは自動ドアの隣にある手動ドアから入り込んだ。

 7月12日、アジアツアー最後の日程で香港に向かうため、仁川空港に到着。警護チームは3度目の失敗を避けるため、空港警察隊に協力を要請した。警護チームは、警察隊との協議の末、自動ドアを手動ドアに切り替えることに。48秒間、ドアの開閉を止め、人の出入りを制限した。

 結果としてこの対処は成功した。ピョン・ウソクとファンの間には48秒の間隔が生じ、事故も起こらなかった。しかし、これにより「過剰警護」との批判が相次ぎ、ピョン・ウソクにも世間の非難は向いた。

 仁川国際空港公社社長のイ・ハクジェは17日、「空港設立以来初めての事態」と言及。「警備会社がこれほど過剰な対応をした前例がなかった」と、今後の対策を立てる意志を示した。

 人気スターの出入国は、アーティストが押されて転倒したり、ファンが転倒して押し合いになるなど、毎回混乱に見舞われている。器物損壊の件数も計り知れず、自動ドアが破壊されたこともあった。昨年には、aespa(エスパ)やEXO(エクソ)のベクヒョン、ZEROBASEONE(ゼロベースワン)、NewJeans、BTSのジョングクらの出入国時に、ファンが押し寄せたことによる転倒事故などが発生。今年に入ってからも、ENHYPEN(エンハイプン)やIU(アイユー)のファンが転倒したり、RIIZE(ライズ)の入国時に自動ドアが破壊されたりする事態が起こった。2022年には、BTSのVがSNSで注意喚起している。

 再び問題の7月12日。車から降りたピョン・ウソクの隣には警護スタッフが立っていた。ピョン・ウソクは、警護スタッフの案内に従って横断歩道を渡る。別の警護スタッフ4人が2番ゲートの前に立っている。ピョン・ウソクがスタッフとともに出国ロビーに入ると、ゲート前のスタッフ2人が2番ゲートの自動ドアを48秒間、手動に切り替える。ピョン・ウソクがチェックインカウンターへ向かう。さらに別の警護スタッフ3人が、出国ロビー内にバリケードを作る。1人はベルトパーティションを維持し、残りの2人はラインを越えるファンを制止した。出国手続きを終え、ビジネスラウンジに向かう際は、警護スタッフのうち2人が付き添った。1人は隣でピョン・ウソクを保護し、もう1人はファンを制止しながら安全な距離を確保した。

 以上がピョン・ウソクと警護スタッフたちの動きだった。問題となったのは、「自動ドアの手動転換」「フラッシュの使用」「航空券の確認」だ。

 ピョン・ウソクの警備会社は、6月6日には6人だった人員を、7月12日には8人に増やした。警備会社の代表は、取材に対して「俳優の出国時には通常2人の警護スタッフをつける」「ピョン・ウソクには初めは6人の警護スタッフをつけたが、抑えきれなかった。最終的に2人追加した」と明かした。

 警護チームが最も懸念した場所は、出国ロビーの2番ゲート。一度ファンの転倒が起こり、警護スタッフが壁を作っても突破されたため、空港警察隊に協力を要請し、自動ドアを手動に切り替えることになった。実際にピョン・ウソクの出国映像を確認すると、空港警察隊の職員の姿が確認できる。その職員は、警護スタッフと同じく手動でドアを開閉して出国ロビーに入っており、事前に協議がなされていたことが分かる。

 仁川空港側は、「芸能人の出国や海外アスリートの入国の際、警備隊の自主的な判断に従ってゲートを管理している」「大谷翔平選手が入国した際も、自動ドアを手動に切り替えた」と明かした。

 警護スタッフが積極的に対処すれば「過剰」という批判が相次ぎ、消極的な対処をすれば、「傍観」と非難される。しかし、警護スタッフは、事故よりは非難のほうがマシという立場だ。警備会社の代表は「自動ドアを48秒間手動に切り替え、その短い時間で余裕のある動線を確保しました。群衆事故も器物損壊も防ぐことができました。非難されないことよりも安全のほうが重要です」と話した。ただ、警護スタッフの案内が不十分だった点に関しては謝罪し、「警護スタッフは10分間ドアを閉めると言った。十分に誤解を与える発言だった」と釈明した。

 同代表は、取材側に質問を投げかけた。「6月6日に転倒したファンがいました。もしその時、他のファンも相次いで転倒していたらどうなっていたでしょう。『なぜドアを封鎖しなかったんだ』と非難されたはずです。現場では過剰だった部分もありました。しかし、その時はそれが最善だと思っていました。申し訳ありません」。

 スターたちの出入国現場はまるで戦場だ。ファン、YouTuber、記者などが入り乱れて大混乱に陥る。

 警護スタッフの任務はアーティストの保護だ。その過程で身体的接触が起こる場合もある。カメラを持って近づくファンを制止するため、手や足が出たこともあった。そのため、有効なのはフラッシュだ。相手のレンズにライトの光を向ける。このやり方は、身体の接触を避けながら、近距離での撮影を防げるという点が評価された。

 しかし、ピョン・ウソクの場合、フラッシュが過剰警護の象徴となった。1人の警護スタッフがフラッシュを必要以上に使用したからだ。

 ビジネスラウンジ内でフラッシュを使用する必要はあっただろうか。同代表は「チケットを取ってビジネスラウンジまで入ってくるファンもいる」とした上で、「警護スタッフの反応は過剰だった。ご迷惑をおかけして申し訳ない」「カメラを持って近づいてくるファンには、警告の意味でフラッシュを使用する必要があります。しかし、必要以上に使用してしまいました。利用客の方たちにご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。こちらの過失です」と謝罪した。

 一方、パスポートで身分確認を行ったことへの批判に対しては、誤報であるとし、「2階のラウンジの利用券を確認しただけ」と反論した。空港警備隊の職員も加わり、エスカレーターの入り口でラウンジ利用チケットの有無を確認した。実際に現場の映像を見ると、「どちらに行かれるんですか」「見せてください」という警備隊の声を聞くことができる。

 同代表は「ラウンジ行きのエスカレーターは狭い。ファンが集まれば押し合いになり、事故につながります。やむを得ずチケットを確認しました」とした上で「パスポートは確認していない。誤解しないでほしい」と言い、「ラウンジの利用客のためにも確認は必要だと思った」と付け加えた。それでも「一般利用客にも被害が及ぶ可能性がありました。ファンが押し寄せてエスカレーターに乗ってくるかもしれません。しかし、結果として、一般利用客に不快な思いをさせてしまいました。申し訳ありません」と謝罪を口にした。

 仁川空港公社のイ・ハクジェ社長は「仁川空港設立以来、このような事態は初めてです」と話すが、本当だろうか。これまで、多くの芸能人が押されたり、ファンが転倒したりする事態が起こっていた。バリケードが破られ、自動ドアが破壊された。過剰警護は非難されるべきだが、事故につながる可能性もあるのに、介入を減らすわけにはいかない。社長は「机上の空論」ではない代案を提示すべきだ。

 ファンにも変化が必要だ。2018年に、BTSの安全な入国のためにファンが行った「パープルラインキャンペーン」にその答えがある。このキャンペーンは長くは続かず、現在では見られなくなった。しかし当時、BTSのファンは、自発的に秩序を守るキャンペーンを実施した。「ついていかない」「見るだけに留める」「幸せな距離を維持する」と、入国ロビーに紫のラインを張ったのだ。

 空港は、スターを目の前で見られる場所であるため、安全な距離を確保する必要がある。警護体制を批判し、芸能人を非難するのではなく、ファンのほうから距離を置かなければならない。

(よろず~ニュース特約・moca)

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