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ネコ業界では世紀の発見!ネコが猫草を食べる理由 葉酸、ストレス解消…ではない意外な新説

よろず~ニュース 2024年8月11日 12時20分

猫が好んで口にする猫草(燕麦)。胃にたまった毛玉を吐き出すため、葉酸を得るため、ストレス解消のためなどその理由には諸説あったが、今、SNS上では新たな有力な説が大きな注目を集めている。

「みんなー、猫様がなんで猫草を食べるのか、ちょっとわかったぞぉぉー!」

とXに投稿したのは獣医学博士で和猫研究所所長の岩﨑永治さん(@Jpn_Cat_Lab)。

味覚センサーで調べたところ、猫草には旨味と塩味があって、苦味が少ない。つまり猫はおいしいから猫草を食べている可能性が高まったのだ。この研究「ネコが摂食する可能性のある植物の味覚分析手法の評価」により一般社団法人日本ペット栄養学会から優秀発表賞に選ばれた岩﨑さんに話を聞いた。

--このテーマを研究された経緯は?

岩﨑:私は猫が好きで、大学時代から猫の研究ばかり行ってきました。ペットとしてありふれた猫ですが、解明されていないことはたくさんあります。その中の一つに、真性の肉食動物であるはずの猫が、なぜか猫草を好んで食べるという謎がありました。

詳しく調べてみても、なぜ植物を食べるのか証明した研究は皆無。これまで立てられた仮説は多数ありますが、巷では「嘔吐を誘発させて毛玉排泄を促す」という説がよく挙げられてきました。しかし実際、猫草を食べて嘔吐する確率は27%~37%程度。近年有力視されている「腸内寄生虫の浄化」という説もありますが、寄生虫のいない猫も猫草を摂食します。しかし現実として継続して猫草を食べるのだから、猫草は必ず猫にとってストレスがない味になっているはずだと考えました。

--食べるからにはおいしいはず、ということでしょうか?

岩﨑:この研究の前、私は『猫はなぜごはんに飽きるのか』(ホーム社)という本を出版しております。その中で、猫は苦味に対し、ウサギやハムスターと比べて1000倍の感度を持つことを書かせていただきました。

植物は草食獣に食べられることを避けるため、苦味を高めて防御力を高める進化をした種もいます。一方、 草食獣は 多少苦味のある植物でも食べられるように、苦味に対して抵抗性を持ち、苦味に対して鈍感になるように進化するなど、いたちごっこが続いていたと考えられます。肉食獣は草をメインの栄養素としていませんから、苦味に対して抵抗性を進化させてこなかったのです。

この記憶と結びつき、猫が猫草を食べ続けるなら、必ず苦味は少ないはずだと思いつきました。そこで、この研究テーマをお世話になっている大学の先生にご相談したところご快諾いただき、日本ペット栄養学会の学術奨励金に応募したところ賞をいただくことができました。

--研究にあたりご苦労は?

岩﨑:研究は野生のヨモギやナズナを採取する必要があったため、今年3月末から開始しました。日中は本業があるので、研究は主に子供が寝静まった21時以降、あるいは休日の子供の昼寝時間を使って行いました。まだ子供が幼く、共働きの妻と協力しながら家事、育児、仕事を両立させる必要があるため、研究時間を確保することにはだいぶ苦労しました。

また、初めはどんなものでも味の比較ができると考えていたのですが、インテリジェントセンサーテクノロジー社の味覚センサーTS-5000zは同じ食品カテゴリの比較にしか使えないことがわかりました。そこで、猫草、野菜、野草を比較するために分析手法から開発する必要がありました。試行錯誤の末、ペットフードのカリカリと一緒に植物を混ぜ込むことで、ペットフードのカテゴリとして植物同士を比較する手法となりました。その中で株式会社ベジテックは分析を引き受けてくださり、分析手法を確立するまで親身になってご相談に乗っていただきました。

--反響へのご感想を。

岩﨑:あらためて、日本人は猫様が大好きだなぁと感慨深い気持ちでおります。ここまで大きな反響をいただき、研究者冥利に尽きます!このような話題性のある研究を継続し、皆様が知りたいと思っている猫の謎をこれからも解き明かしていきたいと、心新たに誓いました。

また、学会発表では研究のネタがよいという感想もいただきました。おそらく、味覚センサーで猫草の味を調べようと考える変な人は私くらいでしょう。

◇ ◇

岩﨑さんの猫好きならではの発想と、地道な研究が実を結んだ今回の発見。今後、研究結果が応用され、さらに猫にとって暮らしよい社会が実現することを願いたい。

岩﨑永治(いわざき・えいじ)さんプロフィール

猫好きな獣医学博士。ペットフードメーカーに入社後、動物栄養学の権威とされるイリノイ大学のKelly S. Swanson博士の下に2度にわたって留学し、日本獣医生命科学大学大学院研究生を経て博士号を取得。専門は猫の栄養学。現在は同社に勤めながら、日本獣医生命科学大学動物看護学科の特別研究生として、ねこ様の感じるおいしさについて研究している。専門とする猫の栄養学のみならず、日本各地の歴史の中に埋没した猫伝承を掘り起こし、科学的根拠に基づいた信頼性の高い情報発信をしている。愛猫は保護猫出身のスゥ(♀)とマイル(♂)。

日本獣医生命科学大学大学院、獣医保健看護学科の特別研究生、和猫研究所所長、某ペットフードメーカーの研究所員など多彩な肩書きを持つ。

(よろず~ニュース特約・中将タカノリ)

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