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笑福亭銀瓶 辞めることを許さなかった師匠・鶴瓶に感じた愛…タレント志望が落語の魅力にはまった理由

よろず~ニュース 2024年9月10日 11時30分

 落語家の笑福亭銀瓶がこのほど、大阪市内でよろず~ニュースのインタビューに応じた。10月4日は大阪・朝日生命ホールで桂米二、俳優・風間杜夫との「三人会vol.2」、10月7日は東京・深川江戸資料館で風間をゲストに迎えて「銀瓶の深川でぎんぎん!」を開催する。親交の深い風間に対する思い、師匠・笑福亭鶴瓶とのエピソードを語った。

 「三人会」は昨年の繁昌亭に続き2回目。スタートしたきっかけは、銀瓶と桂米二が大阪での風間の舞台を見に行き、3人で食事をした際、風間が発案したことだった。もともと落語好きで独演会も行うほどの実力の持ち主の風間とは、以前から共通の知人の縁で「ふたりの銀ちゃん」というタイトルで二人会を開く間柄。1回目の「三人会」が好評だったこともあって、今年も開催にこぎつけた。「どんな科学反応を起こすかを見て、感じていただきたい」とアピールした。

 プロ目線でも風間の落語は参考になるという。「落語はサラッとやる部分とグッと演じる部分とのバランスだと思うんですよね。風間さんは本当に落語がお好きだから、よくその辺が分かってはる。ボクもプロの噺家ですけど、横で聞いていて勉強になる。ここのシーンはこれぐらいやりこんでもいいんだな、みたいな」。趣味やシャレのレベルではないと驚嘆した。

 銀瓶自身はもともと落語家になるつもりはなかった。子どもの頃は教師になるのが夢だったが、父から「エンジニアになれ」と勧められ、中学卒業後は国立の明石工業高等専門学校に入学。本意ではなかったこともあり、将来を考えたときに、人前で何かをする、人を楽しませる仕事をしたいと思い、タレントになることを決意した。

 誰かの弟子になろうと思い、最初に頭に浮かんだのが笑福亭鶴瓶だった。テレビを見たり、ラジオを聴いていたりはしていた。「なんか優しそうやし、行ってみようかなと思って」。弟子入りは2回目で許された。「『(学校を)卒業したら取ってあげるわ』ということで」。夢に向かって第一歩を踏み出した。

 3年間の修行期間がスタートすると、鶴瓶の落語家としての一面を垣間見た。「師匠の家を掃除しますよね。その時に書斎に落語に関する本であるとか、レコード、カセットテープがたくさんあって、はじめはすごく不思議だったんですよ。当時は落語をしているイメージはなかったですし、師匠は落語をしないと思っていましたから」。抱いていた印象とは違った。

 鶴瓶から「この本を読んだら、落語というのがどういうものか、何となく分かるわ」と勧められた一冊が故3代目桂米朝が書いた「落語と私」だった。「面白く、すごく興味深かった」。書斎にある落語に関するレコード、カセットテープなど「時間があるときに自由に聞いていい」と言われて聞いていくうちに、落語の魅力にはまっていった。

 修行期間中に鶴瓶に稽古をつけてもらったこともある。「入門して2年目かなあ。『俺、落語すんの?』みたいな。それこそ失礼やけど、『師匠、教えられるの?』と思いましたね」。タレント業が忙しかった鶴瓶が落語を教えるということに驚きもあった。ただ、稽古を重ねいくうちに楽しくなり、師匠と向き合える充実した時間だった。

 ネタを教わると、先輩が催す落語会に出させてもらえるようようになる。最初はウケなくても徐々にウケてくると喜び、楽しくなってきた。先輩が一人で楽屋でサッと着替え、スッと高座に上がって客席を沸かせ、スッと降りていく…。その姿のかっこよさにもひかれていった。

 入門して2年が過ぎたころ、自分はこの世界に向いていないと思い、一度だけ鶴瓶に「辞めたい」と伝えたことがあった。しかし、許してもらえなかった。「『おまえを弟子に取ったのは俺やから、おまえを辞めさせるのも俺や。俺がやめ言うときはおまえはやめなアカンけど、今はおまえをやめさすつもりはない』と言われたんでね。それでまあ、残っているようもんで…。『今はおまえをやめさすつもりはない』っていうのが、非常に大きな言葉ですよね」。師匠の愛を感じた。

 鶴瓶が落語に比重を置くようになってから会話が増え、2人で酒を酌み交わす機会もできた。「2002、3年からですね。ボクも少しずつですけど、だんだんと自信がついてきて。師匠も少しずつ、表現者として認めだしてくれたのかな。自然と落語の話になるというか」。タレント志望で鶴瓶の門を叩いた若者は、落語家として、ますます芸に磨きをかけていく。

 ◆笑福亭銀瓶(しょうふくてい・ぎんぺい、本名・松本鐘一=まつもと・しょういち)1967年10月15日生まれ、56歳。神戸市出身。国立明石工業高等専門学校卒。1988年に笑福亭鶴瓶に入門。関西を中心に落語だけでなく、テレビやラジオと精力的に活動中。著書に自身の半生をつづった「師弟~笑福亭鶴瓶からもらった言葉」など。

(よろず~ニュース・中江 寿)

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