ディズニープリンセスでお馴染みの「シンデレラ」がR15映画となってスクリーンに血の雨を降らせる。グリム兄弟やシャルル・ペローの「シンデレラ」をベースに、残忍な処刑人に変貌した史上最強の”ダーク・シンデレラ”を描いた映画「シン・デレラ」(原題=Cinderella's Curse)の日本公開が25日にスタートする。ホラー映画界ではまだ珍しい女性監督のルイーザ・ウォーレン氏に、見どころを聞いた。
オンライン取材に応じたルイーザ監督は、柔和な笑顔を浮かべフレンドリーな人柄だった。1986年生まれ、英国ロンドン出身。意地悪な継母と義理の姉はもちろん、憧れの存在であるはずの王子までを惨殺していくストーリー。「シンデレラ」を象徴するガラスの靴が凶器として度々使用される。「ガラスの靴を取り入れようとした時、脚本家(ハリー・ボックスリー)がすごくクリエイティブで、凶器になりました」と説明。「ガラスの靴は実際にはないんです。透明のプラスチックを磨いて、手作業でジュエリーを装飾して3、4足を準備しました」と振り返った。
ガラスの靴によって肉体が損壊し、血が流れ、臓器が露出していく。「ヒールがとんがっていることが重要でしたね。視覚効果の担当者によって、攻撃された後の肉体の『穴』がヒールによるもの、ヒールでひっかいた痕跡が体に残るように工夫しました。靴が凶器であることが観客に信じられるようにね」と楽しそうに語った。
ディズニー映画同様、舞踏会でシンデレラにブルーのドレスを着せようとしたが変更。「それだとディズニーを連想させすぎてしまう。オリジナルに忠実に、白いドレスにしましたが、血しぶきがよく映える、という狙いもありました」とニッコリ。オリジナルからの変更について「魔法使いのおばあさんをグロテスクな妖怪のような姿にしましたが、鐘が鳴るまでの門限は(オリジナル通りに)入れました。ただ、弱々しく傷つきやすい印象のシンデレラを、現代的なキャラクターにしました。義理の姉たちのイジメ方も考えました。オリジナルの床磨きなどのような肉体労働によるものではなく、言葉であったり心を傷つける現代的なイジメ方にしましたね」と明かした。シンデレラはイジメによる心の傷を怨念に変え、感情を爆発させた後、ためらいなく冷徹に目標へと突き進む。
また、王子の人格が最悪で、復讐の対象となった点が印象的。「この作品のキモですね。王子さまは夢や希望、救いの象徴ですが、それをひっくり返したかった。彼は最悪で意地悪で破綻した人物像。この映画のスローガンである『私たちの人生はおとぎ話ではない』『完璧な人なんていない』を地で行っています」と明かした。
監督、役者、プロデューサーとしてホラー映画界で活躍するルイーザ監督。最初の監督作品は2018年「Dirty Work」。今年日本公開され、注目を集めたホラー映画「プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち」(リース・フレイク=ウォーターフィールド監督)には、役者として出演している。
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「子供のころからホラーが好きでした。R・L・スタインという作家の鳥肌が立つような作品を読みました。『アー・ユー・アフレイド・オブ・ザ・ダーク?(暗闇が怖いか?)』というテレビ番組は子供向けでしたが、大人でも怖い描かれ方をしていて、私に影響を残しました」
少女時代に課外活動として演技を始め、並行して音楽とダンスを学んだ。大学では作曲を学び、それから演劇と映画を学ぶコースへと進路変更。演技を通して映画を学び、短編映画の制作にも取り組んだ。予算編成などプロデューサーの勉強にも取り組み、卒業後は実際に制作に関わる中で、活動の幅が広がっていった。
監督、役者、プロデューサーとして関わり続けるホラー映画。「自分が関わる作品には、どうしても意見を言いたくなります。もうちょっとサスペンスを入れたら効果的では、十分に残酷に描けてるか、怖いか、血の色はこれで良かったのか、とかね。好きなので他のホラー映画もよく見ます。参考にすることもありますが、次はこうなる、こう撮影している、と分かってしまうんですよね」と語った。
ホラー映画界では少数派という女性監督。「女性的な視点から言うと、シンデレラを通して『王子の存在と舞踏会に行くことは一筋の希望』と、女性は刷り込まれている側面があります。人生の二大イベントは卒業式と結婚式という意識が私にもあるので、今作の舞踏会の演出に生かせたのは、女性だからかもしれません。あと、王子のひどいキャラクターを考える上で、女性の視点は役に立ったように思います」と語った。
役者として出演した「くまのプーさん」をモチーフにした「プー2」、今作の「シン・デレラ」のように、パブリックドメイン(著作権フリーのコンテンツ)の新作は、今後も予想されるところだ。ルイーザ監督は「美女と野獣」に照準を定めているという。「野獣がひとりで城に住んでいる、これだけで怖い。森に迷い込んでいく娘の旅を起点に、いろいろ遊べそうですね。ホラーの要素が既にあるので楽しそう」と笑った。
最後にオススメのホラー作品を質問すると、映画「クライマックス」(2018年、キャスパー・ノエ監督)を挙げた。「純粋にホラーとは言えないかもしれないですが、音楽もキャスパー・ノエが担当していて、ハート・ビート(心音)がだんだん速くなっていくんですよ。自分が一緒に体験しているようで、主人公がその場を離れない限り、観客もその場にとどまっていないといけない。とてもクレバーでよくできた映画です」と語ったルイーザ監督。日本の観客に向けて映画「シン・デレラ」を「あまりシリアスに考えず、楽しい作品ですので、血と残忍さをエンジョイして、予想もしない展開を期待してください」と呼びかけていた。
【「シン・デレラ」あらすじ】昔々あるところにシンデレラという美しい娘がいました。継母と義理の姉たちによる虐待に苦しんでいたある日、庭で見つけた不思議な本を読んだ彼女の前に魔法使いの〝フェアリーゴッドマザー“が出現。「舞踏会で王子様と踊りたい」と願ったシンデレラは、魔法の力によって憧れの王子とダンスをする夢が叶います。ところが王子や継母たちは舞踏会に参加している人々の前で、シンデレラのドレスを剥ぎ取り、全裸にして嘲笑、辱めの限りを尽くしたのです。その瞬間「復讐したい」と願ったシンデレラはガラスの靴を凶器に変え、邪悪な人間どもを残虐な手段で次々と血祭りにあげていく―‼
(よろず~ニュース・山本 鋼平)