2024年10月24日、家電業界に衝撃が走った。かつて「FUNAI」ブランドで世界的に知られた船井電機が、東京地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けたのだ。約461億円の負債を抱え船井電機は、長年の歴史に幕を下ろすことになった。このニュースに驚きや寂しさを感じた人も少なくないだろう。
若年層には「FUNAI」ブランドといってもピンと来ないかもしれない。それでも船井電機の足跡を振り返ると、革新的な製品開発と世界市場での成功が浮かび上がる。船井電機が世に出した名機とはどのような商品だったのだろうか。
1961年に大阪市生野区に設立された船井電機は、設立当初、オープンリールテープレコーダや8トラックカーステレオの製造をおこなっていた。とくに8トラックカーステレオは、当時世界一の販売台数を記録している。
1980年には船井電機が世界で初めて開発した「CVCビデオ」が登場する。持ち運びできるコンパクト型のビデオカセットレコーダーで、日本のテレビ局がエベレスト登頂番組で採用すると世間の注目を集めました。
ブラウン管テレビとビデオカセットレコーダーが一体となった「テレビデオ」が発売されたのは1985年である。1990年代後半から2000年代前半にかけて売り上げが大きく伸び、北米では60%以上のシェアを誇るヒット作となった。
1987年に発売した自動製パン器「らくらくパンだ」は、世界初の自動製パン器1号機であり船井電機の日本市場本格参入第1号でもあった。日本経済新聞社の年間優秀製品賞「最優秀賞」を受賞した本製品が発売されると瞬く間に家庭に広まり、手軽に焼きたてのパンを楽しめるという夢を実現した。
1999年に発売したDVDプレーヤーは、2000年代に入ると北米市場でトップシェアを獲得する。高品質かつ手頃な価格の製品ラインナップで、デジタル映像時代の到来を加速させる一翼を担った。
船井電機の技術力は、その後液晶テレビ市場でも発揮され、2002年の生産開始からわずか数年でトップシェアを獲得しFUNAIブランドの存在感を世界に示した。
これらの製品を見ると船井電機が単なる家電メーカーではなく、技術革新の先駆者であったことがわかるだろう。世界初の製品を複数生み出し海外市場でも高いシェアを獲得してきた実績は、日本の製造業の誇りといえる。それだけに船井電機の破産は、日本の製造業の変遷を象徴する出来事として記憶に残るだろう。
上記の家電製品を思い出し、懐かしさを感じた人も多いはずだ。もしかしたらまだ現役で使っている人もいるかもしれない。FUNAIブランドの製品を使用していた記憶のある人は、その時代の思い出に浸ってみてはどうだろうか。
(よろず〜ニュース特約ライター・夢書房)