辛くなったら逃げ込めるWeb空間「かくれてしまえばいいのです」が公開から半年で1000万以上のアクセスを集め話題になっている。
絵本作家ヨシタケシンスケさんの絵で構成されたサイトは、登録、ログイン不要でいつでも誰でも逃げ込める仕組み。ユーザーは匿名のアバターとなりWeb区間内を散歩、AIとの対話や、実際の相談員と繋がる相談窓口も開設されている。広い公園のような空間には「むかんけいだから何を話しても大丈夫」と微笑む、むかんけいばあちゃんの部屋や、ミニゲームも。制作したNPO法人「ライフリンク」のかくれが広報さんに話を聞いた。
―― サイトが目指すものは?
かくれが広報さん:生きるのがしんどいと感じているこどもや若者向けのWeb空間で、「死にたい」「もう生きていたくない」といった気持ちを抱えたとき、匿名・無料で24時間いつでも駆け込むことができます。「死にたい」気持ちを抱えながら安心して過ごすことを通じて、逆説的ですが、「生きていていいのかも」と思ってもらうことを目指しています。
――対象年齢は?
かくれが広報さん:年齢の使用制限は設けていませんが、こどもや若者を主な利用者と想定し、世界観やコンテンツの制作などの空間設計をしています。直近2年間で、自殺で亡くなった高校生以下のこどもは1000名以上。近年特にこどもの自殺は極めて深刻な社会問題になっています。こうした問題に対処し、誰も置き去りにされることがない社会を実現するには、従来の自殺対策とは異なるアプローチで、生きづらさを感じているこどもや若者のための新たな受け皿をつくることが急務と考えました。そこで、私たちNPO法人ライフリンクは、2024年3月に「かくれてしまえばいいのです」を創設した次第です。
――サイトのこだわりは?
かくれが広報さん:しんどい気持ちを抱えたこどもや若者にとって心地よい「居場所」になるよう、現実世界やSNS上にあふれる「きらびやかさ」を追求しない、「いいね」の数を競い合わない設計にするなど、この空間にいるだけで自身が肯定されるような世界観を実現するよう努めました。また、万が一にも自殺の誘引情報に触れたり傷つき体験をしたりすることが無いよう、設計面でも運用面でも、安心・安全な空間にするためのリスク管理を徹底しています。
なお、『かくれてしまえばいいのです』のコンセプト策定や全体の世界観・コンテンツ制作などには、絵本作家のヨシタケシンスケさんに全面的な協力をいただいています。
――どんな使い方をして欲しいですか?
かくれが広報さん:こども・若者が「死にたい」「もう生きていたくない」といった気持ちを抱えたとき、『かくれてしまえばいいのです』を通じて、その気持ちをやり過ごしたり、あるいは向き合ってもらえたらと考えています。
また、いまは『かくれてしまえばいいのです』を必要としない人でも、「生きるのがしんどい」と感じたときにふと思い出してもらえるように、そんなお守りのような存在になれたらと思います。
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SNSでは「こどもに教えておこう」「同じ気持ちのひとが何人もかくれにきていて安心する」「サイトの中を散歩していたら寝ている犬が寝言を言ってて癒された」などの声が寄せられている。しんどくなった時の選択肢のひとつとして周知されたい。
(よろず~ニュース特約・ゆきほ)