大相撲の新十両で、ウクライナ出身の安青錦(あおにしき=20、安治川)が5日、ウクライナから戦禍を逃れて来日した際、相撲の稽古場としていた関西大相撲部から化粧まわしを贈られた。
関西大のスクールカラー・紫紺に、校章をしつらえた化粧まわし。十両昇進を祝って、約200万円をかけて同部が贈呈した。大阪府吹田市の同大千里山キャンパス内の相撲道場で、安治川親方(元関脇・安美錦)とともに贈呈式に臨んだ安青錦は「素敵な化粧まわしを作っていただいて、本当にありがとうございます。自分が日本に来た時は、右も左もわからなくて、関西大学でだいぶお世話になって、本当に関西大学の人たちにも感謝の気持ちでいっぱいです」と頭を下げた。
安青錦は2019年、大阪府堺市で開かれた相撲の世界ジュニア選手権にウクライナ代表として来日中、当時同大相撲部の主将だった山中新大さん(25)と知り合った。
ウクライナに帰国後もSNSを通じて交流していたが、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻で日本への避難を希望。関取になりたいとの夢を、山中さんに打ち明けた。
戦禍を逃れ、同年4月に来日。山中さんは神戸市の自宅に安青錦を受け入れ、共同生活を始めた。相撲部の土俵を、稽古場として使うことも大学に許可してもらった。
現在は同大職員で、相撲部のコーチを務める山中さんは「2022年の4月12日に、彼は一人でやってきた。祖国のウクライナが大変な状況の中、家族と離れて、さびしい思いをした18歳の少年が、ひとり来たあの姿っていうのは、一生忘れることはない」と振り返った。
初土俵からわずか7場所での、安青錦の十両昇進を喜びながらも「本当の勝負はこれから。ここまで来たっていうのは、本当に彼の努力が一番だとは思うんですけれども、やっぱりたくさんの方々に彼は支えられてきたので、どれだけ強くなってもおごらず、初心を忘れない力士になってもらいたい」と言葉をかけた。
安青錦は、関大相撲部の土俵を「日本のふるさとみたいな感じ。一番お世話になった場所で、1年に1回は必ず来る。関大相撲部からも、誰か安治川部屋に入門すればうれしい」と懐かしんだ。紺色が好きで、シンプルなデザインの化粧まわしを早速、気に入った様子だった。
祖国への思いを問われ「僕はウクライナの人なので」と、思いを背負い土俵に立つのは当然といわんばかり。安治川親方は「本人も、ウクライナから日本に避難してきて、ここでお世話になったということが本当に心の支えで、頑張るひとつの要素だと思う。ここでの生活を胸に、これから横綱を目指して頑張っていく」と胸中を代弁した。
(よろず~ニュース・杉田 康人)