女流浪曲師・瑞姫(たまき)が河内音頭と浪曲という伝統芸能の中でもジャンルの異なる2種類のCDアルバムをこのほど同日リリースした。
瑞姫は東京都出身で、大学卒業後、アパレルメーカー勤務を経て、1993年に浪曲師二代目東家浦太郎に入門。「太田ももこ」の芸名で修業を重ね、97年以降、東京芸術劇場、浅草木馬亭、横浜にぎわい座、国立演芸場などをはじめ全国で活動。2011年に名を瑞姫に改めた。19年から河内音頭の第一人者である山中一平に指導を受け、本場・大阪の盆踊りや東京・錦糸町の「河内音頭大盆踊り」などに出演。20年にファーストアルバム「河内音頭 櫻川と黒鷲~幡随院長兵衛傳より」を発売し、浪曲アルバムでは「ホームグラウンド」(22年)と「浪曲鰍沢」(23年)をリリースした。
今回は河内音頭のアルバムが「TAMAKI」と題されて「河内十人斬り」と「櫻川と黒鷲」を収録。ドラムやベースのゲスト奏者が加わったことでリズムセクションも強化され、グルーヴ感が増した。浪曲アルバムには大師匠(師匠の師匠)に当たる東家楽浦が遺した40分40秒の大作「浪曲狸」を収めた。東京・墨田区に伝わる奇談「本所七不思議」の世界を華麗な節づかいで披露している。
では、なぜ2枚同日発売だったのか。
プロデューサー・いちばけい氏は「河内音頭が瑞姫の浪曲を成長させ、そして浪曲が河内音頭にアイデアを与えるという相乗効果」を指摘。その「相乗効果」が今回の発売形態によって実証された。さらに、同氏は「この数年で生まれた新しいタイプの盆踊りに若者たちが集まり、民謡をベースとした新しい形の日本のバンドが海外でも注目されている」といった背景を挙げ、「新しい現代の河内音頭を聴いてもらいたい。一人の浪曲師が二つの異なるジャンルに同時に挑戦していることと同時に、今、それぞれのジャンルに取り組んでいる人たちにも何かメッセージになれば」とアピールした。
瑞姫は当サイトの取材に対して「『浪曲狸』は大師匠の書いたとても古い台本をベースに、この数年指導を受けてきた河内音頭の山中一平から習った音頭の技を習得することでできた節を使い、がらっと全く違う浪曲になりました。河内音頭への挑戦から日も浅いですが、現在の持てる力を一生懸命に出した河内音頭の作品も同時発売になります。ジャンルは違いますが、一緒に聴いてほしいと思います」と意欲的だ。
年末にかけて東西で瑞姫の公演が行われる。大阪では11月22日に堺筋本町駅直結の「SEMBA2プレ~ス」、同23日に西成区萩之茶屋の「釜晴れ」、東京では12月21日に浅草木馬亭で開催される。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)