京都のブランドガニ「間人(たいざ)ガニ」が11月上旬、漁解禁を迎えるとともに新たな一歩を踏み出した。今年4月に発覚した産地偽装問題を受け、再発防止策を導入。ブランドの信用回復を目指す。
極寒の日本海で育つ「京のズワイガニ」。府内でズワイガニ漁を営む漁船はたった10隻(24年3月時点)と漁獲量が極めて少なく希少価値が高い。とりわけ間人漁港(京丹後市内)で水揚げされる「間人ガニ」は“幻のカニ”とも称される高級ブランドだ。
京都で水揚げされたズワイガニのハサミには、ブランドを示す緑色のタグを装着してきた。表面に「京都」の文字。裏面には「舞鶴」「たいざ」「網野」など水揚げされた市場名に加えて、漁獲した船名も記される。
今シーズンはそれに加えて、新たに白いタグが取り付けられるようになった。表にはQRコード、裏面にはシリアルナンバーが印字されているもので、京都府水産課・川原崎尚志課長は「今年から『漁獲の見える化』ということで、QRコード+シリアルナンバーが入った白いタグを付与し『誰が・いつ・どこで漁獲したのか』が分かる取り組みをしております」と説明する。QRコードから「追跡番号検索ページ」を開き、シリアルナンバーを入力することで、そのカニの漁獲情報が詳しく確認できる仕組みだ。
導入のきっかけは今年4月。京丹後市のある水産物販売業者が他県産のズワイガニに「間人ガニ」のブランドを証明するタグを取り付けていた、いわゆる“産地偽装”が発覚。高級ブランド「間人ガニ」に激震が走った。
京都府漁業協同組合・濱中貴志組織部長は「漁業者本人にほとんど任せる仕組みになっていました」と同タグの管理体制の問題点を明かす。
同タグは外国産ズワイガニとの差別化をはかる目的で1990年代末に導入。濱中組織部長によれば、タグに「漁船名」まで印字したのは「京都が初めて」だったという。漁船名まで入れることは、漁業者に対する「ブランド品質に覚悟と責任を」という表れだった。一方で、業者から発注したタグの管理は漁業者本人に任せていたことが問題の根幹だった。
「当初から何の問題もなくきていたこと。『自分たちが守ってきたブランドなのだから、そういうこと(産地偽装)はしないだろう』という性善説、そこが問題だった」(濱中組織部長)
これまで漁業者に全て任せてきたタグの管理を一新し、行政の立ち合いのもと渡されるように。漁協と漁業者の連携で「誰に」「いくつ」渡したかはもちろん、漁期は日ごとの使用個数も漁協がチェック。使わなかった個数との照合で、タグ管理の強化を進めていく。
今シーズンの初競りは9日に行われた。ミズガニ(未成熟のズワイガニ)の全面漁獲自粛など、地道な資源保護の取り組みもあり、例年以上の豊漁が予想されているという。信頼回復への1年目はまだ始まったばかりだ。
(よろず~ニュース・藤丸 紘生)