近代的な町並みで知られるシンガポールの郊外に、“最期の秘境”がある。市街地から北東からフェリーで10分ほどの場所にある「ウビン島」だ。静かな離島で生物多様性に富み、田舎の暮らしを垣間見ることができる貴重な場所だ。
かつては約4000人が暮らしていたが、1970年に主要な採石場が閉鎖され、多くが近代化の進む都市部に移住した。島に残っている30人のうちの1人、チュー・ヨク・チューンさん(79)は語った。
「島の人口は、ますます減っていくと思う。正直、高齢者は次々と亡くなっている。若者たちの生活には向かない環境だ。島を守るのは政府の責任だ 高齢化が進み、亡くなる人もいる。若者たちは戻ってこない。戻ってくるはずがない」
郵便物は遅延し、食料・日用品の買い物は都市部に行かなくてはならない。フェリーでの移動にも不便が伴う。島で自転車店を経営しているリム・サイ・シーさん(69)は30年前、採石場の閉鎖と子どもの通学を機に一度、本土に移住したという。
「島に残る人はほとんどいない。交通が不便すぎるから。子どもが学校に行く時、フェリーに乗れない可能性もある。その場合は、乗船料を全額負担しなくてはならない」
ウビン島は保養地として知られ、湖畔でのハイキングや車の通らない道でのサイクリング、シーフード料理などが楽しめる。政府は2001年、開発の必要に迫られない限り、島が変わることはないと表明している。ただ現在は、本土から島への移住は許されておらず、人口は減少の一途だ。最年少の島民は50代だという。
(ロイター/よろず~ニュース編集部)