一般的に食中毒と言われているものは、専門用語では感染性胃腸炎と言います。我々がもっとも多く遭遇するのは、細菌性とウィルス性です。夏場に多いのが、細菌性であるカンピロバクター、腸炎ビブリオなど。冬場に多いのが、ノロウィルス、ロタウィルスです。
感染性胃腸炎の症状としては、嘔吐、下痢、腹痛が一般的ですが、症状がひどければ下血、発熱などの症状を伴います。特効薬というものはなく、一般的には対症療法を行います。細菌性の場合は抗生剤を投与することもありますが、ウィルス性の場合には、おおむね対症療法となります。
症状は軽微で、2,3日の療養で改善することが多いのですが、下痢、嘔吐を繰り返す場合には速やかに病院受診することをお勧めします。特に乳幼児、高齢者、免疫不全の方は要注意です。脱水や感染の重症化、溶血性尿毒素症候群などを引き起こすことがあるからです。
自己判断で、下痢止めを飲んで様子を見ることは危険な状況に陥るケースもあるので絶対に避けてください。身体は免疫という外敵から守る機能を備えています。下痢、嘔吐もその一種です。下痢を止めることによって、体内に入った細菌、ウィルスが大量に増殖して症状の遷延、重症化するケースがあります。以前に問題になったO157という大腸菌による胃腸炎で死亡に至った患者さんの多くが下痢止めを飲んでいたことが明らかになっています。
投薬された薬を飲みながら、食事療法をすることも大切です。薬を飲んでいるからといって、通常通りの食事をしていたのでは治癒しません。
まずは、おうどん、お粥さんなどお腹に優しいものを少量ずつ摂取しましょう。それでも症状が持続するなら、飲料ゼリーを併用することがお勧めです。経口補水液は、一気に飲むのではなく少量ずつ摂取することをお勧めします。吐物を処理する際にはマスクを着用し、手洗いは丁寧に行い、洗濯は健常人とは別に洗濯することをお勧めします。汚物、吐物からも感染するので注意が必要です。
◆谷光利昭 兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。