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野村HDの「サステナブルファイナンス」戦略、世界12位からの浮上なるか?

財界オンライン 2021年11月5日 18時0分

「サステナビリティの取り組みによって資金調達ができなくなるということが現実になってくる」──こう話すのは野村ホールディングスグループCEOの奥田健太郎氏。2050年のカーボンニュートラルに向けて、資金の動きが大きく変わり始めている。企業はESG、SDGsに向けた投資を進めるが、逆に言えば関連した投資でなければ資金が集めづらくなっている。この大きな変化の中で野村が果たす役割とは何か。

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世界でサステナブル債の発行が加速する中…
「サステナビリティの取り組みによって資金調達の条件が変わる、場合によっては調達できないということが現実になってくる。ESGが社会のサバイバルと言われるが、企業にとっても同じ。我々はこの変化をチャンスと捉え、投資家、発行体企業の取り組みを支援するとともに、収益を生み出すビジネスモデルを作り上げていく」と強調するのは、野村ホールディングスグループCEO(最高経営責任者)の奥田健太郎氏。

 日本は菅義偉前首相が、2050年のカーボンニュートラルを宣言し、脱炭素に大きくカジを切っている。自動車や鉄鋼などが水素関連技術を開発するなど技術開発も進むが、企業の行動を左右する金融も脱炭素に向けた動きを加速している。ESG(環境・社会・ガバナンス)、SDGs(持続可能な開発目標)は、企業活動に大きな影響を与えるものとなった。

 世界で2020年に環境関連事業に資金を使うことを目的とした債券である「グリーンボンド」(環境債)の発行は2901億ドルとなったが、21年は9月時点までで3237億ドルと、すでに前年実績を超えている。

 また日本でも、20年のグリーンボンド発行総額が初めて1兆円を超え、1兆170億円となったが、21年は10月時点で1兆2000億円を超えて、こちらもすでに過去最高を更新。

 さらに、環境だけでなく広く社会課題の解決を目指す事業に資金を使う「サステナビリティボンド」の発行も活発化。日本では20年に6005億円、21年は9月時点までで8393億円に達している。

 21年10月にはNTTが、グループのNTTファイナンスを発行体として、国内事業会社としては最大規模と見られる約3000億円のグリーンボンドの発行を決めた。野村も主幹事の1社として参画している。

 今や、サステナブルを巡る資金は世界的に「争奪戦」に入っていると言っていい状況。さらに、企業側の危機感も強い。「今はESG、SDGsに関する投資でなければ、資金調達ができなくなっている。このことを知らない企業も多いのではないか」と漏らすのは、ある上場ベンチャー企業の社長。

 こうした状況を受けて近年、野村HDもグリーンボンド、サステナビリティボンドへの取り組みを強化している。

 21年3月期に野村グループが主幹事を務めたサステナブルファイナンスの資金調達総額は800億ドル(8兆4803億円)で、それを主幹事で等分すると、野村分の実績値は234億ドル(2兆4767億円)。

 そして今年、22年3月期から26年3月期までの5年間のサステナブルファイナンスの目標額を1250億ドル(約14兆3100億円)とすることを決めている。

環境関連に強い投資銀行を買収
 野村がサステナブルへの取り組みを強めた象徴的な出来事がある。それが19年12月に発表した、ブティック型投資銀行の米グリーンテック・キャピタル・アドバイザーズの買収。

 グリーンテック社は09年に、UBSで投資銀行責任者を務めていたジェフ・マクダーモット氏が創業。短期間で自動車などのサステナブル関連技術、再生可能エネルギーなどインフラへの投資でリーディングファームと呼ばれる存在になった。

 グリーンテック社は野村グループ入り後に「ノムラ・グリーンテック」に社名変更。さらに野村は、21年にマクダーモット氏をグローバル投資銀行事業の共同責任者に任命した。この人事は世界の流れの中で、野村がサステナブル関連事業を成長分野と捉えている表れと言える。

 今年4月にはサステナビリティ推進担当役員を新設し、コンテンツ・カンパニー長を務める執行役員の鳥海智絵氏(野村証券専務)が就いた。

「ブラウンからグリーンへと直接のお金の流れをつくること、それに多くの人を巻き込む仕組みをつくること、広くマーケットや規制のデザインに関与することで、当社なりの貢献ができる」と鳥海氏。

 今後、野村は債券の発行を始めとする資金調達支援、インフラストラクチャーファイナンスの実行、サステナブル関連M&A(企業の合併・買収)の助言などに注力し、脱炭素の動きに絡んでいく。

 ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次氏は「今、サステナブル関連はバブル的様相を呈している。そのためサステナブル関連に投資した時にリターンがあったのか、なかったのかを企業、金融機関がチェックし合う仕組みが必要。また、世界ではサステナブルを巡るルール形成が進んでいる。政府はそこに入り込み、きちんと日本に資金が回ってくるための活動をする必要がある」と指摘する。

 2050年のカーボンニュートラル実現には、今後30年間に世界で約122兆ドルの投融資が必要だという試算もあり、今後サステナブル関連の資金の動きはさらに活発化することが予想される。

 20年、野村HDはサステナブル・ボンド・リーグテーブルで、日系金融機関では首位だったものの、世界では12位というのが現実。これをいかに高めるかが問われる。

 企業が脱炭素を進めるには、その投資において資金調達が欠かせない。銀行の役割も大きいが、債券発行や関連事業への投資やM&Aなどで野村の果たすべき役割は重い。

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