岸田首相の政策は「スモールバイデン」?
前回指摘した通り、私は岸田文雄首相には自民党総裁選に出馬した時から勢いがあると見ていました。勢いがある時には運も付いてきます。
【関連記事】【株価はどう動く?】新政権の政策次第で日本は年末高に
今回の総選挙は史上最も短期間で投開票が行われましたから、与野党問わず準備する時間がありませんでした。ですから地力のある人でないと勝ち残れず、誰が本当に強いのかが明らかになった選挙だったと言えます。
また前回、重鎮と言われる人達の落選も予想しましたが、その通りになりました。地元にあまり帰っていなかった人も多く、短期決戦ではその弱みが出たのだと思います。
自民党では小選挙区で前幹事長の甘利明氏が敗北し比例復活、自治相・党税調会長などを歴任した野田毅氏、元幹事長の石原伸晃氏は落選しました。また、与党だけでなく立憲民主党では小沢一郎氏が小選挙区で敗北し比例復活、副代表の辻元清美氏が落選しました。
この選挙を受けて、今後の日本はどうなるか。まず政治では世代交代がはっきりしました。これは日本にとってプラスです。
また、前述のように岸田首相には勢いと運があります。総選挙に勝ちましたから、来年の参議院議員選挙にも勝つ可能性が高くなっています。
そして、このままいけば岸田政権は長期化することが予想されます。なぜなら「岸田首相は米バイデン大統領になる」かもしれないのです。
どういうことかというと、バイデン大統領は2020年11月3日の選挙前には不人気で、市場からも「当選したら株価が下がる」などと言われました。それがフタを開けてみたら株価は下がるどころか大幅高に。
コロナ不況で米国の中間層以下の人達が困っており、「生活困窮者を助けなければいけない」というのが米民主党の基本的な政策ですから、救済のためにはいくらでもお金を出すという形で、日本円で約600兆円という規模の経済対策が打ち出されました。これは株高になりますし、米国発の資産バブル相場が今も続いています。
もう1つ、国際情勢を見ると、米国と中国が対立する新しい冷戦構造になっています。米国では民主党、共和党に共通して「中国が覇権を握ったら、民主主義が消滅する」という強い危機感があります。
この「国民をコロナから救う」、「中国に覇権を渡さない」という2つのテーマで、米国は結束しつつあるのです。
日本も同じような構図になるでしょう。岸田首相は米国ほどではありませんが、数十兆円規模の経済対策を指示しています。そして日本は米国ほどの不況ではありませんし、コロナの感染者数も比べ物にならないくらい少ない。
その日本が、例えば50兆円、100兆円規模の経済対策を打てば米国同様にバブルになる可能性が高いわけです。つまり岸田政権は「スモールバイデン政策」を実施するということです。
日本では金融緩和も続きます。コロナ不況の状況から見て、そう簡単に出口戦略の議論はできないでしょう。また、米国ではテーパリング(金融緩和縮小)を始める見通しですが、それでも金融緩和をやめるわけではありません。当面利上げもしないと、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は明言しています。
岸田首相は「COP26」から帰国するやいなや、経済対策を打ち出すでしょう。選挙前、多くの金融機関のアナリストなどは日経平均の年内の高値の予想は高くて3万1000円、安い人で2万9000円というものもありました。年末にかけて、もし岸田首相が数十兆円規模の経済対策を打てば、多くのアナリストが予想する3万1000円近辺を突破し、年末高になると見ています。
日本は対中国、あるいは対ロシアといった専制国家と対峙する最前線に位置しています。いわば米ソ冷戦時代と同じ立場で、日本は政治、経済、外交面で「漁夫の利」を得られる可能性が高まっているのです。
もし予想通り年末高なら、22年も株高トレンドが続きそうです。その株高を牽引するセクターは言うまでもなくデジタル関連、環境・グリーン関連です。
そして、前述のように岸田政権が来年の参院選を制するなら、それを受けて日経平均は来年の年央にも1989年末の3万8915円を目指す展開になると予想します。
ただし、仮に年末高になった場合、来年の3月くらいまでに一度、株価の「しゃがみ込み」、調整局面があるかもしれません。株価はしゃがみ込まないと、その次の跳躍がないからです。日米ともに調整局面があった場合には、そこが絶好の買い場になります。
懸念材料は今回、甘利明氏が自民党幹事長を辞任したことです。甘利氏は日本のDX革命の牽引者でしたが、それを後任の茂木敏充氏が引き継ぐことができるのかは不透明です。これは岸田政権のウィークポイントとなる可能性があります。
また、本誌発売時にはすでに発表されているものと思われますが、外務大臣に経済に強く、バイリンガルの林芳正氏が就いているようであれば、日本のプレゼンスを高めるという意味で非常に期待が持てます(林氏は外務大臣に就任)。
もう一つの懸念材料は、岸田首相の経済政策があいまいだということです。現時点では「成長と分配」など抽象的なキーワードにとどまっています。ですから、岸田首相が考える新しい資本主義とは何なのか、具体的に打ち出せなければ、長期政権を築くことは難しいでしょう。
岸田首相は、前述の林芳正氏の他、幹事長を辞任した甘利氏、党内きっての政策通で、今回福岡10区で落選した山本幸三氏などに役職を与えて、ブレーンとして起用するといった采配ができるかどうかが問われます。
岸田首相がバイデン大統領になるには、早期に数十兆円以上の景気対策を打ち出して、国民にわかりやすく説明することと、党内に経済政策ブレーンを持つことができるかにかかっています。私は「岸田ビジョン」を掲げて、新政権は前進するものと期待しています。
前回指摘した通り、私は岸田文雄首相には自民党総裁選に出馬した時から勢いがあると見ていました。勢いがある時には運も付いてきます。
【関連記事】【株価はどう動く?】新政権の政策次第で日本は年末高に
今回の総選挙は史上最も短期間で投開票が行われましたから、与野党問わず準備する時間がありませんでした。ですから地力のある人でないと勝ち残れず、誰が本当に強いのかが明らかになった選挙だったと言えます。
また前回、重鎮と言われる人達の落選も予想しましたが、その通りになりました。地元にあまり帰っていなかった人も多く、短期決戦ではその弱みが出たのだと思います。
自民党では小選挙区で前幹事長の甘利明氏が敗北し比例復活、自治相・党税調会長などを歴任した野田毅氏、元幹事長の石原伸晃氏は落選しました。また、与党だけでなく立憲民主党では小沢一郎氏が小選挙区で敗北し比例復活、副代表の辻元清美氏が落選しました。
この選挙を受けて、今後の日本はどうなるか。まず政治では世代交代がはっきりしました。これは日本にとってプラスです。
また、前述のように岸田首相には勢いと運があります。総選挙に勝ちましたから、来年の参議院議員選挙にも勝つ可能性が高くなっています。
そして、このままいけば岸田政権は長期化することが予想されます。なぜなら「岸田首相は米バイデン大統領になる」かもしれないのです。
どういうことかというと、バイデン大統領は2020年11月3日の選挙前には不人気で、市場からも「当選したら株価が下がる」などと言われました。それがフタを開けてみたら株価は下がるどころか大幅高に。
コロナ不況で米国の中間層以下の人達が困っており、「生活困窮者を助けなければいけない」というのが米民主党の基本的な政策ですから、救済のためにはいくらでもお金を出すという形で、日本円で約600兆円という規模の経済対策が打ち出されました。これは株高になりますし、米国発の資産バブル相場が今も続いています。
もう1つ、国際情勢を見ると、米国と中国が対立する新しい冷戦構造になっています。米国では民主党、共和党に共通して「中国が覇権を握ったら、民主主義が消滅する」という強い危機感があります。
この「国民をコロナから救う」、「中国に覇権を渡さない」という2つのテーマで、米国は結束しつつあるのです。
日本も同じような構図になるでしょう。岸田首相は米国ほどではありませんが、数十兆円規模の経済対策を指示しています。そして日本は米国ほどの不況ではありませんし、コロナの感染者数も比べ物にならないくらい少ない。
その日本が、例えば50兆円、100兆円規模の経済対策を打てば米国同様にバブルになる可能性が高いわけです。つまり岸田政権は「スモールバイデン政策」を実施するということです。
日本では金融緩和も続きます。コロナ不況の状況から見て、そう簡単に出口戦略の議論はできないでしょう。また、米国ではテーパリング(金融緩和縮小)を始める見通しですが、それでも金融緩和をやめるわけではありません。当面利上げもしないと、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は明言しています。
岸田首相は「COP26」から帰国するやいなや、経済対策を打ち出すでしょう。選挙前、多くの金融機関のアナリストなどは日経平均の年内の高値の予想は高くて3万1000円、安い人で2万9000円というものもありました。年末にかけて、もし岸田首相が数十兆円規模の経済対策を打てば、多くのアナリストが予想する3万1000円近辺を突破し、年末高になると見ています。
日本は対中国、あるいは対ロシアといった専制国家と対峙する最前線に位置しています。いわば米ソ冷戦時代と同じ立場で、日本は政治、経済、外交面で「漁夫の利」を得られる可能性が高まっているのです。
もし予想通り年末高なら、22年も株高トレンドが続きそうです。その株高を牽引するセクターは言うまでもなくデジタル関連、環境・グリーン関連です。
そして、前述のように岸田政権が来年の参院選を制するなら、それを受けて日経平均は来年の年央にも1989年末の3万8915円を目指す展開になると予想します。
ただし、仮に年末高になった場合、来年の3月くらいまでに一度、株価の「しゃがみ込み」、調整局面があるかもしれません。株価はしゃがみ込まないと、その次の跳躍がないからです。日米ともに調整局面があった場合には、そこが絶好の買い場になります。
懸念材料は今回、甘利明氏が自民党幹事長を辞任したことです。甘利氏は日本のDX革命の牽引者でしたが、それを後任の茂木敏充氏が引き継ぐことができるのかは不透明です。これは岸田政権のウィークポイントとなる可能性があります。
また、本誌発売時にはすでに発表されているものと思われますが、外務大臣に経済に強く、バイリンガルの林芳正氏が就いているようであれば、日本のプレゼンスを高めるという意味で非常に期待が持てます(林氏は外務大臣に就任)。
もう一つの懸念材料は、岸田首相の経済政策があいまいだということです。現時点では「成長と分配」など抽象的なキーワードにとどまっています。ですから、岸田首相が考える新しい資本主義とは何なのか、具体的に打ち出せなければ、長期政権を築くことは難しいでしょう。
岸田首相は、前述の林芳正氏の他、幹事長を辞任した甘利氏、党内きっての政策通で、今回福岡10区で落選した山本幸三氏などに役職を与えて、ブレーンとして起用するといった采配ができるかどうかが問われます。
岸田首相がバイデン大統領になるには、早期に数十兆円以上の景気対策を打ち出して、国民にわかりやすく説明することと、党内に経済政策ブレーンを持つことができるかにかかっています。私は「岸田ビジョン」を掲げて、新政権は前進するものと期待しています。