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三井不動産の「八重洲再開発」、日本橋・京橋、そして銀座をつなぐ

財界オンライン 2021年11月22日 18時0分

東京駅周辺の「エアポケット」のような存在だった八重洲。それが日本橋・京橋・銀座と東京駅をつなげる「核」になろうとしている─。元々町人の街で今も小規模店舗が立ち並ぶ八重洲。地権者が多く、再開発が難しい場所と見られてきたが、現在駅前で3カ所の大規模再開発が進む。そのうち2カ所に参画するのが三井不動産。複合開発に小学校やインターナショナルスクールを誘致するなど、これまでの都心になかった街をつくり、他の地域との差別化を図る。

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「大丸有」一本足からの脱却
「現在再開発が進む3つのエリアで八重洲のポテンシャルを最大限高めていく。これまで東京駅前というと丸の内側に軸足が偏っていたが、それを八重洲側にも広げていきたい」と話すのは三井不動産ビルディング事業三部長の藤井拓也氏。

 現在、東京駅八重洲口前で3カ所の大規模再開発が進む。北側から、東京建物が主導する「東京駅前八重洲一丁目東B地区」、三井不動産が主導し、2022年8月末竣工を予定する「東京ミッドタウン八重洲」、そして21年10月26日に東京都から再開発組合の設立認可を受けた「八重洲二丁目中地区」である。

 八重洲二丁目中地区再開発には三井不動産の他、鹿島、住友不動産、都市再生機構、阪急阪神不動産、ヒューリックが参画。

 藤井氏が言うように、これまで東京駅周辺は丸の内、大手町、有楽町地区、いわゆる「大丸有」に焦点が当たりがちだった。それを三井不動産は今回の再開発で八重洲の中心業務地区(CBD=central business district)としての価値を高め、大丸有の「一本足打法」から脱却することを目指している。

 八重洲側を開発していくと、その後背地には日本橋、京橋、銀座といった都内でも特徴のある街が控える。「八重洲再開発は、東京駅とこれらの地域をつながる核となる場所。開発による付加価値は相当大きいのではないかと見ている」(藤井氏)

 元々、八重洲は町人の街で、今でも小規模なオフィスビルや様々な商店が立ち並ぶ。そのため区画が小さく、権利者が多い。開発も困難が伴うと見られてきたが「開発に携わる中で、日々八重洲の持つポテンシャルを実感している」と藤井氏。

 八重洲再開発は東京駅の新幹線口の目の前で行われている。今回は前述の3エリアで一体運用を行う地下バスターミナルを整備。これまで以上に鉄道、地下鉄、バスなど交通の結節点、「日本の玄関口」としての機能を高めることを目指す。

 再開発においては、単に街を新しくするだけでなく、他と違う特徴付けが求められる。例えば「東京ミッドタウン八重洲」にはオフィスや商業、ラグジュアリーホテルに加えて、中央区立城東小学校、認定こども園が入る。さらに「八重洲二丁目中地区」にはインターナショナルスクール、劇場、サービスアパートメントが入る予定。いずれも大人から子供が多様に集う場所となることを意識している。

「単なるオフィス街ではなし得ない多様な賑わいを創出できる。例えば小さな子どもが日常的に学校に通う空間となるが、こうした複合再開発ではなかったものではないか。都心の中になかった風景となるが、このギャップが付加価値になる」

「東京ミッドタウン八重洲」は三井不動産にとって六本木、日比谷に続く3施設目の東京ミッドタウンとなる。三井不動産はこのブランドを「総力を結集して開発する都心部におけるミクストユース型(複合用途型)街づくり」と定義している。

 ミッドタウン八重洲は地上45階、約240メートルという超高層の「A-1街区」と地上7階、約41メートルの「A-2街区」で構成されている。

 今回、再開発が始まった「八重洲二丁目中地区」にも地上43階、約226メートルの超高層ビルが建つが、この特徴付けはどうしていくのか?

「再開発組合が認可されたばかりで、現時点ではまだ棲み分けを考える時期ではないのではないか。ただ、都市機能としては東京建物さんの再開発、ミッドタウン八重洲にはないものを持ってきている。それ以外のコンセプトは今後検討していく」

 その意味で、街区が竣工した後、八重洲再開発の3地区間での「エリアマネジメント」の巧拙が問われることになる。

 前述のように、八重洲は小規模商店などが立ち並び、それらの地権者が街に求めるものも様々。再開発においては、この地権者の合意形成が最も重要で、かつ苦労の多い仕事になる。藤井氏も「1つの方向にまとめるのには、相当な労力と時間がかかる」と話す。

「ポストコロナ」でオフィスはどうなる?
 ただ、コロナ禍を経てオフィスに対する見方も変化してきている。三鬼商事の調べによると、21年9月時点で都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の空室率は6.43%、平均賃料は14カ月連続で下落した。

 その意味で「ポストコロナ」のオフィスづくりはどうあるべきかが問われている。藤井氏も「単なる執務空間、消費の場はシェアを落とす可能性がある」と危機感を示す。

 今後、23年から25年の間に都心でオフィスの大量供給が始まるが、その時期に竣工するオフィスの内定状況が思わしくないという情報も伝わる。

 八重洲はどうか。東京駅前という利便性に加え、例えばミッドタウン八重洲では首都圏の大規模オフィス初となる「完全タッチレスオフィス」を導入。エントランスから執務室まで、どこにも手を触れることなく入室することを可能にする。

 また、三井不動産が展開する法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」も開設するなど、ポストコロナを意識した模索が始まっている。

 東京建物の再開発は25年、八重洲二丁目中地区は28年の竣工を予定しているが、それまでのオフィス市況はどうなっているか。「ある程度紆余曲折はあるだろうし、賃料の浮き沈みもあり得るが、長期トレンドでは一定水準で推移するのではないか」

 2020年代半ばに向けて他のエリアでも大型再開発が進む。エリア間のテナント争奪戦を勝ち抜くための付加価値づくり、知恵比べが続く。

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