2021年11月末から突然、変異株のオミクロン株が世界各国の景気に不透明感を与えている。現時点では、変異株の正体がはっきりとはわからない。そのため、景気見通しや株価には過剰なほどの警戒感が加わることになったと思われる。
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10・11月は国内コロナ感染が収束してきて、2022年に入ると、消費活動を中心として経済正常化が一気に進むかと期待させた。冬が本格化すれば、第6波の感染の波が到来する可能性はあったが、ワクチン接種が進んだことで、最近まで経済再開への悪影響は限定されると予想されていた。そこへのオミクロン株の出現である。
今のところ、オミクロン株の悪影響は、1~3月に経済対策に盛り込まれたGoToトラベルの効果が十分には表れず、観光需要を停滞させるとみられる。宿泊・飲食・娯楽・交通といったセクターは、従来から需要が悪化してきて、10~12月にどうにか感染減を受けて回復し始めたところだった。最も経済の中で打撃が深いセクターでの需要回復が遅れることが怖い。
もうひとつの悪影響は、オミクロン株の広がりが日本国内では限定されたとしても、新興国などで被害が大きくなる可能性だ。その場合、日本からの輸出減とサプライチェーンの混乱が心配される。21年は、自動車産業で半導体や他の部品の調達ができずに、一部の工場が閉鎖される事態となった。東南アジアでのオミクロン株の感染拡大が、さらにサプライチェーンの混乱を招かなければよいと思う。
国内に対する悪影響は、予想できない部分も大きいが、将来への不安を増幅させているところがポイントだと考えられる。例えば、春闘交渉が、22年1月から開始されるとき、この不安感は経営者の賃上げに臨む姿勢を消極化させないだろうか。岸田政権は、分配戦略を掲げて、賃上げ率を3%超まで引き上げようとしている。税制優遇措置を通じて、賃上げを積極化させようとする企業により多くの法人税の還元が行われる仕組みにするようだ。
しかし、先行きに強い不透明感があるときは、企業経営者は賃上げを容認しなくなる。いくら政治の意向が強く、税制を通じて賃上げの負担を軽くしたとしても、収益が大きく減っては元も子もないと考えるだろう。
企業の設備投資や雇用拡大についても先行きが不透明である。消費性向をコロナ前とコロナ後で比べると、5%ほど下がっている。これは、所得(税・社会保険料を除いた可処分所得)の実力よりも、消費水準が▲5%ほど切り下がっていることを意味する。このまま、オミクロン株への強い警戒感があると、消費抑制は解除されない。
巷間、オミクロン株の感染力は強いが、重症化リスクは高くないとされる。ならば、日本国内で感染拡大しても、深刻化するとは言い切れない。評価が非常に難しいところだ。
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今のところ、オミクロン株の悪影響は、1~3月に経済対策に盛り込まれたGoToトラベルの効果が十分には表れず、観光需要を停滞させるとみられる。宿泊・飲食・娯楽・交通といったセクターは、従来から需要が悪化してきて、10~12月にどうにか感染減を受けて回復し始めたところだった。最も経済の中で打撃が深いセクターでの需要回復が遅れることが怖い。
もうひとつの悪影響は、オミクロン株の広がりが日本国内では限定されたとしても、新興国などで被害が大きくなる可能性だ。その場合、日本からの輸出減とサプライチェーンの混乱が心配される。21年は、自動車産業で半導体や他の部品の調達ができずに、一部の工場が閉鎖される事態となった。東南アジアでのオミクロン株の感染拡大が、さらにサプライチェーンの混乱を招かなければよいと思う。
国内に対する悪影響は、予想できない部分も大きいが、将来への不安を増幅させているところがポイントだと考えられる。例えば、春闘交渉が、22年1月から開始されるとき、この不安感は経営者の賃上げに臨む姿勢を消極化させないだろうか。岸田政権は、分配戦略を掲げて、賃上げ率を3%超まで引き上げようとしている。税制優遇措置を通じて、賃上げを積極化させようとする企業により多くの法人税の還元が行われる仕組みにするようだ。
しかし、先行きに強い不透明感があるときは、企業経営者は賃上げを容認しなくなる。いくら政治の意向が強く、税制を通じて賃上げの負担を軽くしたとしても、収益が大きく減っては元も子もないと考えるだろう。
企業の設備投資や雇用拡大についても先行きが不透明である。消費性向をコロナ前とコロナ後で比べると、5%ほど下がっている。これは、所得(税・社会保険料を除いた可処分所得)の実力よりも、消費水準が▲5%ほど切り下がっていることを意味する。このまま、オミクロン株への強い警戒感があると、消費抑制は解除されない。
巷間、オミクロン株の感染力は強いが、重症化リスクは高くないとされる。ならば、日本国内で感染拡大しても、深刻化するとは言い切れない。評価が非常に難しいところだ。