危機の中に新しい芽が
危機の中から、新しい芽が生まれる─。旧来の社会秩序、産業秩序が機能しにくくなった時、秩序の変革が生まれる。
【あわせて読みたい】『虎穴に入らずんば虎子を得ず』、難しいことに挑戦していく気概を【私の雑記帳】
歴史はそうやって移り変わってきた。変革の主役は「人」。生き抜くために不都合な秩序や仕組みを、新しい時代に適合するように変えてきたのも「人」である。
国の運営にしろ、企業経営の仕組みにしろ、完成形はない。より良き姿を追求し、新しい時代に適合する『カタチ』にしていくということ。
常に、危機は「人」の世界を揺さぶる。危機にも外在的なものと内在的なものがあるが、『外』と『内』はつながっており、自らの問題として捉えていかないと、根本解決にはならない。
コロナ危機が襲来して2年が経つ。2020年初めに新型コロナウイルスによる感染症が登場。約1年後にはワクチンが開発され、新たな治療薬の開発も進む。
日本国内は2021年末に第5波も収束し始めたが、新たな変異株『オミクロン』が出現し、南アフリカや欧州で猛威を振るう。お隣・韓国でも感染が広がり、日本も安閑とはしておられない。
一難去ってまた一難という感じだが、ここで諦めてはいけない。
打つべき手を打ち、やるべき事をやる。解決策を求めて、「人」の知恵、英知を掘り起こしていかねばならない。
『悲観は感情から生まれ、楽観は意志から生まれる』という言葉もある。『意志』を持っているのが「人」の強みである。
新しい資本主義の方向性
岸田文雄政権は『新しい資本主義』を標榜する。『成長と分配』をめぐって議論は始まったが、〝成長か分配か〟という不毛の議論ではなく、成長と分配の好循環を図るという岸田首相の認識は大方の理解を得られているのではないか。
この議論の前に、『自助・共助・公助』といった根本精神の確認が必要だと思う。
『個人と全体(社会)』の関係、『権利と義務』の関係など、今一度洗い直していくということ。
そのように考えると、そう簡単には『新しい資本主義』の〝解〟は得られそうにないが、根本的な事を問い直す好機である。
国家の役割とは?
資本主義論でいけば、1989年末の『ベルリンの壁崩壊』で社会主義は敗れ、資本主義が勝ったとされてきた。
ベルリンの壁が崩壊して30年余が経つ。現状はどうか?
大方の旧社会主義国も市場経済になだれ込み、それが一気にグローバリゼーションを加速させた。特に中国の台頭は著しい。
その中国が掲げたのが『社会主義市場経済』。建国の父・毛沢東亡き後、最高権力者となった鄧小平がこれを唱え、1978年、国の運営を改革開放路線に切り換えた。
1992年には有名な『南巡講話』で、重慶、上海、広州など重要都市を基幹に、外資をも巻き込んで投資戦略を推進した。
中国の生き方について、『国家資本主義』という言い方もある。国家が何もかも決めていくという意味での『国家資本主義』である。
中国はどこへ向かう?
そもそも私有財産を認め、市場での自由な取引を通じて、商品やサービスの公正な価格形成を行うというのが資本主義の本来の主旨ではなかったのか。
社会主義は私有財産を認めず、1949年に成立した中華人民共和国(中国)は人民公社をつくり、大躍進を果たそうとしてきた。しかし、こうした〝大躍進運動〟は失敗し、建国間もなくは食糧不足にも苦しんだ。
今、中国は米国に次ぐ世界第2位の経済大国で、2020年代後半には米国のGDP(国内総生産)を追い抜こうという勢いである。
その中国も、人口減や格差の拡大といった現象に悩む。何よりも〝国家資本主義〟と裏腹の専制主義が自由主義陣営の欧米、日本との軋みや対立を生む。その社会主義市場経済はどこへ向かうのか。
安永竜夫さんの経済再生論
コロナ危機はまだまだ続く。感染症対策をしっかり取りながら、経済をどう回していくかという命題。
「欧州では感染者が出ている中で、対策を取りつつ、経済を動かそうという考えです。ポスト・コロナを見据えてではなくて、ウィズ・コロナで何ができるのかということで動いていかないと。日本は過去30年間、実質経済成長がなかった国。またさらに寝てしまうようではいけない」
こう語るのは三井物産会長の安永竜夫さん。
2021年11月、英国で開かれたボリス・ジョンソン首相主催の『グローバル・インベストメント・サミット』。英国に海外からの投資を呼び込むためのサミットである。
開催場所のウィンザー城には、エリザベス女王も出席され、各国の経済人と親しく言葉を交わされた。
コロナ危機の中で、女王は95歳の高齢ながら出席され、フランス、スイス、ドイツなどの代表と意見交換。安永さんにも、「日本のコロナの現状はどうですか」と聞かれたという。
コロナ対策と経済再生の両立を各国とも図っている。
「日本は現状ではコントロールしています」と安永さんは女王に答えたそうだが、課題もある。
「医療体制そのものを根本的に変えないと、病床、ベッドはいっぱいあるけど、手当てができる医者がいないという状況が続くわけですよね」と日本の危機管理そのものが問われていると安永さん。
コロナ対応と経済再生の両立へ向け、関係者は前向きだ。
受容性の高い日本へ
国と国のつながり、個人と個人のつながりが共に求められる時代。これはコロナ危機下にあっても、同じである。
こういう状況下にあって、商社の役割とは何か?
「本当にいろいろな意味で、制約の多い国がもっと規制緩和や政情変更によって、外国から人や資本を招き入れる。日本はまだ抵抗が強すぎて、きわめて選別的にしかそれをやらない」
日本の現状をそう総括しながら、安永さんが続ける。
「多様性ということに対して、日本人はあまりにも島国の中で同質性というか、出る杭を打ってきたというのがあって、実はダイバーシティ・アンド・インクルージョンと言いながら、それをやろうとしていないんじゃないか」
外国籍の人や女性の社外取締役への起用もまだまだ三井物産も少ないと〝自省〟しながら、安永さんが続ける。
「海外の事業の現場を見て下さい。それは間違いなくハイブリッド。現地の人を最大限に活かしつつ、日本から入った人間がチームをつくって、まさにインターナショナルで経営をやっています」
「受容性(インクルージョン)の高い日本人を育てることが我々の役割だと思っています」と安永さん。
新しい挑戦が続く。
危機の中から、新しい芽が生まれる─。旧来の社会秩序、産業秩序が機能しにくくなった時、秩序の変革が生まれる。
【あわせて読みたい】『虎穴に入らずんば虎子を得ず』、難しいことに挑戦していく気概を【私の雑記帳】
歴史はそうやって移り変わってきた。変革の主役は「人」。生き抜くために不都合な秩序や仕組みを、新しい時代に適合するように変えてきたのも「人」である。
国の運営にしろ、企業経営の仕組みにしろ、完成形はない。より良き姿を追求し、新しい時代に適合する『カタチ』にしていくということ。
常に、危機は「人」の世界を揺さぶる。危機にも外在的なものと内在的なものがあるが、『外』と『内』はつながっており、自らの問題として捉えていかないと、根本解決にはならない。
コロナ危機が襲来して2年が経つ。2020年初めに新型コロナウイルスによる感染症が登場。約1年後にはワクチンが開発され、新たな治療薬の開発も進む。
日本国内は2021年末に第5波も収束し始めたが、新たな変異株『オミクロン』が出現し、南アフリカや欧州で猛威を振るう。お隣・韓国でも感染が広がり、日本も安閑とはしておられない。
一難去ってまた一難という感じだが、ここで諦めてはいけない。
打つべき手を打ち、やるべき事をやる。解決策を求めて、「人」の知恵、英知を掘り起こしていかねばならない。
『悲観は感情から生まれ、楽観は意志から生まれる』という言葉もある。『意志』を持っているのが「人」の強みである。
新しい資本主義の方向性
岸田文雄政権は『新しい資本主義』を標榜する。『成長と分配』をめぐって議論は始まったが、〝成長か分配か〟という不毛の議論ではなく、成長と分配の好循環を図るという岸田首相の認識は大方の理解を得られているのではないか。
この議論の前に、『自助・共助・公助』といった根本精神の確認が必要だと思う。
『個人と全体(社会)』の関係、『権利と義務』の関係など、今一度洗い直していくということ。
そのように考えると、そう簡単には『新しい資本主義』の〝解〟は得られそうにないが、根本的な事を問い直す好機である。
国家の役割とは?
資本主義論でいけば、1989年末の『ベルリンの壁崩壊』で社会主義は敗れ、資本主義が勝ったとされてきた。
ベルリンの壁が崩壊して30年余が経つ。現状はどうか?
大方の旧社会主義国も市場経済になだれ込み、それが一気にグローバリゼーションを加速させた。特に中国の台頭は著しい。
その中国が掲げたのが『社会主義市場経済』。建国の父・毛沢東亡き後、最高権力者となった鄧小平がこれを唱え、1978年、国の運営を改革開放路線に切り換えた。
1992年には有名な『南巡講話』で、重慶、上海、広州など重要都市を基幹に、外資をも巻き込んで投資戦略を推進した。
中国の生き方について、『国家資本主義』という言い方もある。国家が何もかも決めていくという意味での『国家資本主義』である。
中国はどこへ向かう?
そもそも私有財産を認め、市場での自由な取引を通じて、商品やサービスの公正な価格形成を行うというのが資本主義の本来の主旨ではなかったのか。
社会主義は私有財産を認めず、1949年に成立した中華人民共和国(中国)は人民公社をつくり、大躍進を果たそうとしてきた。しかし、こうした〝大躍進運動〟は失敗し、建国間もなくは食糧不足にも苦しんだ。
今、中国は米国に次ぐ世界第2位の経済大国で、2020年代後半には米国のGDP(国内総生産)を追い抜こうという勢いである。
その中国も、人口減や格差の拡大といった現象に悩む。何よりも〝国家資本主義〟と裏腹の専制主義が自由主義陣営の欧米、日本との軋みや対立を生む。その社会主義市場経済はどこへ向かうのか。
安永竜夫さんの経済再生論
コロナ危機はまだまだ続く。感染症対策をしっかり取りながら、経済をどう回していくかという命題。
「欧州では感染者が出ている中で、対策を取りつつ、経済を動かそうという考えです。ポスト・コロナを見据えてではなくて、ウィズ・コロナで何ができるのかということで動いていかないと。日本は過去30年間、実質経済成長がなかった国。またさらに寝てしまうようではいけない」
こう語るのは三井物産会長の安永竜夫さん。
2021年11月、英国で開かれたボリス・ジョンソン首相主催の『グローバル・インベストメント・サミット』。英国に海外からの投資を呼び込むためのサミットである。
開催場所のウィンザー城には、エリザベス女王も出席され、各国の経済人と親しく言葉を交わされた。
コロナ危機の中で、女王は95歳の高齢ながら出席され、フランス、スイス、ドイツなどの代表と意見交換。安永さんにも、「日本のコロナの現状はどうですか」と聞かれたという。
コロナ対策と経済再生の両立を各国とも図っている。
「日本は現状ではコントロールしています」と安永さんは女王に答えたそうだが、課題もある。
「医療体制そのものを根本的に変えないと、病床、ベッドはいっぱいあるけど、手当てができる医者がいないという状況が続くわけですよね」と日本の危機管理そのものが問われていると安永さん。
コロナ対応と経済再生の両立へ向け、関係者は前向きだ。
受容性の高い日本へ
国と国のつながり、個人と個人のつながりが共に求められる時代。これはコロナ危機下にあっても、同じである。
こういう状況下にあって、商社の役割とは何か?
「本当にいろいろな意味で、制約の多い国がもっと規制緩和や政情変更によって、外国から人や資本を招き入れる。日本はまだ抵抗が強すぎて、きわめて選別的にしかそれをやらない」
日本の現状をそう総括しながら、安永さんが続ける。
「多様性ということに対して、日本人はあまりにも島国の中で同質性というか、出る杭を打ってきたというのがあって、実はダイバーシティ・アンド・インクルージョンと言いながら、それをやろうとしていないんじゃないか」
外国籍の人や女性の社外取締役への起用もまだまだ三井物産も少ないと〝自省〟しながら、安永さんが続ける。
「海外の事業の現場を見て下さい。それは間違いなくハイブリッド。現地の人を最大限に活かしつつ、日本から入った人間がチームをつくって、まさにインターナショナルで経営をやっています」
「受容性(インクルージョン)の高い日本人を育てることが我々の役割だと思っています」と安永さん。
新しい挑戦が続く。