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【ソニーが60年前に作った化学会社】ニッチだが高収益の理由

財界オンライン 2022年1月18日 15時0分

既に100を超える自動車で採用される「反射防止フィルム」

「ソニーグループで培ってきたのは『こういうものを作りたい』という最終顧客の声をダイレクトに聞き、バックキャスティング(未来起点)で材料や部材を開発することです」ーー。

こう語るのは、デクセリアルズ社長の新家 由久氏。

 デクセリアルズは1962年、トランジスタラジオ『TR-55』に必要なプリント基板用接着剤付銅箔が外国製だったため、国内で生産できるようにしようと、工業用接着剤の製造販売会社『ソニーケミカル』として創業。ソニーが事業の選択と集中を進める中、12年『デクセリアルズ』として独立、15年東証一部に再上場した。

 22年3月期の業績は売上高890億円、営業利益210億円、営業利益率は約24%。高収益の要因は「ニッチだが、デジタル機器の進化になくてはならない製品を作ってきた」から。

 例えば、「導通」と「絶縁」の特性を兼ね備えたフィルム型の「接合」材料『異方性導電膜(ACF)』。3つの機能を網羅した製品で、半導体をパネルに実装する材料としてディスプレーになくてはならない部材。シェアも世界トップだ。

 その他、スパッタリング技術で製造する『反射防止フィルム』、スマートフォンやタブレットに使われる『光学弾性樹脂(SVR)』も世界シェアトップ。

 直接顧客だけでなく、変化の先端を走る最終顧客のニーズもキャッチし、新製品の開発につなげている同社が、いま注力しているのが自動車。

「自動運転やEV化など、クルマがエレクトロニクス化すれば、コンシューマーエレクトロニクス事業で培ってきたわれわれの技術や製品が必ず必要になる。クルマがIoTアプリケーションの1つになる時代になれば、貢献できることはより大きくなる」

 様々なセンサーで常にクルマの状態をモニタリングするようになれば、ディスプレーで情報を管理する機能も必要になってくる。キレイに見えるだけでなく安全性の担保でも「反射に対するソリューション」は重要で、同社の製品は既に100を超えるモデルに搭載されている。変化に対応し、他社がまねできない「自社技術をとがらせ」さらなる成長を図る。


デクセリアルズ社長
新家 由久
Shinya Yoshihisa

1969年7月福岡県生まれ。95年3月近畿大学大学院卒業、2001年7月ソニーケミカル入社、05年オプティカルマテリアル事業部開発部部長、14年デクセリアルズ執行役員、17年上席執行役員自動車事業推進グループ長、19年3月社長就任。

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