地銀支援策は早くも実質的に縮小
日銀が2021年春に始めたばかりの地銀支援策の実質的な縮小を決め、金融界から顰蹙を買った。地銀や信金が再編や経費削減に取り組めば、日銀に預ける当座預金の金利を最大3年間上乗せする内容だが、22年度から上乗せ金利の付与額に上限を設ける。
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「地域経済を支える取り組みを後押しする」(黒田東彦総裁)と喧伝していたが、新型コロナウイルス禍に伴う融資の急増で地銀などが日銀に預ける当座預金が膨張。支払額が当初想定を大幅に上回る見通しとなった上、マイナス金利政策の安定運用にも支障を生じる恐れが出たため「戦線を縮小した」(企画局幹部)。
黒田総裁ら執行部には、この制度で異次元緩和策の長期化に伴う地銀経営の打撃を「埋め合わせる」ことでマイナス金利の深掘りなど追加緩和の余地を広げたい思惑もあっただけに誤算だろう。
事実、この1年で金融政策を巡る環境は様変わりした。インフレ圧力が高まり、FRB(米連邦準備理事会)は21年12月、コロナ対応の量的緩和を前倒しで縮小することを決定し、22年に3度の利上げに向かう方針を示した。
英イングランド銀行は12月に主要中銀で初めて利上げに踏み切ったほか、欧州中央銀行(ECB)もコロナ対応の量的緩和を22年3月で終える方針だ。
黒田総裁は「欧米のようになる可能性はまずない」と静観する姿勢を示しているが、資源価格高騰や世界的なコロナ禍からの景気回復、物流網の逼迫などを背景として物価高の波は日本にも及んでいる。
国内経済の停滞で企業の賃上げが進まない中、円安進行による輸入コスト増加分が商品価格に幅広く転嫁される「悪い物価上昇」が現実になれば、個人消費を一段と冷え込ませる「負のスパイラル」に陥りかねない。
金融政策の正常化に乗り遅れた日本と欧米との金利差拡大による円安進行も予想される中、日銀は国内景気の停滞下の「悪い物価上昇」にどう対応するのか。22年の金融政策運営は一段と難しくなりそうだ。
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