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改革に完成形なし。AI、DX時代のリーダーの責任とは?【私の雑記帳】

財界オンライン 2022年2月6日 11時30分

日立がジョブ型雇用…
 日立製作所が『ジョブ型雇用』に踏み切るとのニュースに産業界ではさまざまな反応が聞かれる。

 ジョブ型とは欧米で一般的な働き方で、職務(ジョブ)の内容を明確にし、それに沿って人材を起用する雇用の仕方。職務記述書(ジョブディスクリプション)があって、職務ごとに必要なスキルを明記する。

 賃金も職務に応じて決まる。今よりもっと高い報酬を望む人は、さらに上の職務を目指し、自分のスキルを磨かねばならない。

 言ってみれば、ステージがいくつもあり、そのステージに見合った賃金形態が構築されていて、努力をしてスキルを修得し、自分の仕事の生産性を上げていけば、より高い賃金が得られる仕組み。その意味では、ヤル気を掘り起こす雇用形態と言っていい。

 日本では、『メンバーシップ型』が浸透している。終身雇用、年功序列ということで長らくやってきたが、これも日本国内だけで通用する雇用形態。グローバル経営を進めている大企業の中には、「海外と国内の雇用形態が違い過ぎて、人材の採用などで、齟齬が出てきて困る」といった声も出ていた。

ライバルに負けられない
 日立製作所はなぜ、この時期にジョブ型に踏み切ったのか?

「グローバル経営を進めている日立の従業員数は世界で37万人。うち15万人が日本人という内わけ。世界各国で働く21万人はすでにジョブ型の雇用でやってきたということ。グローバルに生きていく以上、海外でやっているジョブ型を日本国内でやれないものか。国際競争力を付けるためにも、本拠の日本もそうしていく必要があるのではないか、という所から議論は出発した」と関係者は語る。

 海外はジョブ型、日本はメンバーシップ型という二本立てを一本化させようという取り組みが数年前から始まった。

 職務の定義や、賃金形態をどう構築していくか、大変な作業だったと聞くが、最後は労働組合も合意しての日立のジョブ型雇用採用である。

「日立を取り巻く環境も随分と変わった。ひと昔前まで、ライバルは東芝や三菱重工業、三菱電機だった。それが今や、GE、アルストム、シーメンスといった世界で存在感のあるプレーヤーがライバル。そうした有力企業との激戦の中を生き抜くという覚悟があっての今回の措置」という指摘。

厳しい時こそ、正直に……  日立のかつてのライバル・東芝、三菱重工業は今、苦境にある。ことに東芝は会社3分割案で揺れている。市場は両社をどう評価しているのか?

 1月12日(水)現在の時価総額は日立が6兆6779億円、東芝は2兆1173億円と3倍の開きがある。かつてライバル同士だったわけだが、この差はどこから生まれたのか?

 リーマン・ショック(08年)時に日立は7873億円の大赤字を出した。当時、製造業として史上最悪の赤字とされ、そこから子会社の削減を含む日立の大改革が始まった。裸になっての再出発だ。

 一方、東芝は損失計上の実態を隠蔽し、首脳陣の責任のなすり合いもあり、結局は苦境に立たされることとなる。その東芝は今、懸命の再生が続く。

 改革に完成形はない。AI(人工知能)やデジタル・トランスフォーメーションが進行する中で、「人」の可能性を掘り起こす作業が続く。リーダーの責任は重い。

各企業の選択に……
「ジョブ型をやらなければいけないということでは決してない。その企業の置かれた環境や人材の構成などで事情は違うのだから」という声も聞かれる。

 あるグローバル企業の経営者は、「うちは、海外はジョブ型、日本国内はメンバーシップ型をベースに独自にやっていく」と語る。

 サービス分野のトップには、「うちは雇用を守ることを優先にやっており、とてもジョブ型に踏み切る段階ではありません」ときっぱり言い切る人もいる。

 全企業数の99%を占める中小企業では、ジョブ型を採用するところは少ない。ただ、IT(情報技術)やAI関連などでは、ジョブ型に
踏み切り、有能な人材を内外から集めるところも出てきそうだ。

 大企業の集まりである経団連は、「雇用形態は各企業に任せるべき」という考え。新しい生き方・働き方は各企業、各個人が選択していくということであろう。

オリックスの多角経営  コロナ危機は大変な経済的損失を与えたが、同時に気づきも与えてくれた。業種によって違いはあるが、企業の中には、レジリエンス(回復力、耐力)を示すところも少なくない。

 オリックス社長の井上亮さん(1952年=昭和27年10月生まれ)は、「無駄が多かった」と改善すべき点が認識できたと語る。

 同社は、コロナ前に純利益で3000億円を超える期が2020年3月期まで3期続いたが、21年3月期は1923億円に減少。
 
 22年3月期は2500億円の目標だったが、昨年12月、3100億円に上方修正した。今後、5年間で再生可能エネルギー分野に1兆円を投じる戦略に打って出るなど、攻めの経営展開だ。

 同社の事業は法人リース、不動産、事業投資、環境エネルギー、保険、銀行・クレジット、海外部門と多岐にわたる。

 今まで投資家の一部からは、「コングロマリット・デメリット(短所)があるのでは」と言われてきたが、業績面で見ると、コングロマリット・メリット(長所)を引き出したと言っていい。

 脱炭素経営にも注力している。「2030年までに化石燃料部分は完全にシャットダウンする」計画で、木質バイオマスなどの再生可能エネルギー100%に持っていくなど、積極投資が続く。多角経営をレジリエンスのあるものにし、さらに収益をあげる経営にする井上・オリックスである。

河北博文さんの思い
 危機は人を鍛える。コロナ感染症に対応してきた医療界で思いや覚悟を新たにする人たちがいる。

 社会医療法人河北医療財団理事長の河北博文さんは、変異株が度々出現する状況に、「これは人間の英知への挑戦。科学技術の発展途上に、しっかりとした生活様式、そして、心の持ちようが試されています」と年頭所感に記す。

 1988年の理事長就任以来、『社会文化を背景とし、よりよい医療への挑戦』という〝理念〟と、『質の高い恕(おもいやり)のある医療を行うとともに地域の健康向上に寄与する』という〝目的〟をグループ内の医師、看護師、職員に呼び掛ける。

 東京・阿佐ヶ谷の河北総合病院は2024年末、新病院に生まれ変わる。電子カルテなどデジタル革命を高度に取り入れ、「質の高いおもいやりのある医療を実践していきたい」と河北さんは語る。新しい医療の出現を期待したい。

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