不確実性が高まる中、日本のカジ取りをどう進めるか─。「普遍的価値観を共有する米国との同盟を基軸にしながら、日本の針路を決めていく」と話すのは外務大臣の林芳正氏。中国や北朝鮮が軍事的動きを強めるなど地政学リスクもある中、日本はどう対処すべきか。例えば経済安全保障を意識したサプライチェーンの構築など危機管理が問われている。
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国際社会の変化が加速化、複雑化する中で
─ 外務大臣として国の形をつくる外交政策を担っているわけですが、改めて日本外交の基本姿勢から聞かせて下さい。
林 現在、国際社会は、時代を画する変化の中にあると思っています。国際社会のパワーバランスの変化が、前に比べて加速化、複雑化してきている。
これまで我々が慣れ親しんでいた既存の秩序を巡って、不確実性が高まっている中で、自らに有利な国際秩序の形成、影響力の拡大を目指した国同士の競争が露わになってきているのだと思います。
日本を取り巻く安全保障環境も、北朝鮮による核・ミサイル開発の進展や、中国による尖閣諸島周辺を含む東シナ海における一方的な現状変更を始め、格段に速いスピードで厳しさ、不確実性が高まっています。
我々としては、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値と、それに支えられた国際秩序が厳しい挑戦にさらされていると認識しています。
─ この流れの中で近年、「経済安全保障」という政策が登場、これについては?
林 ええ。この数年、経済安全保障の領域でも国家間の競争が激化しています。安全保障の裾野が重要技術分野、新興技術分野に急速に拡大してきていると思っています。
また、気候変動、新型コロナウイルス、軍縮・不拡散といった地球規模課題への対応も立ち止まることが許されない状況にあります。そうした中で「ポストコロナ」で重要性が増すデジタル分野を始めとして、新しい時代に対応したルールづくりや国際秩序の構築が求められていると考えています。
─ 2021年12月に英リバプールで開催された先進7カ国(G7)外相会合に出席したわけですが、その中で日本の立ち位置をどう感じましたか。
林 G7の中でアジアの国は日本だけですが、欧米諸国もアジア太平洋、例えば先程申し上げた中国や北朝鮮を含む状況に無関心ではいられないのだということを、現場でひしひしと感じてきました。その意味でもG7各国の日本に対する期待の大きさを感じたところです。
─ アメリカとの同盟関係は日本の外交の基軸です。これからどう運営していきますか。
林 何といっても日米同盟は日本の外交・安全保障の基軸であり、インド太平洋地域、国際社会の平和と繁栄の礎であると考えております。
両国に共通するのは自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値です。その普遍的価値で強く結ばれた日米同盟の重要性がますます大きくなっていく。安全保障、経済、そして人的交流を含めて、総合的に日米同盟を深化させていかなければならないと思っています。
経済安全保障、中国との関係は?
─ 産業界にとって経済安全保障は重要度を増しています。例えば日本にとって最大の貿易相手国である中国とは経済的つながりが深い一方で、経済安全保障上、どうカジ取りすべきかが問われます。この問題をどう考えますか。
林 おっしゃったように、中国は日本にとって最大の貿易相手国であり隣国です。また、中国には日系企業が進出をされ、そこに駐在する日本人社員の方が大変多いですね。
その意味でも経済においては対話、実務協力を適切な形で進めていかなければならないと考えています。先日も中国の王毅・国務委員兼外交部長(外相)と電話会談を行いましたが、2022年は日中国交正常化50周年ですから、これを契機に経済、国民交流を後押ししていくことで一致しました。
同時に、そういう交流があるからといって、例えば尖閣諸島を含む主権領土の問題、民主主義や人権など基本的価値について譲ることがあってはならないと考えています。
─ 主権について主張をしていくと。
林 ええ。さらには中国による透明性を欠いた軍事力、軍事活動の拡大、東シナ海における一方的な現状変更の試み、軍事活動の拡大化・活発化は、日本のみならず国際社会の安全保障上の懸念になっています。このことは中国側にも強く言っていくつもりです。
今、中国は世界第2位の経済大国ですから、様々な面で、その行動が国際社会に与える影響が増しています。その意味で中国が国際社会のルールに則って責任を果たしていただき、期待に応えていただくことが重要だと考えています。
最近よく「同志国」といいますが、普遍的価値を共有する国々としっかり連携して、ハイレベルの機会も活用しながら、主張すべきは毅然として主張し、責任ある行動を求め、同時に対話を続けて共通の諸課題について協力していくというスタンスで取り組んでいきます。
─ 今、資源エネルギーを含めた原材料価格が高騰、モノ不足が続いています。世界的な半導体不足など、サプライチェーンをどう維持するかは経済人の最大の眼目です。ここで官民連携も必要になってくると思いますが。
林 この問題は外務省を離れるかもしれませんが、自民党ではこの2年ほど、甘利明先生を中心に経済安全保障に関する議論を進め、2021年5月には中間とりまとめを公表しています。
こうした議論を踏まえて、初代の経済安全保障担当として小林鷹之大臣が今回就任されました。小林大臣の下で1月からの通常国会には経済安全保障の基本的な考え方に基づいた法案が出てくると承知しております。
卑近な例ではコロナ禍で、マスク不足を受けて国内企業に増産をお願いしたわけですが、なかなか捗らなかった。それは日本企業であっても工場が中国にあり、なかなか中国から日本に輸出ができないという問題があったからです。
その時、「戦略的自律性」と言っていましたが、様々な意味で必要な物資のサプライチェーンは国内で持っていかなければいけないのではないかという議論になりました。
もう一つ、日本は高度な先端技術を持っています。諸外国にとって、日本ときちんと付き合わないと、そうした技術が手に入らなくなるという意味で重要な国だと認識してもらう。こうした「戦略的不可欠性」を確立することが重要だという議論を党でまとめました。
これを実現する上で、アメリカや欧州の同志国とは、同じような考え方で進んでいく必要があります。そのためのルールをつくっていくためにも、緊密に連携していくことになろうかと思います。
─ 企業としては地政学が絡む問題ですから、政府との連携が大事になってきます。
林 そうですね。この問題は、実は新しい産業政策の側面が出てきます。これまではなるべく市場に任せて自由にという時代でしたが、これからは新しい意味で官民が協調しながらやるべき分野が増えてくるという意味では、かつての産業政策ではなく、新しい産業政策と言えるのではないでしょうか。
─ こうした新たな時代の他国との関係、国と企業の関係の中で、改めて国の役割をどう考えますか。
林 新しい産業政策と申し上げましたが、その意味で政策ですからまさに国がやるということです。官民で協調し、対話をしながら、何が全体としていい方向にいくのかということを、よく擦り合わせしながら進めていくことが大事になってくると思います。
北朝鮮の拉致問題、韓国への対応
─ ところで、北朝鮮との間では拉致問題という未解決の問題があります。この課題への対処は?
林 北朝鮮の拉致問題は、我が国の最重要課題だと思っています。岸田総理ご自身が、条件を付けずに金正恩・国務委員長と直接向き合うという決意を述べてきておられます。全ての拉致被害者の1日も早いご帰国を実現すべく、全力で取り組まなければならないと思っております。
昨年12月、拉致被害者家族会の前代表である飯塚繁雄さんがお亡くなりになりました。お悔やみを申し上げ、ご冥福をお祈りするばかりですが、ご家族が高齢化される中で、本当に待ったなしの課題であるという認識を強めております。
─ 併せて、韓国とは近いにもかかわらず、日本との間には課題のある国ですが、どういう外交を進めていきますか。
林 韓国も重要な隣国であり、日韓関係は大事だと思っていますが、一方で国と国との間の約束をしっかり守っていただくことが大変大事だと考えています。
先日のG7に招待国として韓国の外相も出席されており、先方から来られたので立ち話になったのですが、私からは旧朝鮮半島出身労働者問題、慰安婦問題等、日本の一貫した立場をしっかりとお伝えをして、韓国側に適切な対応を強く求めておいたところです。
北朝鮮への対応を始め日韓、日米韓の協力の重要性を両外相の間で改めて確認した上で、日韓関係を健全な関係に戻すように外国当局間の協議、意思疎通を加速していくことで一致をしたところです。
日米豪印4カ国の連携強化を
─ 日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国による協力、日米豪印「Quad」もありますが、中でもインドとの関係をどう考えますか。
林 私が外務大臣に就任してすぐ、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相と電話会談を行い、サイバーなど新しい分野、先程お話した経済安全保障を含む安全保障面、経済面など幅広い分野で具体的に協力していこうということで一致しました。
2022年は日印両国にとって国交樹立70周年です。そしてインドとは「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」も結んでいますから、これをさらに発展させていこうということです。
─ クワッドのもう1国、オーストラリアとの関係も重要になってきましたね。
林 2021年11月に、オーストラリアのマリズ・ペイン外相とテレビ会談でお話をさせていただきました。
安全保障、経済協力、クワッド、さらには日・米・豪の3カ国の協力を始めとする同盟国・同志国との連携、そしてグローバルな課題についての協力を軸に、日豪関係をさらに進めていくことが重要で、そのために緊密に意思疎通をしていこうということで一致したわけです。
実はその後、豪州もG7外務大臣会合に出席されていましたから、12月11日に対面で日豪外相会談を実施し、さらに関係強化を確認できました。
日本にとってアメリカは同盟国ですが、G7はもちろんのこと、普遍的な価値を共有する同志国との関係をしっかり強化することが大事だと思います。
─ ところで今回、G7の夕食会で林さんがピアノを披露されたそうですね。
林 ええ。ほんのワンコーラスですが(笑)。1日目の夕食会の場所が「ビートルズ・ストーリー博物館」だったのですが、食事会場に向かう道すがら、少し館内をご案内していただいたんです。
中にはジョン・レノンの部屋を再現したコーナーがあり、彼の代表曲『イマジン』を弾いた白いピアノのレプリカが置いてありました。
そこでみんなで記念撮影をしようということになったのですが、「どなたか1人、ピアノに座ってもいいですよ」という話になり、皆さんから「君が座れよ」と言われて(笑)。
そこで、ジョン・レノンの部屋ですから『イマジン』をワンコーラス演奏したんです。皆さん喜んでおられました。
─ その後の夕食会も盛り上がったのでは?
林 実は、その後の夕食会では「オープンソサエティ」をテーマにがっつりと議論をしたため、そうした雰囲気ではありませんでした(笑)。ただ、会場に向かう途中、皆さんから「よかったね」と言っていただき、場が和みましたね。
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国際社会の変化が加速化、複雑化する中で
─ 外務大臣として国の形をつくる外交政策を担っているわけですが、改めて日本外交の基本姿勢から聞かせて下さい。
林 現在、国際社会は、時代を画する変化の中にあると思っています。国際社会のパワーバランスの変化が、前に比べて加速化、複雑化してきている。
これまで我々が慣れ親しんでいた既存の秩序を巡って、不確実性が高まっている中で、自らに有利な国際秩序の形成、影響力の拡大を目指した国同士の競争が露わになってきているのだと思います。
日本を取り巻く安全保障環境も、北朝鮮による核・ミサイル開発の進展や、中国による尖閣諸島周辺を含む東シナ海における一方的な現状変更を始め、格段に速いスピードで厳しさ、不確実性が高まっています。
我々としては、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値と、それに支えられた国際秩序が厳しい挑戦にさらされていると認識しています。
─ この流れの中で近年、「経済安全保障」という政策が登場、これについては?
林 ええ。この数年、経済安全保障の領域でも国家間の競争が激化しています。安全保障の裾野が重要技術分野、新興技術分野に急速に拡大してきていると思っています。
また、気候変動、新型コロナウイルス、軍縮・不拡散といった地球規模課題への対応も立ち止まることが許されない状況にあります。そうした中で「ポストコロナ」で重要性が増すデジタル分野を始めとして、新しい時代に対応したルールづくりや国際秩序の構築が求められていると考えています。
─ 2021年12月に英リバプールで開催された先進7カ国(G7)外相会合に出席したわけですが、その中で日本の立ち位置をどう感じましたか。
林 G7の中でアジアの国は日本だけですが、欧米諸国もアジア太平洋、例えば先程申し上げた中国や北朝鮮を含む状況に無関心ではいられないのだということを、現場でひしひしと感じてきました。その意味でもG7各国の日本に対する期待の大きさを感じたところです。
─ アメリカとの同盟関係は日本の外交の基軸です。これからどう運営していきますか。
林 何といっても日米同盟は日本の外交・安全保障の基軸であり、インド太平洋地域、国際社会の平和と繁栄の礎であると考えております。
両国に共通するのは自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値です。その普遍的価値で強く結ばれた日米同盟の重要性がますます大きくなっていく。安全保障、経済、そして人的交流を含めて、総合的に日米同盟を深化させていかなければならないと思っています。
経済安全保障、中国との関係は?
─ 産業界にとって経済安全保障は重要度を増しています。例えば日本にとって最大の貿易相手国である中国とは経済的つながりが深い一方で、経済安全保障上、どうカジ取りすべきかが問われます。この問題をどう考えますか。
林 おっしゃったように、中国は日本にとって最大の貿易相手国であり隣国です。また、中国には日系企業が進出をされ、そこに駐在する日本人社員の方が大変多いですね。
その意味でも経済においては対話、実務協力を適切な形で進めていかなければならないと考えています。先日も中国の王毅・国務委員兼外交部長(外相)と電話会談を行いましたが、2022年は日中国交正常化50周年ですから、これを契機に経済、国民交流を後押ししていくことで一致しました。
同時に、そういう交流があるからといって、例えば尖閣諸島を含む主権領土の問題、民主主義や人権など基本的価値について譲ることがあってはならないと考えています。
─ 主権について主張をしていくと。
林 ええ。さらには中国による透明性を欠いた軍事力、軍事活動の拡大、東シナ海における一方的な現状変更の試み、軍事活動の拡大化・活発化は、日本のみならず国際社会の安全保障上の懸念になっています。このことは中国側にも強く言っていくつもりです。
今、中国は世界第2位の経済大国ですから、様々な面で、その行動が国際社会に与える影響が増しています。その意味で中国が国際社会のルールに則って責任を果たしていただき、期待に応えていただくことが重要だと考えています。
最近よく「同志国」といいますが、普遍的価値を共有する国々としっかり連携して、ハイレベルの機会も活用しながら、主張すべきは毅然として主張し、責任ある行動を求め、同時に対話を続けて共通の諸課題について協力していくというスタンスで取り組んでいきます。
─ 今、資源エネルギーを含めた原材料価格が高騰、モノ不足が続いています。世界的な半導体不足など、サプライチェーンをどう維持するかは経済人の最大の眼目です。ここで官民連携も必要になってくると思いますが。
林 この問題は外務省を離れるかもしれませんが、自民党ではこの2年ほど、甘利明先生を中心に経済安全保障に関する議論を進め、2021年5月には中間とりまとめを公表しています。
こうした議論を踏まえて、初代の経済安全保障担当として小林鷹之大臣が今回就任されました。小林大臣の下で1月からの通常国会には経済安全保障の基本的な考え方に基づいた法案が出てくると承知しております。
卑近な例ではコロナ禍で、マスク不足を受けて国内企業に増産をお願いしたわけですが、なかなか捗らなかった。それは日本企業であっても工場が中国にあり、なかなか中国から日本に輸出ができないという問題があったからです。
その時、「戦略的自律性」と言っていましたが、様々な意味で必要な物資のサプライチェーンは国内で持っていかなければいけないのではないかという議論になりました。
もう一つ、日本は高度な先端技術を持っています。諸外国にとって、日本ときちんと付き合わないと、そうした技術が手に入らなくなるという意味で重要な国だと認識してもらう。こうした「戦略的不可欠性」を確立することが重要だという議論を党でまとめました。
これを実現する上で、アメリカや欧州の同志国とは、同じような考え方で進んでいく必要があります。そのためのルールをつくっていくためにも、緊密に連携していくことになろうかと思います。
─ 企業としては地政学が絡む問題ですから、政府との連携が大事になってきます。
林 そうですね。この問題は、実は新しい産業政策の側面が出てきます。これまではなるべく市場に任せて自由にという時代でしたが、これからは新しい意味で官民が協調しながらやるべき分野が増えてくるという意味では、かつての産業政策ではなく、新しい産業政策と言えるのではないでしょうか。
─ こうした新たな時代の他国との関係、国と企業の関係の中で、改めて国の役割をどう考えますか。
林 新しい産業政策と申し上げましたが、その意味で政策ですからまさに国がやるということです。官民で協調し、対話をしながら、何が全体としていい方向にいくのかということを、よく擦り合わせしながら進めていくことが大事になってくると思います。
北朝鮮の拉致問題、韓国への対応
─ ところで、北朝鮮との間では拉致問題という未解決の問題があります。この課題への対処は?
林 北朝鮮の拉致問題は、我が国の最重要課題だと思っています。岸田総理ご自身が、条件を付けずに金正恩・国務委員長と直接向き合うという決意を述べてきておられます。全ての拉致被害者の1日も早いご帰国を実現すべく、全力で取り組まなければならないと思っております。
昨年12月、拉致被害者家族会の前代表である飯塚繁雄さんがお亡くなりになりました。お悔やみを申し上げ、ご冥福をお祈りするばかりですが、ご家族が高齢化される中で、本当に待ったなしの課題であるという認識を強めております。
─ 併せて、韓国とは近いにもかかわらず、日本との間には課題のある国ですが、どういう外交を進めていきますか。
林 韓国も重要な隣国であり、日韓関係は大事だと思っていますが、一方で国と国との間の約束をしっかり守っていただくことが大変大事だと考えています。
先日のG7に招待国として韓国の外相も出席されており、先方から来られたので立ち話になったのですが、私からは旧朝鮮半島出身労働者問題、慰安婦問題等、日本の一貫した立場をしっかりとお伝えをして、韓国側に適切な対応を強く求めておいたところです。
北朝鮮への対応を始め日韓、日米韓の協力の重要性を両外相の間で改めて確認した上で、日韓関係を健全な関係に戻すように外国当局間の協議、意思疎通を加速していくことで一致をしたところです。
日米豪印4カ国の連携強化を
─ 日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国による協力、日米豪印「Quad」もありますが、中でもインドとの関係をどう考えますか。
林 私が外務大臣に就任してすぐ、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相と電話会談を行い、サイバーなど新しい分野、先程お話した経済安全保障を含む安全保障面、経済面など幅広い分野で具体的に協力していこうということで一致しました。
2022年は日印両国にとって国交樹立70周年です。そしてインドとは「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」も結んでいますから、これをさらに発展させていこうということです。
─ クワッドのもう1国、オーストラリアとの関係も重要になってきましたね。
林 2021年11月に、オーストラリアのマリズ・ペイン外相とテレビ会談でお話をさせていただきました。
安全保障、経済協力、クワッド、さらには日・米・豪の3カ国の協力を始めとする同盟国・同志国との連携、そしてグローバルな課題についての協力を軸に、日豪関係をさらに進めていくことが重要で、そのために緊密に意思疎通をしていこうということで一致したわけです。
実はその後、豪州もG7外務大臣会合に出席されていましたから、12月11日に対面で日豪外相会談を実施し、さらに関係強化を確認できました。
日本にとってアメリカは同盟国ですが、G7はもちろんのこと、普遍的な価値を共有する同志国との関係をしっかり強化することが大事だと思います。
─ ところで今回、G7の夕食会で林さんがピアノを披露されたそうですね。
林 ええ。ほんのワンコーラスですが(笑)。1日目の夕食会の場所が「ビートルズ・ストーリー博物館」だったのですが、食事会場に向かう道すがら、少し館内をご案内していただいたんです。
中にはジョン・レノンの部屋を再現したコーナーがあり、彼の代表曲『イマジン』を弾いた白いピアノのレプリカが置いてありました。
そこでみんなで記念撮影をしようということになったのですが、「どなたか1人、ピアノに座ってもいいですよ」という話になり、皆さんから「君が座れよ」と言われて(笑)。
そこで、ジョン・レノンの部屋ですから『イマジン』をワンコーラス演奏したんです。皆さん喜んでおられました。
─ その後の夕食会も盛り上がったのでは?
林 実は、その後の夕食会では「オープンソサエティ」をテーマにがっつりと議論をしたため、そうした雰囲気ではありませんでした(笑)。ただ、会場に向かう途中、皆さんから「よかったね」と言っていただき、場が和みましたね。