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政治家、官僚それぞれの役割を問う! 答える人・元内閣官房副長官 石原信雄

財界オンライン 2022年2月11日 11時30分

競うことと対立することは違う

 ―― 官僚のトップを長くつとめた石原さんということで、官僚と政治家の関係について伺います。最近は官邸が人事権を握って、官僚が委縮しているという指摘もあるんですが、官僚と政治家のあるべき関係はどういうものだと考えますか。

 石原 官僚は、それぞれの所管行政についてのエキスパートですから、その知識と経験をもってお仕えする。政治家は、選挙民から選ばれた議員であり、選ばれた地域住民の幸福を考えて行動するわけです。そういう方々が内閣制度のいろいろな分野の閣僚をおおせつかると。

 だから、政治家は内閣の一員として、住民の気持ちや声を代弁しているという立場から、専門家である役人の行政活動に対して、一定の影響力や指導力を発揮するということです。

 ですから、この両者の関係は、専門的な知識を必要とする問題は役人の能力を活用する。それを何に使うかというと、地域住民、さらには国民の最大の利益を実現するために、役人の知識を活用していくということです。決して特定の政党の特定の派閥のために使うのではなく、選挙民全体の幸福を考えて、役人が持っている専門知識を生かすと。そういう関係であるべきだと思います。

 ―― 政治家、役人それぞれにきちんとした役割があると。

 石原 はい。役人は行政の専門家集団です。それに対して、政治家は住民の利益を代表して政治を行うと。政治を具現化するためには、行政という手続きが必要です。だから、どちらかというと、政治が行政に対して優位であると。ここは間違えてはいけません。

 だから、政治の方が上の立場ではあるんですが、専門的な知識は役人が持っているわけで、主従関係でいったら、政治が主で、行政が従です。しかし、専門的な問題は一般的に行政の方が詳しいわけですから、政治がおかしな方向に行ったなと思ったら、行政は政治に改めてもらうための意見を言うべきなんです。主従関係というのは、信頼関係があってこそですから、双方が争ってはいけないですね。

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 ―― そこの基本スタンスは間違えてはいけない。

 石原 それと思うのは、わたしも8年近く官房副長官をやりまして、何度も省庁間の調整をしたんですが、やはり、内閣の一つの方向性を打ち出すためには、省庁間で競うことが大事なんです。しかし、競うことと対立することは違うんですよね。

 わたしも省庁同士で競って、知恵を出し合うことは大いに奨励しましたけど、お互いに相手のあら捜しをし、非難するのはやめなさいと言ってきました。

 やはり、省庁間である程度競争してもらわないと進歩がないんです。それぞれの省庁や所管行政が将来を見越して新しい技術を開発するとか、新しい分野を開拓していくことは絶対に必要です。ですが、時に競争が激しくなってしまって、その境目で何か見解の違いであったり、省庁間の権限争いだったりが起こってしまうんですね。

 ―― こうした場合、調整役は誰になるんですか。

 石原 内閣が間に立って調整するしかありません。だから、省庁間の競い合いは必要で、それがなければ前進もないから、競い合って前進すると。ただ、お互いを叩き合うのはダメで、叩き合ったら両方がダメになってしまう。そういう心構えが必要だと思います。

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