米国などからの事前の強い警告にもかかわらず、ロシアは2月24日、ウクライナに侵攻した。冷戦構造が崩壊した後に形成された欧州の国際秩序を力で変えようとする試みである。帝政時代も含めた「ロシアの栄光」や、安全保障上のバッファーゾーン確保に強くこだわるようになったプーチン大統領による、「旧ソ連圏復活」の試みとも言える。同大統領は被害妄想で、強迫観念にとらわれているのではとの声も出ている。
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「民主主義」陣営である米国や西欧諸国と、「専制主義」あるいは「強権主義」陣営の大国の1つであるロシアの対立は、今回の一件でグレードが上がった。そして、この歴史的にみて大きな変化は、台湾や南シナ海などを巡る中国のスタンスや東アジアの安全保障環境にも、大きな影響を及ぼすことにならざるを得ない。日本にとっても他人事ではない。
国連安全保障理事会は2月25日、ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議案の採決を行った。常任理事国であるロシアが拒否権を発動したため決議案は廃案になったのだが、票決に際して棄権した国が3つあった。中国、インド、アラブ首長国連邦(UAE)である。これらの国々はロシアとの外交関係を重視して棄権した。米バイデン政権や欧州諸国が形成しようとする対ロシア包囲網は、現実にはなかなかうまくワークしない。
中国は、米国への対抗上、「敵の敵」であるロシアとの連携を強化している。ロシアに対する米欧主導のさまざまな経済制裁が尻抜けになる可能性も、そこに潜在している。
インドは昨年12月、10年間の軍事協力をロシアと締結し、ロシア製の武器を大量に調達している。王制国家UAEは最近、エネルギー分野などでロシアと連携している。
米国のパワーが以前よりも明らかに弱まり、「世界の警察官」的な役割をもはや果たせなくなる中で、世界はこれまで以上に激動の時代に入った感が強い。中国との対決の主戦場であるアジア太平洋地域に米国は戦力を集中したい考えだが、そうなると手薄になった欧州や中東で火の手があがる。ウクライナはその一つの事例とも言える。
そのアジアでも、北朝鮮がミサイル発射実験の回数をここにきて急増させている。民主主義や基本的人権に高い価値を見いだしているバイデン政権が、北朝鮮に対して外交交渉で大きく譲歩するとは考え難い。譲歩するつもりも、その余裕もないのが実情だろう。金正恩総書記はそのあたりを冷静に見透かした上で、この機に乗じて自国のミサイル技術の高度化を図ろうとしているのだろう。
地政学的リスクを材料にして金融市場が大きく動揺する場面は、今後さらに多くなりそうである。サイバー空間を舞台にした官公庁や企業への攻撃も起こっている。不確実性が高まる状況は日本企業の経済活動にとり、明らかにネガティブである。
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