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ウクライナ国民の「祖国を守り抜く」という覚悟、それを受けた日本の生き方は?【私の雑記帳】

財界オンライン 2022年5月29日 11時30分

祖国を守り抜く覚悟が…  ロシアのウクライナ侵攻が始まって約3カ月。当初、ロシア軍が圧倒的と思われていたのが、ウクライナ側が劣勢の中、持ちこたえ、しっかり反撃している感じ。

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 状況を変えている背景には、ゼレンスキー大統領のリーダーとしての不屈の姿勢がある。何と言っても、ウクライナ国民の「自分たちの祖国を守り抜く」という堅い決意。その決意と覚悟が、ロシア軍の士気を削いでいると言っていいだろう。

 いくら、プーチン大統領が「ネオナチの残虐から守るため」と強弁したところで、国境を越えて侵入し、ウクライナ国民を砲撃、殺傷している側の罪は重い。

 そのことは、前線で相手を無差別に攻撃しているロシア軍兵士、とりわけ若い兵士をして、「自分たちは何のために戦争をしているのか」と悩ませる元になっているのではないか。

 欧州陣営が自らの安心と安全を守る相互防衛のNATO(北大西洋条約機構)は米国を入れて16カ国体制だったのが、旧ソ連邦のバルト三国やハンガリーなど旧東欧諸国も冷戦崩壊後に加盟し、今や30カ国に膨れ上がった。

 そこへ、現ロシアと国境を接するフィンランド、そしてスウェーデンの北欧2カ国もNATO加盟の姿勢を明らかにしたばかり。

 ロシアはジリジリと窮地に立たされ、孤立感が一層高まる。

 大義名分のない戦争は遅かれ早かれ、どこかで行き詰まる。

 そにしても、ウクライナ国民の諦めない精神の強靭さである。

日本の立ち位置と生き方  
 ひるがえって、日本の生き方と立ち位置である。

 日本は東アジアにあって、中国大陸、朝鮮半島、そしてロシアと国境を接する。中国、ロシア、北朝鮮は核兵器を持つ。価値観、国の体制が違うこの3国との関係をどうするか。

 ことに〝孤立化の道〟をたどってきた北朝鮮の出方は全く読めないだけに、難しい問題だ。

 中国とは1972年(昭和47年)の日中国交正常化以来、50年という節目にある。もっとも、日中間の交流は有史以来ということで長い。

 遣隋使、遣唐使の時代は、中国のいわゆる冊封体制下での交流が続いた。君臣の形での交流だ。

 しかし、飛鳥時代の聖徳太子は書簡のやり取りに際し、『日出づる処の天子から日没する処の天子へ』としたためた。

 対等の立場で交流をする─という太子のスタンスであった。

 先人も隣国との関係において、気を遣いながらも、『凛』とした生き方を取ってきたということ。

日本の役割と使命
 日本には基本的に共生の道を追求してきた歴史がある。

 明治維新(1868)の近代化以来、150余年の間に、日清、日露戦争を経て、第1次、第2次両大戦を経験してきたが、第2次大戦で敗戦国となった。

 ただ、勝ったときの相手国の捕虜の扱いにおいて、日本は基本的に丁寧に対応。日露戦争時、要塞・旅順を陥落した乃木希典将軍は、敗戦国・ロシアのステッセル将軍に丁寧に接した。共に祖国のために戦ったということで、相手の名誉を重んじた。

 まさに乃木将軍の武士道に基づく振る舞いで、これは国際的にも知られた話。しかし、最近は礼節を欠く話が多い。第一、戦争そのものが残酷だということ。

 第2次世界大戦から77年、ウクライナを見ても、戦争はいつ起きるか分からないという現実にどう対応するかという難しい命題。

 日米同盟やEU(欧州連合)、さらには『QUAD』(日米印豪)などの提携を進めながらも、日本独自の生き方が望まれる。日本の基本軸構築のときである。

慶應義塾長の思い
 核戦争、環境破壊、インフォメーション・テクノロジー(IT)の扱い。人類の行く末を左右するこの〝3つの危機〟にどう対応していくか。

 世の中の哲学者、歴史学者、そして科学者を含め、「世の知見には重みがあるし、大学も含めて提言していかねばならないし、その役割があると思います」と語るのは慶應義塾長の伊藤公平さん。

 コロナ危機、ロシアのウクライナ侵略という問題を見ても、容易な解決策は見当たらない。

「コロナにしても、波状攻撃が続いています。中途半端に、ちょっと頑張れば大丈夫みたいなことを言うのは間違っています」と伊藤さんは現状認識を示し、大学の知見を活かしていくときと語る。

 では、大学の役割と使命とは何か?

「わたしは理系で、テクノロジーで物事を新しくするという生き方をしてきました。テクノロジーの発展の中でも正しいことをやっていこうと思っているし、そういう立場であるんです。経済的にもテクノロジーの発展が必要なんですが、その中で大学の役割というのは、これだけ蓄積されているものを必要なときに瞬間的に出していく。これは実学ですよね。それを今やっていると。何のために今まで、自分たちが知識を蓄積してきたかということです」

 科学技術に基づく経済の発展にしても、はたまた外交という問題にしても、国の力だけでは解決しない問題の広がり。ここは民間の知の拠点である大学の役割と使命感の発揮のときでもある。

「未来への義務。生きること、働くことは未来への義務であり、未来に対して、われわれが今何を成すか、次世代に対して義務があるということです」と語る伊藤さんだ。

丸紅・柿木さんの『覚悟』  大手商社の2022年3月期決算は空前の最高益決算となった。

 三菱商事9375億円、三井物産9147億円と1兆円に迫る勢い。伊藤忠商事8202億円と続き、前々期は銅の特損を計上して赤字だった住友商事は黒字転換し、4636億円、丸紅は4243億円となった。

 しかし、各商社首脳は全く浮かれていない。資源高騰下での好決算であり、その反動は必ず来るからだ。

 その辺の各商社の〝心の内〟は本誌・松村聡一郎記者の2022年6月8日号レポートを参照していただきたい。

 2019年春に社長就任し、財務体質の改革など社内改革を進めてきた丸紅社長・柿木真澄さんは「既存ビジネスの深化を図り、新しい事へのチャレンジを常にやっていきたい」と語る。

 そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)を含めて、新しい領域へのチャレンジを続けるのだが、「その努力はまだまだ」と気を引き締め、「覚悟と勇気、そしてそれなりのエネルギーが必要です」と強調。

 ウクライナ問題で今、国と国が分断されがちな状況。そこで見直されるのが本来、国と国、そして人と人をつなぐ商社の機能。それが遺憾なく発揮される日が来ることを願いながら、商社の使命を果たしていきたいという柿木さんである。

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