わさみ・まさる
1945年生まれ。青果小売業を経て運輸の世界に入る。70年に24歳で創業。73年丸和運輸機関を設立。1990年代前半に3PL(サードパーティー・ロジスティクス)事業に参入。2014年4月8日東証二部上場。2015年4月10日東証一部指定
─ 丸和運輸機関は2040年に売上高を1兆円にする目標を掲げています。具体的な方策を聞かせてください。
丸和運輸機関・和佐見勝の「共に成長の輪をつくる!」(第12回)
和佐見 企業経営を行っていく上で大切なことの1つが自力による成長です。その際、企業経営者としては、社員を大切にして幸せにすることは絶対条件です。お陰様でコロナ禍でも2022年3月期業績では売上高1330億円(前年比18・6%増)、営業利益86億4900万円(同7・8%増)、経常利益91億3900万円(同10・6%)と増収増益を達成することができました。ただ、今後も成長するためには、ある程度の企業の規模がないと、企業経営における戦いに負けてしまいます。
創業の時、わたしは社名を「株式会社 丸和運輸機関」と名付けました。この〝機関〟という言葉に込めた思いは、業界の中心であり、心臓部であり、現在で言えば3PL業界のトップ、ナンバーワン企業になるということでした。こういう夢を持って半世紀にわたって企業経営に取り組んできました。14年に東証2部(当時)上場、15年に東証1部(同)上場を実現させました。特に東証2部から東証1部への指定も1年で果たしました。さらに東証1部に上場してからもこの成長は止まることなく、15年から22年の7年間で売上高も3倍近くに成長することができました。これは本当にありがたい話です。
だからこそ、M&Aという一つの手法が求められてくるのではないかと。M&Aを行うことによって、さらなる売上高の拡大、利益の拡大が図れると考えています。
ー では、そのM&Aの要諦とは何ですか。
和佐見 それはあくまでも当社のコアコンピタンス(他社に真似できない核となる能力)、ドメイン(自社特有の事業活動の領域)の強化のためのM&Aであるということです。当社のドメインは3つです。一つ目が「EC物流」、つまりはeコマースです。2つ目が「低温食品物流」、そして3つ目が「医薬・医療物流」になります。
これらを中心にして、将来的な展望に立ってBCP物流も展開していきます。そういうドメインが明確ではっきりしているのです。やはり企業の成長性や収益性をきちんと上げていかないといけませんからね。
そしてもう1つ、M&Aのメリットとして挙げられるのが人手不足対応です。物流業界では慢性的な人手不足に陥っています。しかし、M&Aをすることによって人財を確保することができるという一面があります。おそらくポスト・コロナで最も問題視されるのが人手不足ではないかと予測しています。
M&Aで優秀な人財やプロフェッショナルな人財を獲得することが可能になります。
― これまでM&Aはどのくらい実施してきたのですか。
和佐見 8件です。この全てのM&Aが友好的なM&Aになっています。わたしの方からも相手方に対してよく理解をしてもらうことで良好なM&Aをさせてもらっています。例えば相手方が了解した上でTOBをしていくということです。
その中で日本物流開発を20年にM&Aしました。実は先日この日本物流開発から「丸和さんの方で人財の提供をしていただけませんか?」という相談を受けました。同社からすれば、当社の考え方は十分に分かっています。ですから、一緒に改善改革をしたいと。その意味では、当社のM&AはM&Aをしたら終わりではありません。
M&Aをした後にまずは業績を上げるという点が特徴です。実際に、M&Aした8社全てが順調に業績を伸ばしています。
そもそも丸和運輸機関グループでは「月次決算戦果会議」という会議を毎月行っています。そこでは各社の皆さんが業績などを発表します。その中でお互いに議論をし、改善するものは改善し、評価するものは評価する。あるいは反省するものは反省し、問題があれば改善改革案を知恵を出し合って考える。月次決算戦果会議には12のグループ会社が出席しています。
ー そこでの手応えはどうですか。
和佐見 やはりグループ内で情報の共有や価値の共有ができます。グループ会社が全て出席して議論するわけですから、戦略的な方向性も共有できます。
これを繰り返して年月が経てば、M&Aした会社も本格的な「桃太郎文化」の実践に努めて成果を出し続けるようになります。中でも日本物流開発は非常に積極的で、丸和運輸機関グループに入り、前向きに取り組んでいる会社の一つと言えます。
ー 和佐見さんが考えるM&A策の今後の方向性とは。
和佐見 最終的には海外を見据えています。やはり海外でのM&Aも展開し海外のシェアも高めていかねばなりません。丸和運輸機関グループとして海外シェアの比率を20%くらいにはしたいと考えています。
30年に売上高5000億円を達成するには、せめて1000億円レベルにしたいと。さらにその先の40年に売上高1兆円を達成するには、20%くらいの割合にまで高まれば理想的です。その舞台はアジアです。アジアを中心に展開していくことになると思います。
以下、本誌にて
1945年生まれ。青果小売業を経て運輸の世界に入る。70年に24歳で創業。73年丸和運輸機関を設立。1990年代前半に3PL(サードパーティー・ロジスティクス)事業に参入。2014年4月8日東証二部上場。2015年4月10日東証一部指定
─ 丸和運輸機関は2040年に売上高を1兆円にする目標を掲げています。具体的な方策を聞かせてください。
丸和運輸機関・和佐見勝の「共に成長の輪をつくる!」(第12回)
和佐見 企業経営を行っていく上で大切なことの1つが自力による成長です。その際、企業経営者としては、社員を大切にして幸せにすることは絶対条件です。お陰様でコロナ禍でも2022年3月期業績では売上高1330億円(前年比18・6%増)、営業利益86億4900万円(同7・8%増)、経常利益91億3900万円(同10・6%)と増収増益を達成することができました。ただ、今後も成長するためには、ある程度の企業の規模がないと、企業経営における戦いに負けてしまいます。
創業の時、わたしは社名を「株式会社 丸和運輸機関」と名付けました。この〝機関〟という言葉に込めた思いは、業界の中心であり、心臓部であり、現在で言えば3PL業界のトップ、ナンバーワン企業になるということでした。こういう夢を持って半世紀にわたって企業経営に取り組んできました。14年に東証2部(当時)上場、15年に東証1部(同)上場を実現させました。特に東証2部から東証1部への指定も1年で果たしました。さらに東証1部に上場してからもこの成長は止まることなく、15年から22年の7年間で売上高も3倍近くに成長することができました。これは本当にありがたい話です。
だからこそ、M&Aという一つの手法が求められてくるのではないかと。M&Aを行うことによって、さらなる売上高の拡大、利益の拡大が図れると考えています。
ー では、そのM&Aの要諦とは何ですか。
和佐見 それはあくまでも当社のコアコンピタンス(他社に真似できない核となる能力)、ドメイン(自社特有の事業活動の領域)の強化のためのM&Aであるということです。当社のドメインは3つです。一つ目が「EC物流」、つまりはeコマースです。2つ目が「低温食品物流」、そして3つ目が「医薬・医療物流」になります。
これらを中心にして、将来的な展望に立ってBCP物流も展開していきます。そういうドメインが明確ではっきりしているのです。やはり企業の成長性や収益性をきちんと上げていかないといけませんからね。
そしてもう1つ、M&Aのメリットとして挙げられるのが人手不足対応です。物流業界では慢性的な人手不足に陥っています。しかし、M&Aをすることによって人財を確保することができるという一面があります。おそらくポスト・コロナで最も問題視されるのが人手不足ではないかと予測しています。
M&Aで優秀な人財やプロフェッショナルな人財を獲得することが可能になります。
― これまでM&Aはどのくらい実施してきたのですか。
和佐見 8件です。この全てのM&Aが友好的なM&Aになっています。わたしの方からも相手方に対してよく理解をしてもらうことで良好なM&Aをさせてもらっています。例えば相手方が了解した上でTOBをしていくということです。
その中で日本物流開発を20年にM&Aしました。実は先日この日本物流開発から「丸和さんの方で人財の提供をしていただけませんか?」という相談を受けました。同社からすれば、当社の考え方は十分に分かっています。ですから、一緒に改善改革をしたいと。その意味では、当社のM&AはM&Aをしたら終わりではありません。
M&Aをした後にまずは業績を上げるという点が特徴です。実際に、M&Aした8社全てが順調に業績を伸ばしています。
そもそも丸和運輸機関グループでは「月次決算戦果会議」という会議を毎月行っています。そこでは各社の皆さんが業績などを発表します。その中でお互いに議論をし、改善するものは改善し、評価するものは評価する。あるいは反省するものは反省し、問題があれば改善改革案を知恵を出し合って考える。月次決算戦果会議には12のグループ会社が出席しています。
ー そこでの手応えはどうですか。
和佐見 やはりグループ内で情報の共有や価値の共有ができます。グループ会社が全て出席して議論するわけですから、戦略的な方向性も共有できます。
これを繰り返して年月が経てば、M&Aした会社も本格的な「桃太郎文化」の実践に努めて成果を出し続けるようになります。中でも日本物流開発は非常に積極的で、丸和運輸機関グループに入り、前向きに取り組んでいる会社の一つと言えます。
ー 和佐見さんが考えるM&A策の今後の方向性とは。
和佐見 最終的には海外を見据えています。やはり海外でのM&Aも展開し海外のシェアも高めていかねばなりません。丸和運輸機関グループとして海外シェアの比率を20%くらいにはしたいと考えています。
30年に売上高5000億円を達成するには、せめて1000億円レベルにしたいと。さらにその先の40年に売上高1兆円を達成するには、20%くらいの割合にまで高まれば理想的です。その舞台はアジアです。アジアを中心に展開していくことになると思います。
以下、本誌にて