日本が米国に対して行っている協力は十分なのか
―― 日本は我が方の安全保障戦略をどう考えていけばいいのでしょうか。
森本 有事の際、インド・太平洋において、台湾に協力してくれる国は米国と日本しかありません。韓国は北朝鮮の対応で無理ですし、中国やインドも駄目。ASEAN(東南アジア諸国連合)は自国のことで精いっぱいで、豪州・カナダ・欧州は遠すぎる。結局、有事が起これば、日本と米国で何とかしないといけません。そういう中で、日本が米国に対して行っている協力は十分なのかと疑問に思います。
―― 台湾有事が起きた場合、日本は何も対応できませんでしたでは済まされない。
森本 日本の軍事費はNATO(北大西洋条約機構)諸国のGDP比2%以上も念頭に、我が国としても5年以内に防衛力を抜本的に強化するため、必要な予算水準の達成を目指すと言っています。
しかし、5年では遅いばかりか、党内には、この厳しい財政状況の中でいわゆる社会保障だとか、新型コロナ対策とか医療福祉の改善をやりながら、限られた予算の中で防衛費だけ突出させるわけにいかないという反対意見も根強くあるんです。
ですが、インド・太平洋地域で米国の防衛力にはまだまだ足りない部分がある。例えば、日本には今、空中給油機が7機ありますが、この空中給油機を相当数持たないと、戦闘機の能力を向上できない。それから攻撃をされたときの戦闘機だとか、艦艇の防護能力を補うことも重要だから、お金がもっと必要です。ここはもっと真剣に議論すべきです。
日本の食料安全保障はどうなる? 答える人 キヤノングローバル戦略研究所・研究主幹 山下一仁
―― 本質をついた議論ですね。それと、大前提として、自らの国は自ら守るという意味での役割分担も大事だと思うんですが。
森本 仰る通りです。自分たちでできる部分は何かというと、ミサイル防衛と打撃力です。
ミサイル防衛とは、飛んでくるミサイルを自分で払うことです。これは米国に助けられるのではなく、自らやらないといけない問題です。もう一つの打撃力、反撃能力のことでは、例えば、相手国の巡航ミサイルの射程距離が1千㌔あるのに、こちら側の射程が300㌔しかなければ、打たれっ放しなんです。だから、こちらが持つ空対艦あるいは空対地のミサイル、巡航ミサイルの射程の延長をするために新しい巡航ミサイルやセンサーの開発をしないといけない。これは自らがすべき努力です。
―― これは従来の基本観をガラっと変えないといけないということですね。
森本 かなり国家の防衛の概念を変えないといけないことは確かです。憲法改正というよりも、まずは、今の憲法の枠の中で必要な防衛力を持つことは十分できます。
政府は年末に向けて外交・防衛政策の長期指針「国家安全保障戦略」の改定を進めています。今まで以上により緊迫した北東アジア情勢の中で、特に日本は北朝鮮と中国とロシアの脅威に直面している、ただ一つの国です。これら三つの国に隣り合っている国家の防衛をどうするべきかについて、より高度な判断が問われているということです。
識者はどう見る? 元内閣官房副長官補・兼原信克《その3》
―― 日本は我が方の安全保障戦略をどう考えていけばいいのでしょうか。
森本 有事の際、インド・太平洋において、台湾に協力してくれる国は米国と日本しかありません。韓国は北朝鮮の対応で無理ですし、中国やインドも駄目。ASEAN(東南アジア諸国連合)は自国のことで精いっぱいで、豪州・カナダ・欧州は遠すぎる。結局、有事が起これば、日本と米国で何とかしないといけません。そういう中で、日本が米国に対して行っている協力は十分なのかと疑問に思います。
―― 台湾有事が起きた場合、日本は何も対応できませんでしたでは済まされない。
森本 日本の軍事費はNATO(北大西洋条約機構)諸国のGDP比2%以上も念頭に、我が国としても5年以内に防衛力を抜本的に強化するため、必要な予算水準の達成を目指すと言っています。
しかし、5年では遅いばかりか、党内には、この厳しい財政状況の中でいわゆる社会保障だとか、新型コロナ対策とか医療福祉の改善をやりながら、限られた予算の中で防衛費だけ突出させるわけにいかないという反対意見も根強くあるんです。
ですが、インド・太平洋地域で米国の防衛力にはまだまだ足りない部分がある。例えば、日本には今、空中給油機が7機ありますが、この空中給油機を相当数持たないと、戦闘機の能力を向上できない。それから攻撃をされたときの戦闘機だとか、艦艇の防護能力を補うことも重要だから、お金がもっと必要です。ここはもっと真剣に議論すべきです。
日本の食料安全保障はどうなる? 答える人 キヤノングローバル戦略研究所・研究主幹 山下一仁
―― 本質をついた議論ですね。それと、大前提として、自らの国は自ら守るという意味での役割分担も大事だと思うんですが。
森本 仰る通りです。自分たちでできる部分は何かというと、ミサイル防衛と打撃力です。
ミサイル防衛とは、飛んでくるミサイルを自分で払うことです。これは米国に助けられるのではなく、自らやらないといけない問題です。もう一つの打撃力、反撃能力のことでは、例えば、相手国の巡航ミサイルの射程距離が1千㌔あるのに、こちら側の射程が300㌔しかなければ、打たれっ放しなんです。だから、こちらが持つ空対艦あるいは空対地のミサイル、巡航ミサイルの射程の延長をするために新しい巡航ミサイルやセンサーの開発をしないといけない。これは自らがすべき努力です。
―― これは従来の基本観をガラっと変えないといけないということですね。
森本 かなり国家の防衛の概念を変えないといけないことは確かです。憲法改正というよりも、まずは、今の憲法の枠の中で必要な防衛力を持つことは十分できます。
政府は年末に向けて外交・防衛政策の長期指針「国家安全保障戦略」の改定を進めています。今まで以上により緊迫した北東アジア情勢の中で、特に日本は北朝鮮と中国とロシアの脅威に直面している、ただ一つの国です。これら三つの国に隣り合っている国家の防衛をどうするべきかについて、より高度な判断が問われているということです。
識者はどう見る? 元内閣官房副長官補・兼原信克《その3》