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『丸紅』社長・柿木真澄が語る「変革期の商社の役割」

財界オンライン 2022年6月8日 18時0分

商社と経済安全保障の関係

 ―― 柿木さんが社長に就任してから3年が経ちました。まずはコロナ禍の2年半を含めた3年間をどう総括しますか。

 柿木 わたしが社長になった初年度の2019年度に当社は大きな赤字を出しました。

 これもコロナのおかげというとおかしいですが、コロナが来て、これから世の中がどうなるか分からない、先が見通せない不安もあったので、そういう時に不安を抱えたまま霧の中に突っ込んでいくというのは、本当に怖いですよね。

 こういう時に社員が頑張っていくには、過去からの重い荷物を背負ったままでは大変だなと思いましたので、思い切って事業計画を見直して、大きな減損損失を出しました。

 ―― 一気に膿を出そうと。

 柿木 ええ。周囲からは初年度にそんなことをする必要はないとか、いろいろなことを言われましたけど、先が見えない時代だからこそ、いつでも素早く動けるように、とにかく重たい荷物を全部下ろして身軽になったというのは、今から考えたら、コロナ禍で一番良かったことかもしれません。

 ただ、コロナもようやく落ち着いてきたかなと思った頃に、今回のロシアによるウクライナ侵攻が起こったので、世の中本当にいろいろなことが起こるなと。その度に身構えて、じっと対策を考えていたら、また次の問題が出てくると思いますので、とにかく走り出して、走りながら考えていくしかないのだろうと思っています。

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危機に備えて、新しいビジネスをつくっていこう

 ―― 資源高騰の影響もあって、商社各社は軒並み過去最高益を更新するなど、業績が好調です。足元の現状をどのように受け止めていますか。

なぜ、『三菱商事』はビル・ゲイツ氏の”脱炭素ファンド”に参画するのか?

 柿木 先ほど言いましたように、一年目は超マイナスからスタートして、20年度にV字回復できて、21年度は最高益になりました。もちろん市況が良くて、資源価格の高騰という追い風があったし、そういう恩恵を受けての数字であったことは間違いありません。

 しかし、そういう中にいると、こういう状況がだんだん当然のごとく感じてしまって、要は、今まで通りにやっていると、ああいう良い結果が自然と出てくるんだなと。新しいことをやらなくても、今まで通りのことをやっていればいいんじゃないかと思いがちなんですね。

 でも、そうではいけない。われわれは今年度からの新たな3カ年の中期経営戦略『GC2024』を策定しました。この背景にあるスタンスというのは、とにかく世の中は変化していて、近い将来、今、商社が携わっているビジネスのいくつかは、本当に消滅していくだろうという想定からスタートしてできている計画なんですね。

 そうした観点で考えますと、最高益という数字が出たからと言って、新しい挑戦を疎かにしてはいけない。もちろん、市況がいいからといって、必ずしも追い風に乗れないこともあるわけで、それが当社だけ取り残されたりせず、いい数字が出たことの努力は認めます。ただ、決算は良かったけど、それはそれとして新しいことにも挑戦しようということは社員に何度も言っています。

続きは本誌で

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