Infoseek 楽天

【ファンド傘下で成長する『弥生』】「業務ソフトメーカー」から顧客のあらゆる悩みに対応できる「事業コンシェルジュ」へーー

財界オンライン 2022年6月21日 18時0分

大株主との対話はどうあるべきかーー。この問題に対峙しながら成長を続けてきたのが、会計ソフト国内最大手の弥生。会計ソフト『弥生』は、パッケージでもクラウドでも国内シェアナンバー1。アドバンテッジパートナーズ、MBKパートナーズ、KKRなど国内外の投資ファンドから、ライブドア、オリックスなど事業会社まで、大株主が次々と変わる中、着実に利益を出すビジネスモデルを構築してきた。2021年12月、株主がオリックスからKKRとなり、KKR傘下で更なる成長を目指す。その中身とはーー。



「株主が変わり、成長に向けての選択肢が拡大。国もデジタルへの対応を強化している環境は、当社にとって大きなチャンス」
岡本 浩一郎 弥生社長


起業・開業支援
事業承継サービスまで

 1987年に『弥生』シリーズを販売して以来、主に小規模事業者向けの会計ソフトを提供し、現在、デスクトップ(パッケージ)でもクラウドでも、国内シェアナンバー1の会計ソフトになっています。

 現在の事業内容は「業務ソフトメーカー」ですが、今後は、お客様の様々な困り事や相談事に対応できる「事業コンシェルジュ」を目指し、提供するサービスの幅を広げています。

 事業コンシェルジュを目指すうえで、コロナ禍での取り組みを1つご紹介します。

 持続化給付金が動き出す際、政府から「事業者に持続化給付金の告知をしてほしい」という依頼をいただき、お客様に対しての情報発信を行いました。ただ、お客様が困難な状況にある中でもっとできることはないかと考え、われわれのカスタマーセンターにお電話いただけたら、「持続化給付金はどういうもので、受給するためにどんな資料が必要なのか」など、ワンストップで問い合わせに対応できるようにしました。われわれ自身もコロナ禍での対応でしたが、在宅での問い合わせ体制を整備するなどして、お客様の事業継続の支援をしてきました。

 昨今は、補助金なども含めた資金調達手段や起業・開業の際に必要な手続きの問い合わせにも対応しています。

 また、従来型のM&Aサービスでは採算が合わないような〝街の定食屋さん〟のような小規模事業者の事業承継も手掛けていきたいと考えています。お客様の事業が継続すれば、われわれの業務ソフトの提供を通じて売上も利益も確保できるので、起業や開業、事業承継のお手伝いで華々しい売上を上げなくても良いと考えています。

 当社はこれまで、アドバンテッジパートナーズ、MBKパートナーズ、KKRなど国内外の投資ファンドの他、国内大手企業が株主となってきました。現在はKKR傘下にありますが、グローバルな視点を持つファンドが株主になることで、われわれ自身の視野も広がると感じています。

▶「駅」がオフィスやクリニックにーーJR東が進める「暮らしの拠点」づくり

 おかげさまで、売上げはコンスタントに拡大し、利益率も高い状況にあり、株主のKKR様からは、利益は多少抑えても、まず成長を目指していこう」と言われています。

 中長期的な成果を出すためにも、株主と目指すべきものを共有することが必要です。そのためにも、しっかり議論をすることが重要だと感じています。

 足元は自立的な成長ステージに入っているので、今のわたしの役目は、短くて2~3年、長ければ5~10年のスパンで新たな市場を創ることです。

 来年10月からインボイス制度が始まります。今後も年末調整など、今まで紙で行っていた手続きを国や他社を巻き込みながら、デジタルを基本にした仕組みにしていこうと議論を進めています。

 日本企業の業務効率化、また起業・開業の支援によって、国内市場活性化のお役に立ちたいと思っています。


おかもと・こういちろう
1969年3月神奈川県生まれ。91年東京大学工学部卒業、カリフォルニア大学ロサンゼルス校経営大学院修了。野村総合研究所、ボストンコンサルティンググループなどを経て、2008年4月弥生社長に就任。

この記事の関連ニュース