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【株価はどう動く?】米FRBは「前門の虎、後門の狼」にどう対応するのか?

財界オンライン 2022年9月9日 7時0分

「逆金融相場」が終わり、調整局面へ
 前回指摘しましたが、2021年11月から始まったFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策の転換、利上げで米ナスダック市場がまず下落しました。その後、ニューヨークダウ、S&Pも全て下落トレンドに入ったのです。それが6月いっぱいくらいで、当面の利上げ、金融引き締めを織り込んだ形になって底入れしました。

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 7月には下げ過ぎの反動高があり、ナスダックは6月末比で12%上昇、アマゾンやアップル、テスラなどは大幅に値を戻したのです。

 この状態を、相場の世界では「逆金融相場」と呼びます。通常の金融相場は金融緩和の中で上昇する状態を言いますが、金融引き締めにもかかわらず上昇しているのが逆金融相場です。引き締めが始まった地点で株が相当下がって織り込んで、中間反騰があったという状況です。

 この逆金融相場では半値戻しが目処になりますが、ナスダック、ニューヨークダウ、日経平均は達成し、調整局面入りしています。

 9月20日、21日にはFOMC(米連邦公開市場委員会)が行われますが、ここでも再び0.75%の利上げが予想されています。このタイミングまでに企業業績の悪化で株が売られる可能性があります。

 ナスダックは8月16日に1万3181ポイントで戻り高値を付けました。昨年11月22日の1万6212ポイントから、今年6月16日の1万565ポイントまでの下げ幅、5647ポイントの半値戻しは1万3388ポイントです。8月16日の高値はそれに近いですが、超えることはできませんでした。

 ニューヨークダウは今年の高値が1月5日の3万6952ドル、安値が6月17日の2万9653ドルで下げ幅が7299ドルです。半値戻しは3万3300ドルですが、8月16日の戻り高値は3万4281ドルと、半値戻しをやや上回りました。

 8月末の米国株の下げ材料は8月25日からの「ジャクソンホール会議」(国際経済シンポジウム)でした。この会議では毎回、FRB議長が声明を発表しますが、ここでパウエル議長が米国のインフレが高止まりしている状況を受けて、9月FOMCでのさらなる利上げ、金融引き締めを示唆するのではないかということを嫌気して、株価が下落したわけです。

 ナスダック、ニューヨークダウは共に9月16日に戻り高値を付けて、ここで当面の逆金融相場はピークアウトしたのではないかと見ています。

 日経平均株価はどうか。昨年9月14日の3万714円で二番天井を付けて下落調整局面が続いてきました。今年3月9日の2万4681円という安値を付けて、これが今のところ安値になっていますが、二番天井から今年の安値までの下げ幅が6114円です。

 この半値戻しはおおよそ2万8000円になりますが、日経平均の戻り高値は8月17日の2万9222円と、半値戻しを大きく超えてきました。日経平均がニューヨークダウ、ナスダックよりも強い動きです。

 この要因は米国が金融引き締めをする一方、日本は金融緩和を継続していることです。年末にかけて、米国の金融引き締めが続くようであれば、株価は下落局面となります。それに連動して日本株も下落するかもしれませんが、次第に底堅い動きになる展開が予想されます。

 米国の利上げは9月にも打ち止めになるという観測が出ています。その理由は、米国の住宅着工件数などの指標を見ても、景気悪化が明らかになっているからです。逆金融相場の後には「逆業績相場」が出てきます。

 業績相場は業績がよくなることを見越して株価が上昇しますが、今年の9月、10月以降は金融引き締めによって米国の企業業績が悪化する見通しが出てきますから、ここで株が売られることになります。

 日本株は、その中でも比較的しっかりした動きになることが予想されます。米国の金融引き締めは、為替の円安につながります。今後、米国の金融政策の動向次第で1ドル=140円を付ける可能性も出てきます。ただ、円安は日本経済にとってフォローです。日本のデフレ脱却の一つのきっかけになることも考えられます。物価目標2%も達成し、日本はデフレから、適度なインフレに向かうことを織り込んで、株価が反転上昇してくると見ています。

 年末に向かって、日経平均株価が昨年2月、9月の二番天井に接近するか、それを奪回するかといった展開が予想されます。もし、岸田政権が「資産所得倍増計画」で具体的な政策を打ち出したり、景気対策をしっかりやってくれば3万円の大台を突破し、3万2000円前後を付ける可能性も出てきます。

 個人投資家にとって、今後の一番の注目点は米FRB、米国経済が「前門の虎、後門の狼」に直面していることです。「前門の虎」は「インフレ率」です。この虎を抑えるために金融引き締め、利上げをしているわけです。9月の利上げで鎮まるかどうかですが、米国の利上げの理由は景気が良すぎるからでもあります。この過熱を冷ます作業をしているわけです。

 この熱を冷ますとどうなるかというと「後門の狼」が出てきます。それは何かというと「不況」です。虎退治をすると不況の狼が出てくる。このカジ取りを、FRBのパウエル議長がこなせるかどうか。一歩間違えると虎と狼に一気に襲われることになりかねません。

 虎退治で金利がピークアウトすると、年末にかけて日米の株価は上昇してきます。23年には虎退治の後の狼が出てくるわけですが、この不況の深さがどの程度になるか。これが今後の株価の動きを読む上でのポイントになります。

 日本では来年4月に日銀総裁が交代しますが、ここで新しい金融政策が打ち出されて、いよいよ日本も緩和から引き締めに転換することになるかもしれません。そうなると一層、株式市場は先行き不透明、波乱の展開になりますから、個人投資家は今から波高き相場に備えておく必要があります。

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