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『クラウドファンディング』の先駆けが手掛ける次の一手は? 答える人 READYFOR CEO・米良はるか

財界オンライン 2022年10月11日 18時0分

社会的な課題解決に向けどうお金を流していくか
 ─ 新型コロナウイルス感染症が拡大して早2年9カ月近くが経ちました。米良さんがこのコロナ禍で感じたことから聞かせてくれませんか。

 米良 コロナ禍で様々なことをやらせていただいたんですが、その取り組みの一つとして、社会的な課題解決をやられている方、コロナで大変苦しんでらっしゃるような皆さまに対して、サポートするような基金の運営を行いました。ほかにも、休眠預金として、銀行に10年以上眠ってしまっているお金を、社会的な課題に対して活用する取り組みも実施しました。

 ─ 医療従事者やNPO(非営利活動法人)をサポートするための基金ですね。

 米良 ええ。休眠預金の活用に関しては、法律で決まっておりまして、それの資金分配団体という形で、われわれはお金を分配と伴走支援ということをやらせていただいています。これまで休眠預金の資金分配団体として10億円弱をお預かりし、NPOなどに分配しています。ですから、お金を集めるクラウドファンディングの機能と合わせて、お金を配っていくというような機能が備わってきたなと思います。

 そして、昨年の夏に始めた遺贈寄付の事業についても、おかげさまで約500件のお問い合せが来ています。日本には寄付文化が無いとよく言われるのですが、どうやっても人は天国まで資産を持っていくことはできません。おひとりさまであったり、相続先のいない方が亡くなった時に、全資産が国庫に入ってしまうのであれば、生前に遺贈寄付先として社会的なところを決めて、そこに寄付したいという方も増えています。

 ─ そうした支援の輪が社会に広がってきていることは嬉しいですね。

 米良 はい。現在は信託銀行さんやメガバンクさんとも一緒に連携させていただいておりまして、遺贈に関するご相談があった場合にわれわれをご紹介いただき、寄付先の選定などのお手伝いをさせてもらっているところです。

 これまで資産家の皆さんのご相談を受けてきた中で、財団をつくるとか、寄付に回していくという話になるんですが、最近わたしが思っているのが、意外と日本という社会において、資産家の皆さんのライフプランをお手伝いする機能が無かったということなんです。

 海外ですと、ファミリーオフィスのような機能であったり、そういう方々がご家族や資産を持っている方々の資産計画やプランニングを考えてくれて、その中で寄付という選択肢も出てきます。しかし、日本ではプライベートエクイティのような形で資産運用を行う会社はあっても、トータルでライフプランを考えてくれる機能は無かったんだと実感しているところです。

 ─ 日本にはトータルでサポートする機能が無かった。それをREADYFORがやるということですね。

 米良 まだまだ当社がこれから先、どこに着地するのか分からないんですが、そういうお手伝いができればいいなと考えています。ですから、今はプライベートエクイティだったり、証券会社だったり、あるいは士業の方々と連携して、資産を持っていらっしゃる方々の資産を、より社会の課題解決に有効的に流していけるような仕組みをつくっていきたい、と考えているところです。

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日本にはお金の使い方を提案できる機能が無い
 ─ なるほど。お金を増やすだけでなく、いかにお金を活用していくかが重要だと。

 米良 世の中にはいろいろな方がいらっしゃいます。わたしがお会いした方で、お父さんから譲り受けた会社を継続するのではなく、売却された方がいらっしゃいました。

 そこで大きなお金が入ってきたんですが、それを自分の人生の中で全部使うとか、お子様に全額遺すことは果たしていいのだろうかと。お金があれば幸せというわけではないだろう、と考える方って結構多いです。

 もちろん、ご家族の方に何も遺さないというわけではないでしょうけど、十分な額は遺しつつも、それ以外のお金については、例えば、社会的な問題で経済的に厳しい方であったり、孤立・孤独に悩んでいる方であったり、そういう方々の支援につながるようなところに、お金を流したいというお客様は増えていますね。

 ─ そうした相談が増えているということですね。

 米良 日本ではどうしてもお金を増やしましょうというところに主眼が置かれていて、お金があればハッピーになると。

 でも、単にお金が増えれば人生ハッピーかと言ったら、そんなに単純なものではない。わたしはそのお金をどのように活用し、家族がハッピーになるとか、社会がハッピーになるかということを、もっと考えられればいいなと思っています。

 でも、今の日本にはそういうことを相談できる機能が無くて、寄付のような形のお金の使い方に興味がある人はいても、プロフェッショナルな提案ができる方はいませんでした。ですから、わたしたちがそうした存在になれればいいなと。

 ─ 先日、京セラ創業者の稲盛和夫さんが亡くなりました。稲盛さんは私財を投げ打って財団をつくったりしてきたんですが、寄付したいという気持ちはあっても、稲盛さんのように自分で財団をつくれる人ばかりではないということですね。

 米良 本当にそう思います。稲盛さんのようにアントレプレナーシップ(起業家精神)があって、自分で課題を見つけて、自分たちで手掛けている事業でない分野に対しても、同じようにパッションをもって挑まれる方は少ないと思います。

 例えば、アメリカでは個人寄付の額が35兆円と言われているんですが、日本ではだいたい5000億円から1兆円くらいです。

 ─ それくらいアメリカには寄付の文化が根付いているんですね。

 米良 やはり、それだけの規模があると、例えば、プライベートエクイティやファミリーオフィスのような機能をもった人たちの中で、お客様の寄付のお金をどういう風に回していけばいいのかを考えてくれる人たちがいます。

 ある意味で、資産運用の一つの観点として寄付ということが入っているので、お客様自身が見つけ出さなくても、周りの人たちがコーディネートしてくれる。それでお客様自身がだんだん知識を得るようになり、お金が回っていくんです。

 しかし、繰り返しになりますが、日本ではそういうことを教えてくれる人たちがいない。ですから、われわれは金融機関さんとも連携しながら、一緒になって寄付先のついてのご提案をさせていただいているということです。

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