Infoseek 楽天

”熱中”がキーワード 『DeNA』が今、ヘルスケアに注力する理由とは何か?

財界オンライン 2022年10月25日 18時0分

データを活用して疾病啓発をやろう!
「健康習慣は継続することが大事だけど、なかなか続けることが難しい。しかし、通常のアプリは使い続けて3カ月で継続率は10%くらいに落ちるものなのに、当社のアプリの利用継続率は6割ぐらいある。当社がゲームで培ってきた楽しみのノウハウを医療などの社会課題の領域に転用することができれば、うまくいくのではないか」

 こう語るのは、ディー・エヌ・エー(DeNA)子会社のDeSCヘルスケア データユーティライゼーション部部長の幡鎌暁子氏。

 ゲームやプロ野球など、エンターテインメント企業としてのイメージが定着しているDeNA。だが、近年は〝エンターテインメントの追求と社会課題の解決〟の両軸に全力で取り組むと宣言。社会課題解決の一環として、ヘルスケア分野の強化に乗り出している。

 同社がヘルスケア分野に参入したのは2014年から。

 この頃、創業者(現会長)・南場智子氏の夫が闘病生活をしていた。ここで南場氏が考えたのが、一度病気になってしまうと、そこから治すのは非常に難しい。だから、病気になる前に健康行動を促進したり、ケアをしたりして健康寿命を延ばしていくことが大切なのではないかということ。そうした自らの体験を踏まえて、同社はヘルスケア事業への参画を決めた。

 その後、一般消費者向け遺伝子検査サービス『MYCODE』を皮切りに、ヘルスケアエンターテインメントアプリ『kencom』、高齢者運転免許更新時の認知機能検査『MENKYO』などに事業を拡大。

 例えば、『kencom』は、その日ユーザーが歩いた歩数や健康診断の結果などの健康情報をスマートフォンで確認できる。健診結果をもとにリスクの高い疾患や健康状態の変化を見ることができ、楽しみながら健康になろうという仕組みだ。

「アプリと言うと、高齢者には無理なんじゃないの? と思われるかもしれないが、ユーザーのボリュームゾーンは60~70代。もともとゲームには何となく日常生活に取り入れて習慣化してしまう技術というかノウハウのようなものがあるので、ゲーム事業で培ったものが、うまくヘルスケア分野にも転用できていると思う」(幡鎌氏)

『アバター』活用で何が変わるの? ローソンが新たな雇用形態を模索


いかに楽しみながら生活者の行動変容を促していけるか
 DeNAが目指す世界は、健康寿命の延伸や医療費削減への貢献。その中心となるのが「ゲーミフィケーション(ゲーム化)」という発想である。

 ゲーミフィケーションとは、勉強や仕事は嫌ですぐに飽きてしまうのに、ゲームになると何時間でも画面に向かっていられる〝熱中状態〟を再現しようというもので、ユーザーのライフスタイルに合わせて、より楽しく健康寿命を延ばしていくサービスを提供しようとしている。

 言うまでもなく、日本は世界で一番高齢化が進んでいる国である。65歳以上の高齢者は約30%、2040年には85歳以上の人口が1千万人を突破し、超高齢社会となることが予想されている。高齢化に伴い、医療費や介護費用が増加していくことは避けられないが、それを何とかゲーミフィケーションの発想で解決できないかということ。

 もっとも、DeNAの2022年3月期業績は、売上高1308億円、営業利益114億円。このうち大半を占めるのが主力のゲームやライブストリーミング事業。ヘルスケア事業の売上高は30億円、6億円の営業赤字だ。今は早期の黒字転換を目指しており、協業先のデータホライゾンやメディカル・データ・ビジョン(MDV)との連係により、ビッグデータなどの成長戦略を加速したい考え。

「医療ビッグデータでナンバーワンになると掲げているが、あくまでもデータは手段。目的は生活者の行動変容なので、サービサーとして何ができるかが一番重要。アプリを活用して、いかに楽しみながら生活者の行動変容を促していけるか。そして、行動変容を通じた健康寿命の延伸に貢献したい」(幡鎌氏)

 ゲーム会社がいかに日本人の健康維持に貢献していくか。既存の医療業界とは違い、ゲーム会社らしく〝楽しみながら〟というキーワードで健康増進を図ろうとするDeNAである。

【清水康裕・ダブルスタンダード社長】ビッグデータ時代に求められるデータクレンジング技術とは?

この記事の関連ニュース