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【農林水産省】新経済圏構想「IPEF」のルール作りへ

財界オンライン 2022年11月2日 15時0分

米国主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」のルール作りに関する交渉入りが正式に決まった。農産品や工業品の関税撤廃には踏み込まず、農業分野についてはロシアのウクライナ侵攻で揺らぐ食料安全保障の強化を図る方針だ。

 IPEFは5月に発足した。日米やインド、オーストラリア、シンガポール、インドネシアなど計14カ国が参加している。米国が再びインド太平洋地域への関与を強めるとともに、ルール作りをリードすることにより、急速に影響力を高める中国への対抗を目指す。

 9月上旬に米ロサンゼルスで開かれたIPEFの閣僚級会合では、「貿易」「供給網(サプライチェーン)」「クリーン経済」「公正な経済」の4分野ごとに閣僚声明を採択した。インドは貿易を除く3分野に参加し、残る13カ国は4分野の交渉に加わる。

 農業交渉は「貿易」の分野で行われる。閣僚声明では、食料安保の強化に加え、農産品の輸出入の制限は世界貿易機関(WTO)ルールに沿った形で行うことの重要性を確認した。

「ほっとしている。関税削減の要素が入っていない」。農林族の重鎮、野村哲郎農林水産相はIPEFについてこう本音を漏らした。

 従来の通商交渉では、交渉相手から農産品の市場開放を迫られ、農林族や農家が煮え湯を飲まされる歴史を繰り返してきた。米国が関税撤廃に後ろ向きで、今回はこうした事態が回避できそうなため、安堵したものとみられる。

 IPEFを巡っては、温室効果ガスの削減や汚職の撲滅など守るべきルールが多い半面、米国市場に物品を売り込みたい東南アジアなど新興国にとっては利点が少ないとの指摘がある。日米などが中心となってメリットづくりを進めつつ、参加国の結束を保ちたい考え。

 ただ、提示されたメリットに東南アジアが難色を示した場合、関税協議を求める意見が出る可能性も否定できない。そのとき日米などは難しい判断を迫られそうだ。

米中の覇権争いが続く中、「IPEF」が13カ国で発足

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