ウクライナ危機は 長期化するという前提で…
─ コロナ禍が長期化し、ロシアによるウクライナ侵攻も9カ月が経とうとしています。こうした状況を木南さんはどのように受け止めていますか。
木南 当初、コロナ禍で一番心配したのはサプライチェーン(供給網)でした。ヨーロッパや中国など、アジア各国からモノは来るのか、心配が尽きませんでした。また、アジアを中心とする再生可能エネルギーの現場に出向くことができませんでしたので、しばらくは非常に苦労しました。
しかし、コロナもすでに3年近くになりますので、今後、仮にコロナの第8波が来たとしても何とかなりそうだという対策と言いますか、レジリエンス(強靭性・柔軟性)というのは試行錯誤の末に大分整ってきたと思います。
やはり、一番懸念しているのはウクライナ問題ですよね。引き続き天然ガスの高騰が世界経済に重くのしかかり、特に、日本のように資源を海外からの輸入に頼っている国は、非常に大きな宿題が残っていると。
当初は戦争も早めに収束する可能性があると言われていましたけど、いまは長期化するという前提でエネルギー業界は動いていると思います。
─ 本当にウクライナ危機によって、天然ガスや原油などのエネルギー価格が軒並み上昇しているんですが、再エネの位置づけはウクライナ危機によって変わったのか、変わっていないのか。
木南 ウクライナ危機を受けても、ますます再エネの使命は重くなっているのではないでしょうか。もちろん、2月のウクライナ侵攻以降、当面のエネルギー確保のため、各国がしばらくは石炭を使わなければならないとか、原子力を増やそうという動きがあります。
ただ、やはり、どの国も基本的には再エネをエネルギー戦略のど真ん中に据えて、これを何年で倍増するとか、とてもアグレッシブな政策目標を打ち出しています。日本も東日本大震災以降は急激に再エネ比率を増やしてきて、現在は20%を超えました。
しかし、英国やドイツが40%くらいになっていることを考えたら、日本はまだ遅れていると思いますので、これから挽回していく必要があると思います。
─ 欧州とは倍近い開きがあるんですね。
木南 ええ。特にドイツは新政権が10年以内に自然エネルギーの割合を倍増させると言っています。倍増ということは、すでに40%ありますから、80%にすると。これまでの拡大スピードを3倍にして、2030年に21年比で太陽光を約3倍、陸上風力を約2倍、洋上風力を約4倍にすると言っています。
たった9年でここまで増やすというのは、非常に野心的な目標ですし、ロシアの影響もあって、非常に危機感が強いのだと思います。
【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅
今年4月に「GX本部」を設置
─ では、そうした状況を踏まえた上で、これからのレノバの戦略を伺えますか。
木南 基本的には世界的な脱炭素の後押しもあり、当社は順調に発電所の設備容量を増やしています。今後は国内の再エネ発電所の積み上げとアジアの展開が重要な2本柱になります。
そして、今年4月に「GX本部」という部署を設置しまして、この2本柱を加速させるための隣接領域の新規事業の強化を担っています。
例えば、再エネのうち、太陽光や風力などの変動電源は、どうしても気象条件や時間帯によって発電量が左右されてしまいますので、導入の拡大に伴い、電力供給を安定化させるための蓄電池の強化が重要です。
電力の脱炭素化ではカバーできない産業領域に対しては、温室効果ガスの排出量が少ないグリーン水素/アンモニア、そして、バイオマス由来燃料の開発などに取り組んでいきたいと考えています。
─ 国内外での再エネ開発と、その周辺事業を強化していくわけですね。
木南 はい。再エネの電源としては、引き続き太陽光を始め、風力や水力、それから地熱などの新規の積み上げが主軸になってくると思います。
ただ、稼ぎ方というか、収益モデルは転換期にあります。従来はFIT(固定価格買取)制度によって太陽光などの開発が進んできました。しかし、最近では、FITによる売電価格の段階的な低下やFIPへの移行、大規模な開発ができる土地の減少などの一方で、民間の再エネ需要が旺盛になり、市場環境はかなり変化してきました。
その一例が、PPA(Power Purchase Agreement)という電力売買契約でして、需要家の個別企業に電力を直接販売するPPA型の事業が増えています。
─ これはどんなところが活用するんですか。
木南 やはり、グリーン電力を求めている企業ですよね。日本ではPPAという形は始まったばかりですが、すでに有名なところでは、NTTがセブン&アイ・ホールディングスにこの形で再エネを供給したりしていて、個別企業のニーズに合った形で電力を供給する時代になっています。
【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅
─ これまでは電力会社を通じてという形だったのが、発電事業者と需要家が直接つながる形になってきた?
木南 そういうことです。FITは国民に一定の負担が生じますが、FITによらない新しい形で再エネを求める方が増えていますよね。
最近は、リコーやイオン、ソニーグループなど、日本企業でも「RE100」(電力を全て再生エネで賄うことを目指す国際的な連合)に加盟する企業が増えてきましたから、こうした企業のニーズにわれわれもしっかり応えていきたいと。
─ 8月には東京ガスと太陽光発電所のPPAを締結していますが、これもその一環ということですね。
木南 そうです。当社が個別の法人とPPA契約を締結したのは初めてです。東京ガスはガス供給だけではなく、小売電力事業者として電力の顧客をお持ちですから、電力のグリーン化への顧客ニーズに応えるためにも、多くの再エネ電力を必要とされています。
再エネ電源の開発・運営に強みを持つわれわれは、そうした期待にお応えすることができると思いますし、他にも、いろいろなところからお声がかかっていますので、今後はPPAのニーズをしっかり取り込んでいきたいと思います。
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─ コロナ禍が長期化し、ロシアによるウクライナ侵攻も9カ月が経とうとしています。こうした状況を木南さんはどのように受け止めていますか。
木南 当初、コロナ禍で一番心配したのはサプライチェーン(供給網)でした。ヨーロッパや中国など、アジア各国からモノは来るのか、心配が尽きませんでした。また、アジアを中心とする再生可能エネルギーの現場に出向くことができませんでしたので、しばらくは非常に苦労しました。
しかし、コロナもすでに3年近くになりますので、今後、仮にコロナの第8波が来たとしても何とかなりそうだという対策と言いますか、レジリエンス(強靭性・柔軟性)というのは試行錯誤の末に大分整ってきたと思います。
やはり、一番懸念しているのはウクライナ問題ですよね。引き続き天然ガスの高騰が世界経済に重くのしかかり、特に、日本のように資源を海外からの輸入に頼っている国は、非常に大きな宿題が残っていると。
当初は戦争も早めに収束する可能性があると言われていましたけど、いまは長期化するという前提でエネルギー業界は動いていると思います。
─ 本当にウクライナ危機によって、天然ガスや原油などのエネルギー価格が軒並み上昇しているんですが、再エネの位置づけはウクライナ危機によって変わったのか、変わっていないのか。
木南 ウクライナ危機を受けても、ますます再エネの使命は重くなっているのではないでしょうか。もちろん、2月のウクライナ侵攻以降、当面のエネルギー確保のため、各国がしばらくは石炭を使わなければならないとか、原子力を増やそうという動きがあります。
ただ、やはり、どの国も基本的には再エネをエネルギー戦略のど真ん中に据えて、これを何年で倍増するとか、とてもアグレッシブな政策目標を打ち出しています。日本も東日本大震災以降は急激に再エネ比率を増やしてきて、現在は20%を超えました。
しかし、英国やドイツが40%くらいになっていることを考えたら、日本はまだ遅れていると思いますので、これから挽回していく必要があると思います。
─ 欧州とは倍近い開きがあるんですね。
木南 ええ。特にドイツは新政権が10年以内に自然エネルギーの割合を倍増させると言っています。倍増ということは、すでに40%ありますから、80%にすると。これまでの拡大スピードを3倍にして、2030年に21年比で太陽光を約3倍、陸上風力を約2倍、洋上風力を約4倍にすると言っています。
たった9年でここまで増やすというのは、非常に野心的な目標ですし、ロシアの影響もあって、非常に危機感が強いのだと思います。
【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅
今年4月に「GX本部」を設置
─ では、そうした状況を踏まえた上で、これからのレノバの戦略を伺えますか。
木南 基本的には世界的な脱炭素の後押しもあり、当社は順調に発電所の設備容量を増やしています。今後は国内の再エネ発電所の積み上げとアジアの展開が重要な2本柱になります。
そして、今年4月に「GX本部」という部署を設置しまして、この2本柱を加速させるための隣接領域の新規事業の強化を担っています。
例えば、再エネのうち、太陽光や風力などの変動電源は、どうしても気象条件や時間帯によって発電量が左右されてしまいますので、導入の拡大に伴い、電力供給を安定化させるための蓄電池の強化が重要です。
電力の脱炭素化ではカバーできない産業領域に対しては、温室効果ガスの排出量が少ないグリーン水素/アンモニア、そして、バイオマス由来燃料の開発などに取り組んでいきたいと考えています。
─ 国内外での再エネ開発と、その周辺事業を強化していくわけですね。
木南 はい。再エネの電源としては、引き続き太陽光を始め、風力や水力、それから地熱などの新規の積み上げが主軸になってくると思います。
ただ、稼ぎ方というか、収益モデルは転換期にあります。従来はFIT(固定価格買取)制度によって太陽光などの開発が進んできました。しかし、最近では、FITによる売電価格の段階的な低下やFIPへの移行、大規模な開発ができる土地の減少などの一方で、民間の再エネ需要が旺盛になり、市場環境はかなり変化してきました。
その一例が、PPA(Power Purchase Agreement)という電力売買契約でして、需要家の個別企業に電力を直接販売するPPA型の事業が増えています。
─ これはどんなところが活用するんですか。
木南 やはり、グリーン電力を求めている企業ですよね。日本ではPPAという形は始まったばかりですが、すでに有名なところでは、NTTがセブン&アイ・ホールディングスにこの形で再エネを供給したりしていて、個別企業のニーズに合った形で電力を供給する時代になっています。
【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅
─ これまでは電力会社を通じてという形だったのが、発電事業者と需要家が直接つながる形になってきた?
木南 そういうことです。FITは国民に一定の負担が生じますが、FITによらない新しい形で再エネを求める方が増えていますよね。
最近は、リコーやイオン、ソニーグループなど、日本企業でも「RE100」(電力を全て再生エネで賄うことを目指す国際的な連合)に加盟する企業が増えてきましたから、こうした企業のニーズにわれわれもしっかり応えていきたいと。
─ 8月には東京ガスと太陽光発電所のPPAを締結していますが、これもその一環ということですね。
木南 そうです。当社が個別の法人とPPA契約を締結したのは初めてです。東京ガスはガス供給だけではなく、小売電力事業者として電力の顧客をお持ちですから、電力のグリーン化への顧客ニーズに応えるためにも、多くの再エネ電力を必要とされています。
再エネ電源の開発・運営に強みを持つわれわれは、そうした期待にお応えすることができると思いますし、他にも、いろいろなところからお声がかかっていますので、今後はPPAのニーズをしっかり取り込んでいきたいと思います。
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