2001年6月、政府の「司法制度改革審議会」が2年間にわたる審議の結果、司法改革意見書を公表した。その意見書は「制度を活かすも殺すも人である」との認識の下に、司法の担い手である法曹の抜本的増強と改革を提言した。
本書はその司法改革から20年を契機に、2021年に結成された「令和司法改革研究会」の成果をとりまとめたものである。研究会の中心人物で、本書の編者である須網隆夫氏は「はじめに」で、これまで司法改革を研究した学者グループはなかったとした上で、この改革は「途半ばにして挫折した」と厳しい評価を下した。同氏は審議会に欠けていたのは「改革の理論」である、と断じる。
「新制度派経済学」の視点から、「制定法を変えたからといって制度が変革されるわけではない」として、司法改革の中核は法曹養成である。ところがその改革は過去と変わらぬ司法試験、競争試験性、予備試験というインフォーマルな制度による制度補完性への認識の欠如のため挫折したと主張する。その意味で、本書はこの失敗を乗り越えて、第二次改革の狼煙として「令和の司法改革」を唱道するという点でユニークである。
だが、本書の執筆者には政治学者も経済学者もいない。改革の「要」(キー)と喝破する司法試験と法科大学院教育と予備試験を正面から取り上げた論稿は15本中に1本しかない。
各論文は、総花的に改革テーマを取り上げるが、改革理論の欠如も原因分析も指摘されていない。法曹養成についても①なぜ新規法曹は予定の半分に及ばぬ1500人以下なのか。②なぜ法科大学院教育は失敗したのか。③なぜ予備試験受験者や合格者が増え続け、その司法試験合格率が異様に高いのか。などの改革の根幹崩壊の真因も明らかにされていない。
とは言え課題が大きすぎるが故に、私は本書を令和版司法改革への予告編として受け止めたい。執筆者達による令和の司法改革本番を心待ちにしている。
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本書はその司法改革から20年を契機に、2021年に結成された「令和司法改革研究会」の成果をとりまとめたものである。研究会の中心人物で、本書の編者である須網隆夫氏は「はじめに」で、これまで司法改革を研究した学者グループはなかったとした上で、この改革は「途半ばにして挫折した」と厳しい評価を下した。同氏は審議会に欠けていたのは「改革の理論」である、と断じる。
「新制度派経済学」の視点から、「制定法を変えたからといって制度が変革されるわけではない」として、司法改革の中核は法曹養成である。ところがその改革は過去と変わらぬ司法試験、競争試験性、予備試験というインフォーマルな制度による制度補完性への認識の欠如のため挫折したと主張する。その意味で、本書はこの失敗を乗り越えて、第二次改革の狼煙として「令和の司法改革」を唱道するという点でユニークである。
だが、本書の執筆者には政治学者も経済学者もいない。改革の「要」(キー)と喝破する司法試験と法科大学院教育と予備試験を正面から取り上げた論稿は15本中に1本しかない。
各論文は、総花的に改革テーマを取り上げるが、改革理論の欠如も原因分析も指摘されていない。法曹養成についても①なぜ新規法曹は予定の半分に及ばぬ1500人以下なのか。②なぜ法科大学院教育は失敗したのか。③なぜ予備試験受験者や合格者が増え続け、その司法試験合格率が異様に高いのか。などの改革の根幹崩壊の真因も明らかにされていない。
とは言え課題が大きすぎるが故に、私は本書を令和版司法改革への予告編として受け止めたい。執筆者達による令和の司法改革本番を心待ちにしている。
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