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国内最大の半導体商社をつくりあげた理由は何ですか? 答える人 マクニカ名誉会長・神山治貴

財界オンライン 2022年11月17日 18時0分

経営者が心すべきことは…

 ―― 独立系半導体商社のマクニカは今年で創立50周年を迎えました。神山さんが26歳の時の創業だったわけですが、この50年を振り返って、今はどんな思いでいますか。

 神山 気づけばあっという間の50年でしたね。当社は『技術商社』を看板に掲げ、まだ知られていない最先端のテクノロジーを発掘して、お客さんにお届けする提案型の技術商社として成長してきました。

 われわれは商社ですが、単に商品を右から左に流すだけの会社であれば、ここまで来ることはできなかったと思います。会社を設立した当初から半導体や集積回路を集めるだけでなく、こうした技術が求められているなと感じれば、自ら電子機器の装置を企画し、開発して出していこうと。

 そこが他社との違いになっていて、そうなると売り込みも自分でやらなければなりませんし、技術説明も自分で行わなければなりません。そうやって世の中の変化に対応し、自らのビジネスモデルを変化させていったことが、ここまで来ることのできた要因だと思います。

 ―― 創業以来、一度も営業赤字がゼロというのは、変化に対応してきたからだと。

 神山 ええ。営業赤字は一度もありません。

 もちろん、50年の間には資金繰りに苦労したり、何度か厳しい時期もありましたよ。その時は経費をカットして、社長自らの給料は半分にする。役員の給料も2割のカット、部長も1割カットをお願いして、景気が良くなったら皆に還元するから、今は耐えてくれと。それで危機を乗り越えることができたら、ボーナスできちんと社員に報いると。だから、苦労はそれなりにありました。

 集積回路にしろ、他の自社開発商品にしろ、よくもこんなに失敗したなというくらい、失敗や撤退はいくつも繰り返しました。ようやく完成した商品を販売した途端、市況が悪化したとか、市況が良いのに為替が変わって、1㌦=300円くらいだったのが180円くらいになって、採算が合わないから撤退するとか。

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 ―― それは海外で売っていた商品ですか。

 神山 そうです。ある自社生産の電子装置を輸出していて、売上の半分くらいが海外だったんです。しかし、採算が合わないことにはどうしようもない。

 撤退というのは、せっかく手塩にかけて育ててきた我が子を手放すようなものですから、それは葛藤がありました。技術者の中には「とにかく頑張ります」と言って、継続を訴えてきた人たちもいました。

 しかし、社内の問題ならともかく、いくら社員が大反対しても、為替などの外部要因が変わるではわけありません。ですから、社員たちには申し訳ないけれども、わたしは思い切って撤退を決めたんです。

 ―― これはトップのつらいところでもありますね。

 神山 そこがトップは孤独だと言われる所以ですよね。

 人生もそうですし、企業経営もそうですけど、何事もいい時一辺倒でいくことなんてあり得ません。景気もそうですし、業績もそうですし、当社も必ずいい時と悪い時を繰り返しています。やはり、経営者が心すべきことは、世の中の流れをよく観察し、将来の発展に向けて種をまき続けることだと思います。

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