調達価格が販売価格を上回る「逆ザヤ」状態に
東北電力と東京ガスの共同出資で誕生した新電力会社・シナジアパワーが東京地裁へ自己破産を申請し、破産手続き開始決定を受けた。卸電力市場の価格高騰のあおりを受けて、調達価格が販売価格を上回る「逆ザヤ」状態に陥るなど、新電力(登録小売電気事業者)のうち、約2割が電力事業の停止や倒産に追い込まれている。
「今般の燃料価格高騰や卸電力市場の取引価格高騰の長期化等に伴う事業環境の著しい悪化により、今後の事業継続が困難と判断した」(シナジアパワー)
シナジアパワーは2015年に設立された新電力で、主に出資企業である東北電力と東京ガスから電力を調達。主に北関東エリアを中心に顧客を開拓し、一時は売上高200億円規模まで成長。しかし、電力需給ひっ迫に伴う卸電力市場価格の高騰やロシアによるウクライナ侵攻を契機とした世界的な燃料価格高騰等により、経営環境が悪化。3期連続で赤字を計上していた。
同社は8月時点で11月に小売電気事業を終了するとしていたが、「6月の卸電力市場の取引価格(月間平均)は前年同月比で約3~4倍で推移する等、弊社を含む小売電気事業者を取り巻く環境は大変厳しい状況」(同社)だったという。
2016年の電力小売り自由化以降、多くの企業が新電力に参入。2022年1月時点では744社が参入していたが、燃料価格高騰や卸電力市場の取引価格高騰を受けて、この1年でFTエナジーや石川電力などが倒産。帝国データバンクの調査によると、現在は新電力の2割が継続を断念、撤退は半年で倍増している。
「発電設備を持たない売電事業の限界を露呈している。『割安な時期に参入し、高騰時に撤退するのは無責任』といった不満も聞かれ、新電力の撤退や倒産が今後さらに加速する可能性がある」(帝国データバンク)
2022年度の中間決算(4―9月期)では大手電力10社のうち9社が最終赤字。既存の大手電力、新電力とも苦境に陥る中で、競争原理をうたった「電力自由化」が曲がり角に来ていることは間違いない。
【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅
東北電力と東京ガスの共同出資で誕生した新電力会社・シナジアパワーが東京地裁へ自己破産を申請し、破産手続き開始決定を受けた。卸電力市場の価格高騰のあおりを受けて、調達価格が販売価格を上回る「逆ザヤ」状態に陥るなど、新電力(登録小売電気事業者)のうち、約2割が電力事業の停止や倒産に追い込まれている。
「今般の燃料価格高騰や卸電力市場の取引価格高騰の長期化等に伴う事業環境の著しい悪化により、今後の事業継続が困難と判断した」(シナジアパワー)
シナジアパワーは2015年に設立された新電力で、主に出資企業である東北電力と東京ガスから電力を調達。主に北関東エリアを中心に顧客を開拓し、一時は売上高200億円規模まで成長。しかし、電力需給ひっ迫に伴う卸電力市場価格の高騰やロシアによるウクライナ侵攻を契機とした世界的な燃料価格高騰等により、経営環境が悪化。3期連続で赤字を計上していた。
同社は8月時点で11月に小売電気事業を終了するとしていたが、「6月の卸電力市場の取引価格(月間平均)は前年同月比で約3~4倍で推移する等、弊社を含む小売電気事業者を取り巻く環境は大変厳しい状況」(同社)だったという。
2016年の電力小売り自由化以降、多くの企業が新電力に参入。2022年1月時点では744社が参入していたが、燃料価格高騰や卸電力市場の取引価格高騰を受けて、この1年でFTエナジーや石川電力などが倒産。帝国データバンクの調査によると、現在は新電力の2割が継続を断念、撤退は半年で倍増している。
「発電設備を持たない売電事業の限界を露呈している。『割安な時期に参入し、高騰時に撤退するのは無責任』といった不満も聞かれ、新電力の撤退や倒産が今後さらに加速する可能性がある」(帝国データバンク)
2022年度の中間決算(4―9月期)では大手電力10社のうち9社が最終赤字。既存の大手電力、新電力とも苦境に陥る中で、競争原理をうたった「電力自由化」が曲がり角に来ていることは間違いない。
【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅