─ 大和証券グループ本社会長の日比野隆司さん、米国の金融引き締めや円安など、経済の先行きは混沌としています。23年をどう見通しますか。
【あわせて読みたい】大和証券グループ本社・中田誠司社長 「米国は40年かけて投資環境を築いてきた。日本も『30年計画』で取り組みを」
日比野 地政学リスクが複雑に絡み、市場予測がこれほど難しい状況も珍しいと思います。とはいえ、標準シナリオでは、年度内に日経平均は3万円程度に回復し、23年末には3万2000円から3万3000円を付けると見ています。
理由は日本の企業業績です。円安は企業によってその影響が全く異なっており、コロナ禍のような「K字型」、つまり二極化している訳ですが、全体としては、輸出企業やグローバル企業など円安メリットを享受する会社が牽引する形で会計上の利益は膨らみます。今年度の主要企業の増益率は8%台で最高益更新が予想され、来年度も最高益を連続更新する見通しです。
IMFの世界経済見通しでは、23年の日本の成長率予測は1.6%と主要先進国の中で最も高くなっています。各国は22年、23年と減速の見通しですが、日本は経済再開の効果が欧米に比べ遅れて出てくることもあり、相対的には強いと考えています。
─ 世界的に不況下の物価高が言われていますね。
日比野 理由は40年ぶりとも言われるインフレです。元々強かったインフレ圧力が、ウクライナ戦争で資源・食料価格が上昇し、さらに強まっています。
─ 23年4月には日本銀行総裁が交代しますが、金融政策の行方をどう見ますか。
日比野 日本がこの10年間取ってきた金融政策がどう転換されていくかということが、最大の注目点です。世界の中で独自の金融政策を、長期間進めてきたため、メリットだけでなく徐々に歪みも出てきています。
10年債の金利を0.25%で抑える「イールドカーブコントロール」で債券市場の機能が弱まっています。また、日銀によるETF(上場投資信託)の保有額が50兆円を超えて日本企業の大株主になったことで、株式市場の機能も部分的に損なわれている可能性があります。
他にも為替介入から抑え込まれてしまった為替市場と合わせ、市場機能をどう開放していくかが問われます。
─ 岸田政権は「資産所得倍増プラン」で「貯蓄から投資へ」を進めようとしています。
日比野 政権トップが具体的に「貯蓄から投資へ」の推進役となるのは初めてですから、我々もしっかり受け止めて取り組みます。尚、資産所得倍増プランは、NISAの改正がゴールではありません。金融リテラシーの向上も必要となりますし、家計側だけでなく、企業の成長やイノベーションの創出を促す施策を同時に推進することが重要となります。
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日比野 地政学リスクが複雑に絡み、市場予測がこれほど難しい状況も珍しいと思います。とはいえ、標準シナリオでは、年度内に日経平均は3万円程度に回復し、23年末には3万2000円から3万3000円を付けると見ています。
理由は日本の企業業績です。円安は企業によってその影響が全く異なっており、コロナ禍のような「K字型」、つまり二極化している訳ですが、全体としては、輸出企業やグローバル企業など円安メリットを享受する会社が牽引する形で会計上の利益は膨らみます。今年度の主要企業の増益率は8%台で最高益更新が予想され、来年度も最高益を連続更新する見通しです。
IMFの世界経済見通しでは、23年の日本の成長率予測は1.6%と主要先進国の中で最も高くなっています。各国は22年、23年と減速の見通しですが、日本は経済再開の効果が欧米に比べ遅れて出てくることもあり、相対的には強いと考えています。
─ 世界的に不況下の物価高が言われていますね。
日比野 理由は40年ぶりとも言われるインフレです。元々強かったインフレ圧力が、ウクライナ戦争で資源・食料価格が上昇し、さらに強まっています。
─ 23年4月には日本銀行総裁が交代しますが、金融政策の行方をどう見ますか。
日比野 日本がこの10年間取ってきた金融政策がどう転換されていくかということが、最大の注目点です。世界の中で独自の金融政策を、長期間進めてきたため、メリットだけでなく徐々に歪みも出てきています。
10年債の金利を0.25%で抑える「イールドカーブコントロール」で債券市場の機能が弱まっています。また、日銀によるETF(上場投資信託)の保有額が50兆円を超えて日本企業の大株主になったことで、株式市場の機能も部分的に損なわれている可能性があります。
他にも為替介入から抑え込まれてしまった為替市場と合わせ、市場機能をどう開放していくかが問われます。
─ 岸田政権は「資産所得倍増プラン」で「貯蓄から投資へ」を進めようとしています。
日比野 政権トップが具体的に「貯蓄から投資へ」の推進役となるのは初めてですから、我々もしっかり受け止めて取り組みます。尚、資産所得倍増プランは、NISAの改正がゴールではありません。金融リテラシーの向上も必要となりますし、家計側だけでなく、企業の成長やイノベーションの創出を促す施策を同時に推進することが重要となります。