─ JFEホールディングス社長の柿木厚司さん、コロナ禍で原材料価格が高騰していますが、鉄鋼業界から見たコロナ禍の3年間をどう総括し、どう手を打っていきますか。
【あわせて読みたい】JFEが進める「脱炭素拠点」づくり 高炉跡地をどう再利用するか?
柿木 やはり何といっても、ロシアによるウクライナ侵攻で大きく地図が変わりました。鉄鋼需要という意味では、新型コロナが急拡大した20年4月から6月にかけて一気に3割需要が落ちまして、少しずつ回復をしてきて、21年は自動車を中心に思ったより早く回復しました。
ところが、ロシアのウクライナ侵攻を契機に全体の需要が落ちまして、世界鉄鋼協会(WSA)の鉄鋼需要見通しによれば、21年に世界で18億㌧の需要があったんですが、22年は2%強下がって18億㌧を切りそうだと。ですから、全体としては厳しかったですね。
─ そうした中で、中国・宝武鋼鉄集団やアルセロール・ミタルなど、海外勢との競争はどのように考えていますか。
柿木 彼らは粗鋼生産量で1億㌧を超えるような鉄をつくる、つまり、スケールメリットを追求しています。しかし、私どもは量ではなく質を追求します。われわれの粗鋼生産量は2600万㌧程度ですが、高付加価値品の比率を50%にするという目標を立てています。
例えば、電気自動車(EV)用の高機能電磁鋼板は、世界を見ても製造できる鉄鋼メーカーが限られている。当社はこうした高付加価値品に特化するという路線で、量に対して質で対抗するという青写真を描いています。
─ これが新たな鉄鋼産業のあり方ですね。それと中長期的には脱炭素への取り組みが必要になってきますが、水素還元製鉄など、いろいろな製法を考えていますね。
柿木 ええ。先ほど申しましたように、鉄は世界で18億㌧と、他の素材には無い大きな量を生産しています。単位量当たりのCO2(二酸化炭素)排出量は他素材に対して決して多くないんですが、これだけの量があるとCO2の排出量も非常に大きくなります。
カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量の実質ゼロ)を考えると、世界の鉄鋼業にとってカーボンをゼロにする製法を確立することが中長期的な最重要課題だと思います。
それがどういう方法になるかは、水素還元製鉄やカーボンリサイクル高炉、あるいは大型の電炉開発など、いろいろなアイデアが挙がってきているところです。超革新的な技術はこれだというのはまだ決まっていないのが現状で、政府にも基金を出してもらって開発を進めています。いずれにせよ、実装されるのは40年以降ですから、しばらくは多大な投資と実験を重ねていく必要がありますね。
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柿木 やはり何といっても、ロシアによるウクライナ侵攻で大きく地図が変わりました。鉄鋼需要という意味では、新型コロナが急拡大した20年4月から6月にかけて一気に3割需要が落ちまして、少しずつ回復をしてきて、21年は自動車を中心に思ったより早く回復しました。
ところが、ロシアのウクライナ侵攻を契機に全体の需要が落ちまして、世界鉄鋼協会(WSA)の鉄鋼需要見通しによれば、21年に世界で18億㌧の需要があったんですが、22年は2%強下がって18億㌧を切りそうだと。ですから、全体としては厳しかったですね。
─ そうした中で、中国・宝武鋼鉄集団やアルセロール・ミタルなど、海外勢との競争はどのように考えていますか。
柿木 彼らは粗鋼生産量で1億㌧を超えるような鉄をつくる、つまり、スケールメリットを追求しています。しかし、私どもは量ではなく質を追求します。われわれの粗鋼生産量は2600万㌧程度ですが、高付加価値品の比率を50%にするという目標を立てています。
例えば、電気自動車(EV)用の高機能電磁鋼板は、世界を見ても製造できる鉄鋼メーカーが限られている。当社はこうした高付加価値品に特化するという路線で、量に対して質で対抗するという青写真を描いています。
─ これが新たな鉄鋼産業のあり方ですね。それと中長期的には脱炭素への取り組みが必要になってきますが、水素還元製鉄など、いろいろな製法を考えていますね。
柿木 ええ。先ほど申しましたように、鉄は世界で18億㌧と、他の素材には無い大きな量を生産しています。単位量当たりのCO2(二酸化炭素)排出量は他素材に対して決して多くないんですが、これだけの量があるとCO2の排出量も非常に大きくなります。
カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量の実質ゼロ)を考えると、世界の鉄鋼業にとってカーボンをゼロにする製法を確立することが中長期的な最重要課題だと思います。
それがどういう方法になるかは、水素還元製鉄やカーボンリサイクル高炉、あるいは大型の電炉開発など、いろいろなアイデアが挙がってきているところです。超革新的な技術はこれだというのはまだ決まっていないのが現状で、政府にも基金を出してもらって開発を進めています。いずれにせよ、実装されるのは40年以降ですから、しばらくは多大な投資と実験を重ねていく必要がありますね。